表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

浄罪

元太郎には分かりませんでした

作者: アノマロカリス

 昔々、あるところに鬼がいました。鬼は、元気に育って欲しいと言う理由で元太郎と名付けられ、すくすくと育ちました。


 やがて、元太郎が大きくなった頃、お父さんに、狩りを教えてもらいました。元太郎が住んでいる島には、鬼以外の生き物がいません。なので、狩りは、船を漕いで、別の島まで行ってします。とても大変な事です。


 お父さんは「狩りは、生きるために行う大切な事だ」と言っていました。生きているとお腹がすきます。狩りをすると、(きじ)や、犬など、食べ物を手に入れる事が出来ます。食べ物を食べるとお腹がいっぱいになります。お父さんが言っていたのは、こういう事だと元太郎は思いました。


 ある日、仲間の鬼がキラキラした石を見せびらかしていました。元太郎が「それはどこにあったの?」と聞くと、仲間の鬼は「ああ、これは人間がくれたんだよ」と言いました。元太郎が「どういうこと?」と聞くと仲間の鬼は「人間の村に行ったらさ、野菜とか米とかといっしょにくれたんだよ。人間って優しいな」と言いました。


 元太郎は、自分も、あのキラキラした石が欲しくなりました。そして、自分も人間の村に行ってみる事にしました。


 人間の村は、緑と茶色がいっぱいで、灰色ばかりの島とは全然違いました。人間達は、元太郎を見るやいなや、叫び出して、引き返して行きました。元太郎は何かあったのかな。と思いました。


 しばらくぼーっとしていると、人間達が野菜やあのキラキラした石などを持ってきました。人間達は「これで何卒お許し下さい」と言っていました。元太郎は、人間達は、何か悪いことをしたのかな、と思いました。


 また、ある日、人間達がくれたキラキラした石を眺めていると、他の鬼達が、城のかんぬきがはずされて、人間と猿と犬と雉が攻めて来たと騒ぎだしました。


 元太郎は分かりませんでした。犬や雉や猿などの食べ物が攻めて来たことも分からなかったし、キラキラした石をくれた優しい人間が攻めて来たことも分かりませんでした。


 何より、たった四匹に鬼達が次々と退治されていることも分かりませんでした。


 そして、ほとんどの鬼が退治されて、元太郎の元に人間と猿と犬と雉がやってきました。人間は「村の人々から奪った宝を返せ!」と言って、元太郎が持っているキラキラした石を指さしました。


 元太郎はますます分からなくなりました。このキラキラした石は人間達から貰った物です。奪うなんてしません。


 元太郎は「これは人間達から貰った物だよ」と必死に説明しました。すると、人間は「そんなわけないだろう! この嘘つきめ!」と言って手に持っていた刀で元太郎を切りつけました。


 元太郎は、そのあまりの痛さにのたうちまわりました。すると、人間は「これが報いだ!」と言って、刀で元太郎の胸を刺しつらぬきました。


 薄れゆく意識の中で元太郎は、一つ分かりました。人間や猿、犬、雉は狩りをしたんだと言うことです。狩りは生きるために行う大切な事です。だからしょうがないことです。


 元太郎は、狩りはこんなに痛いことなんだ、と思いました。


 元太郎は、気付いたら涙を流しながら「ごめんなさい」と謝っていました。元太郎には、何で謝ったのか分かりませんでした。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] やはり、既にある物語を別の視点から見るのは面白いです この作品の見方はとてもびっくりしました とても面白かったです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ