始まり
________私が意識をかろうじて目覚めた時には、すでに何かが起こった後だった。
私はどうやらうつ伏せになって倒れているようだった。視界はまだぼやけていて画質の悪い画像のように何も見えない。
全身が痛かった。どうしたのかな。もしかして、自動車との事故にでもあったのかな?
それにしては不自然だった。自動車との事故かなんかだったら体が痛いだけ。確かに今、私は痛みを体に感じているが、その痛みは体の奥底から湧き上がってくるように感じる。その痛みには熱が含まれていた。
起き上がろうと地面に手をつこうとしても、体に力が入らない。できないのを分かっていてもできるかもしれないと何かにすがるように起き上がろうとした。
しかし、できない。そもそも私はどうして「起き上がる」必要があるのかな。何も覚えていない。私の最後の記憶はいつも通りに友人と一緒に、通っている高校へ向かっていたところだった。その後いつも通りに学校で一日を過ごしたはず……である。
ただ、それだとおかしい。普通に過ごしていてこんなことが起こるはずがない。きっと、私の記憶の見えない所で何かがあったんだ。
なら、今は記憶を失う前の私が残してくれた道標を無駄にはできない。
私は何とかして起き上がる。体が上に上に上がるごとに痛さと熱さはどんどんひどくなる。
と、あるところまで体を起こしたとき、痛さが不意になくなった。熱さはまだあったものの急激に冷め、体が冷たいと感じるようにまでになった。私はこの時を使って一気に体を上に起こす。
意識は朦朧としていたし、視界もぼやけていた。ただ、視界に映ったのは一面真っ赤な何かが覆い尽くしている場面だった。私はそれが何かを確認するためにおもむろに手を伸ばす。
それは液体だった。赤くて液体なものといえばいろいろあると思う。自分の今の状態からそれが何かなのかを予測するのは容易だったはずだ。だけど、私はそれを予測することさえもできずにいた。どうしてかこの液体が暖かく感じた。
突然目の前が暗くなった。私は起きているつもりだったけれど、どうやら私は何も感じることなく倒れたらしい。
最後に朦朧とする意識の中ではっきりと直感的に感じたことがあった。
_______ああ、私、もうすぐ死ぬのかな?
これから、よろしくお願いします!