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20世紀特急  作者: 五日咲太郎
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2話 車内の御案内とサービス

皆様、「20世紀特急」に御乗車いただき、ありがとうございます。

当列車は1話で(まさる)()が述べたとおり、1両から3両が3等座席車、4両から6両が3等寝台車、7両が2等座席車、8両が食堂車、9両から11両が2等寝台車、12両が1等寝台車、会議室、展望スペースとなっております(ただし会議室につきましては1等座席車と言う扱いでございます)。これらの車内とそのサービスについて説明しましょう。

まず3等座席車と3等寝台車のご案内です。前車は進行方向固定式の2人掛けとなっており、安価で本来の汽車旅をお楽しみいただけます。後者は開放式の3段ベッドとなっております。こちらはたくさんのお客様の就寝を提供していますが、「狭くてカイコ棚のようだ」とも言われています。

なお、3等車の導入につきましては、国鉄内部から「本家や戦前の特急『大日本』が1・2等車だけだったから豪華列車に3等車は不要だろう」と言う声がありましたが、「東京大阪間、福岡間はドル箱路線だからいいじゃないか。国鉄の収入増になるわけだし」と言う声がありました。最も、「かわせみ」も「きじ」も3等車を連結しているということも理由にあって九州特急にないのはおかしくないのかと言う声もあったのです。

こうして3等車が連結されていったのです。

2等座席車と2等寝台車のご案内です。前者は回転式椅子、すなわち転換リクライニングシートとなっており、快適な旅を保障いたします。2等座席車がリクライニングシートなのはGHQが日本の列車にご乗車の際、座席の座り心地が宜しくなかったとお怒りになったことによって改良を重ねたものです。これは戦前の2等車と比較にならないくらい快適になったため、この車両を「特別2等車」、あるいは2等車を意味する「ロ」をとって「特ロ」と呼んでおります。

後者は個室となっており、2段ベッドになっております。

 2等車には「20世紀ガール」が乗務し、座席のご案内や手荷物を網棚に挙げるだけでなく、電報の受け取り、沿線の駅弁や土産物の要望、外国人のお客様に対する英会話での御案内と言ったサービスをしてございます。

 次に食堂車ですが帝都ホテルの運営のもと、一流のコックによる腕の振るった料理をお楽しみいただけます。

 営業時間は、朝は7時頃から9時頃まで、昼は11時頃から13時頃まで、夕方は17時頃から20時頃までとなっております。定食は昼と夕方のみの販売です。

なお、メニューは以下の通りとなっております。


お定食

A定食(サーロインステーキ、野菜サラダ添え、菓子、パン、コーヒー)…500円


B定食(雛鳥グリル、野菜サラダ添え、パン、コーヒー)…350円


C定食(鮮魚フライ、マカロニトマト添え、小海老と蟹のサラダ、パン、コーヒー)…300円


D定食(冷ハム、牛肉及び鶏肉、野菜サラダ添え、パン、コーヒー)…300円


お好み料理、スープ

スープ…80円


鮮魚料理

鮮魚フライ…70円


卵料理

ハムエッグス…90円

ハムオムレツ…90円


肉料理

ポークカツレツ…90円

ビーフカツレツ…100円

チキンカツレツ…150円

ビーフステーキ…240円


冷肉

ハムサラダ…90円

コールビーフ…150円

コールチキン…150円


サンドウヸチその他

サンドウヸチ   …90円

チーズ      …50円

パン(バター付き)…25円

ケーキ      …時価

果物       …時価

コーヒー     …50円

紅茶       …50円


以上のほか当日の特別料理も用意してございます。


お酒類

スコッチウヰスキー(30c.c)   …150円

ヤマドリウヰスキー (30c.c)    …70円

ブランデー     (30c.c)    …150円

ビール              …145円

ビール(小瓶)          …80円

黒ビール(小瓶)        …85円

スタウト(イギリス風の黒ビール)…105円

清酒(一合)          …140円


清涼飲料

オレンジジュース…55円

レモンソーダ  …45円

ジンヂヤエール …30円

レモネード   …30円

タンサン    …25円

カルピス    …25円


其の他

観光地はがき 各種一組…40より90まで

時刻表    大型一冊…90円    

       小型一冊…40円

鉄道路線図一部    …40円


 メニューの内容を御覧になって「随分安いなあ。これでよく食堂車の経営が成り立つものだ」と思われた読者がいらっしゃるかもしれません。

 これは昭和30年代の物価(昭和31年の大卒の国家公務員の初任給が8700円)ですのでお気をつけて!


 さて、最後にご紹介する12両目は当列車の目玉となります1等寝台車と会議室、展望室でございます。この車両は国鉄最高のサービスを提供いたします。

 1等寝台車は4室の1人部屋となっているため、広いベッドが置かれています。それはまさにスイートルームです。列車ボーイによるサービスを提供していますので、お望みのものがございましたら彼らにお伝えください。また、外国人のお客様には英語ができる女性乗務員による接客もございます。

 1等寝台と会議室の間には御手洗兼シャワー室となっております。便器は、外国からのお客様に配慮して洋式便座となっております。シャワーにつきましては清潔なお湯とお水が出るようになっております。さらに進むとバーカウンターがあり、1等車のお客様には洋酒と軽食を提供させていただきます。なおサンドウヸチなどの軽食につきましては、食堂車からボーイが持って差し上げます。

 12両目中央は会議室となっており、6脚の椅子と長テーブルと言う構成になっております。ここは「会議室」となっておりますが、会議に使用されない場合は「1等座席車」と言う扱いとさせていただております。

 なぜ会議室が当列車の12両にあるのか。これは当車両がGHQに連合軍専用列車として接収された際、展望車の大部分を会議室に改造されていたことの名残であります。昭和24年に特急列車が「明日」と言う名称で復活、翌年不評だった「明日」を「かわせみ」に改称、「きじ」の新設に伴って車内が改装された展望車がありましたが、「20世紀特急」もそれらと同じようにしようということになりましたが、「東京九州を結ぶ特急で所要時間が長いからいつでも仕事ができるように改装しないで使えるようにしたらどうか。使わないときは1等座席として販売するかたちで」ということになり、このようなかたちになってございます。

 そして展望室のデッキ寄りにはソファを6脚置いてございます。展望室はフリースペースとして乗客の御利用が可能でございます。

 車内にはインク壺、ペン及びペン軸、吸取紙(すいとりがみ)、ハサミ、書簡紙(しょかんし)、封筒、絵葉書、和文及び欧文電報類信紙、書簡紙その他用紙入、灰皿、マッチ、書籍、雑誌、新聞のご用意、ラジオが受信できるサービスがございますので是非ご利用ください。

 さて、車内を案内をしているうちに列車は横浜を過ぎ、まもなく熱海に近づいてまいりました。

 乗客の皆様、「20世紀特急」の旅をお楽しみください。


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