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15、妖精

次の日、私はリリアーナさんとの約束通り森に来ていた。ここに来る途中、クリフに出会ったが「また、森に行くのか」と半ば呆れたように言われた。最近は森に行くことが多い。まあ、いろいろと事情が重なったせいだから仕方がなかった。




「リリアーナさんー?」


森の出口から少し奥に入った所でそう叫ぶ。


「あ、来てくれたんですね」


物音がしたと思ったら、リリアーナさんが目の前に現れた。急に木の上から私の目の前に降りてくるという登場の仕方で、どうしても驚いてしまう。


「……前から気になってたんですけど、リリアーナさんって耳でもいいんですか?」

「どうしてそう思うの?」

「前にクリフが近づいてきた時もクリフの姿が見える前に立ち去りましたし、リリアーナさんって人の姿が見えなくても気配とかが分かる能力でもあるのかなって」

「うーん、基本的にそれができるのはこの森の中だけだよ………それも含めて話さないといけないですね。それに話すなら誰もいないような所で話したほうがいいでしょう?」

「じゃあ、どこで話す?」

「リアも行ったことあると思うけど、一本木の生える花畑に行きません?」

「ああ、あの白い花が咲いている綺麗な場所?」

「そうです。あそこは私しか行けないようになってますから」


そう言ってリリアーナさんと並んで歩き出す。リリアーナさんしか行けないなら、あの白い花畑で採った実も母が知らないのは当然だったんですね。









木の生い茂る場所から途端に開けた場所に出た。相変わらず、白い花が枯れることなく咲き乱れ、ここだけ周りから、切り離されたような不思議な雰囲気を持っている。


私達は一本木の下に座った。一本木も前と同じように実をつけていた。


「さてと、どこから話したらいいんでしょうか」

「結局リリアーナさんって何者なの?昨日は怪物だって言ってたけど」


怪物と言っても、吸血鬼とか猛獣とか、あまりにも幅が広すぎてどういうことなのかさっぱり分からない。


「怪物ってのは呼び名みたいなものだもんね……私は人間とかエルフとかそういう分類で行ったら『妖精』っていう種族になるのかな?」


また、知らない、自動翻訳されない言葉が出てきましたね。はあ、どうせ勝手に翻訳してくれるのなら全て翻訳してくれればいいものを。


「『妖精』?それって守り神みたいな?」

「うん、別の言い方をしからそうですね」


『妖精』………もしかして妖精のこと?リリアーナさんの説明言ったらそういうことになります。


「妖精は決められた場所で生活して、その場所を死ぬまで守り続けるんです。妖精は普通は他の種族には見えなく、ただ見守るのが役目なんです」

「リリアーナさんが昨日、ひとりぼっちだって言ってたのはそのことだったんですね」

「はい、誰にも見えなければ触れることも話すことさえもできません………ただ、例外として、見える者もいます。元々、素質のある者ですね」

「素質……妖精が見える素質ってこと?」

「そうでもありますし、妖精が見える者は大抵、『魔術』が使えます」

「『魔術』……何ですか、それ」

「あれ、リアも使ってたじゃないですか?」


私も使えるもの?……もしかして魔術のことかな。


「私が森の入り口まで移動するときに使ったやつですか?」

「はい、それです。その中でも一部のものだけが稀に妖精を見えることがあるそうです」

「へ〜」

「私が何者かって分かってもらえました?」

「うん、だいたいは」


まさかこんな近くに異世界ファンタジー要素があるなんて思いもしなかったです。


「で、今度はリアの番ですよ‼︎リアって一体何者なんですか!」


リリアーナさんは地面に手をついて、目を輝かせながら私を見ていた。私は少し引き気味になりながら言う。


「何者って………リリアーナさんが妖精なら、私は人間ですね」


それ以外に説明のしようがない。


「違う違う‼︎そうじゃなくて、リアがどうして魔術を使えるのって聞いてるの‼︎貴族でさえ、魔術師以外は魔術なんて使えないのに、リアみたいな子供の下民がどうして魔術を使えるの?」

「えっ、それは………」


言っていいのだろう?まず、話したところで信じてもらえるのかな?前世がこの世界とは別の世界で魔術師をしていたから使えるって……でも、妖精もいるファンタジー溢れるこの世界ならそんな事例があってもおかしくないかもしれない。


私は深呼吸して、リリアーナさんの目をしっかりと見つめて言った。


「リリアーナさん、今から私の言うことを信じてもらえますか?」

「勿論!リアが嘘なんて言うわけないでしょう」

「実は私、前世の記憶があるんです。その私が前世で暮らしていた場所はこの世界じゃないらしくて……で、私が魔術を使えるのはその前世で魔術師だったからなんです」


私がそういうとリリアーナさんは、輝かせていた目をそのままにして固まってしまった。


やっぱりいくらなんでも唐突過ぎただろうか。


「話、飲み込めてますか?」

「う、うん。リアが端的に要点だけを話してくれたから、そこまで混乱してないよ」

「この話を聞いた上でなんですが、リリアーナさんは私みたいな事例の人を聞いた事がありますか?」

「異世界、魔術…、そして前世の記憶があるかぁ………」


リリアーナさんは空を見上げて唸りなっている。


「私が知る上では、そんな奇妙な同じ話は聞いた事ないです」

「じゃあ、信じてもらうのは難しいかな」

「何言い出すのですか?リアが嘘をつくような人だなんて私、思ってないです。だから、その話を疑うなんてことはしません。それに全く同じ話はなくとも似たような話は聞いたことがあります。

昔異世界から来た者がいるということが書かれていた古い書物を見かけたことがあります」

「つまり、異世界が存在することは昔から言われてたことなんですね」

「はい、具体的に言うと召喚系統の魔術で異世界から人を召喚したなんてことが書かれていましたから」

「そうなんだ……だったら…………」


元の世界に戻る方法があるんじゃないか?


一度死んでしまった世界に戻るなんて普通はあり得ないことだけど、そうしてでももう一度元の世界に戻って友達に会いたい。いつの間にか死んでしまったからろくに何もできていない。戻れることなら帰りたい。


「………残念ですが、その手の書物は殆ど残っていないんですよ」


リリアーナさんは私を気遣ってか、言いにくそうに言った。


まあ、期待はしていなかった。そんなことまでできたら、ことが上手く運びすぎて逆に怖くなる。


私は立ち上がって真上に実ってラレルを二つもぎ取った。そして、もう一つをリリアーナさんに差し出す。


「いいんですよ。こっちの生活も楽しいですし」

「ごめんなさい。何も役に立てなくて」

「いいですって」


私は軽く笑ったあと、ラレルに噛り付いた。甘くて果物だからか水分が多く、話してばかりで渇いていた喉には丁度いい飲み物だった。


ラレルをかじりながら、ふと今までのことを整理していた。


ひとまず、リリアーナさんに私が前世での記憶が残っていてそこで私が魔術師をしていたってことは伝わってよかった。私もリリアーナさんのことを信用していないわけではないが、これが全て嘘で頭の狂った子と思われたくなかった。


心地良く吹く風に身を任せて揺さぶられる。目を閉じて耳をすませば聞こえてくる木の葉同士が擦れ合う音を聞くと段々と心が落ち着いてくる。



「あ!」


私が突然声を出したことで驚いたのか、リリアーナさんが横で肩を跳ね上げる。そして、いったい何なのかと言わんばかりな表情で私を見ていた。


「リア?」

「そうだ忘れてた‼︎」

「何のことですか」

「ああ、すいません。大分前のことを思い出したので。元々どうして私がこの森にやって来たかってことです」

「昨日の約束通り話をするためじゃないの?」

「そうじゃなくて………ソフィに会う前にここに来た時のことです」

「あの子に会う前?それって結構前だよね」

「はい、私はリリアーナさんに聞きたいことがあったんです。実は私の知り合いが重い病気を患ってしまって________」


そこから、ロイドさんから聞いた病状と病名をリリアーナさんに説明した。リリアーナさんは始終、真剣な面持ちで聞いてくれた。


「______どうですか?何か治せる方法を知りませんか」

「その病気だと、私の魔術でもどうにもできないです。やっぱりリアの言うコリンって子が探している薬を使った方が安全で確実だとは思います」

「妖精のリリアーナさんですらどうにもできないなら、その手しかないのかな」

「妖精と言ったら大層なイメージがあるかもしれませんが実際は限られた範囲でしか使用できませんから、案外万能なわけではないんです。それと、そのコリンって子が薬を探しているのでしょう?だったらその子に任せればどうですか?」

「それだといろいろと気がかりなところが多いんです。コリンが見つけたその薬はモーデス街って場所にあるみたいで」

「モーデス街⁉︎」


耳元でリリアーナさんが叫んだので、少し耳が痛い。それほどまでにモーデス街には何かあるんですかね。


「リリアーナさん……耳元で叫ばないで」

「ああ、ごめんなさい。ついつい大声を出してしまいました」

「ついついって、モーデス街ってそんなにすごい場所なんですか」

「はい、モーデス街というのは大変危険な場所なんです。リアも聞いたことぐらいはあるでしょう‼︎」


説得する時のように地面に手をついて、体を前に倒しながら言う。反対に私は気まずそうに言った。


「……申し訳ないんですけど、私モーデス街が何なのか、そもそもここがどういう場所でどういう街かさえも知らないんです」

「え?どうして?」


さっきまでの勢いが削がれ、拍子抜けしたように私の顔を見ている。


「実は私さっき前世の記憶があるって言ってましたよね。つまり私は転生したってことなんですが………何故だか分からないんですが、ここの世界での小さい頃の記憶というものが殆ど残っていないんです。だからここでの一般常識とかが全く分からないんです」



「リアはつまり右も左も分からない状況の中に一人で放り出されてたということですか?………それは災難でしたね」


リリアーナさんの目は同情するような哀れむような目線を送っていた。そして手で拳を作って私を元気づけるように言う。


「そうなら、私がこの街のこと、そして本題のモーデス街のことを教えます‼︎」

「ありがとう……ここの常識とかを知らないせいでみんなに驚かれてばっかだったから」

「じゃあまずは、この街のことからです」


リリアーナは近くに落ちていた小枝を拾い、地面に何かを書き始めていた。


地面には数学の問題で出題されそうな図形が書かれていた。


長方形が一番外側にあって中に正方形が描かれている。その正方形の一辺が長方形の一辺と重なっていて、またその正方形の中に小さな正円がある。


その図を描き終えるとリリアーナさんは木の枝で描いた長方形と正方形の部分の間の面積を指して言う。


「ここがリアみたいな下層住民の住んでいるファストロード、そしてこの正方形と円の間がこの街の一般住民が住んでる地区で、最後にこの正円の中が貴族の住む地区……ざっくり説明するとこんな感じかな」


リリアーナさんの説明によれば私達はこの街の一番外側に住んでいることになる。


「それだと、身分も下から下層住民、一般住民、貴族って感じですか?」

「その中でも詳しく分かれてたりはするけどだいたいはあってます。あとは奴隷とかもいたりします。

そしてリアの言っていたモーデス街はファストロードの裏街って感じです。ただでさえ治安の悪いファストロードの裏街なので危険満載ってわけですね。だから、ファストロード下層住民はそこにわざわざ近付こうとはしません。ただ、ファストロードでは闇市や通常のルートで手に入らないような骨董品や装飾品が売ってるんです。勿論、価格も通常通りの値段でありませんが」

「そこには薬とかも売ってるんですか?」

「はい、多分リアいうその子はそこでしか売っていないその薬を買おうとしてるんだと思います……ただ気がかりなのは………」

「コリンが本当にその薬を買うつもりかってことですね」

「モーデス街で売っているものの殆どが正規の方法で入手するより何倍も高いと聞きます。モーデス街で買い物できるようなお金をファストロードの大人ですら持っていないのに、子供が持っているとは到底思えません」

「コリンなら無理矢理モーデス街への道を通ろうとしたように、その薬を盗むつもりなんでしょうね」

「盗むそんなことしたらどうなることか………捕まったら終わりですよ‼︎」

「私もその話を聞いてなおさら止めないといけないと思いましたよ………まさか、コリンが行こうとしていた場所がそこまで危険だと知りませんでしたよ。でも、止められるかどうか………」

「だから、リアは私にその病気の治し方が知らないか聞いてきたんですね」

「はい………」

「私の方でも薬以外の方法で治し方がないか探してみます………あと、リア」

「ん、何ですか?」


リアが私を睨むようにして見てくる。なんだろう?私、リリアーナさんに何かしたかな。


「リア、間違っても成り行きとかでモーデス街に行かないでくださいよ?」

「………保証はできませんが、分かりました」


私は顔をそらせそう言った。リリアーナさんは少し不満そうだった。



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