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00+プロローグ

 みなさま、乙女ゲームを御存じ、ですよねー。

 昨今、テレビで見ない日はないくらい、乙女ゲームは我々の生活に馴染んできました。やれ、某人気声優がクール系イケメン役、だの、あの渋ボイスがまさかの……!! 系イケメン役だの、どっぷりつかったオタクからアイドルを追いかけるパンピーまで、幅広い世代に愛される乙女ゲーム。

 愛される理由は、その豊富なシチュエーションや、リアルからかけ離れた設定、まあ一部にはザ・リアルを追求したものもあるけど、やっぱり人気なのはアレですよね、アイドルと恋に落ちる系のやつとか、学園の人気者とアフン、なやつとかですよね。

 危ない恋、とか、上司とまさかの同居、とか、男子だらけの学校にたった一人の女子! みたいな設定もありますか。ああ、世界を救うRPG系の乙女ゲームも最近は流行ってるとか。

 ちょっと前までは女オタクのゲームという認識の強かった乙女ゲームも、スマートフォンの普及とかでゲーム機からアプリ化することによってより目につきやすく、そして扱いやすくなった。

 そうそう、シナリオ・ノベル式乙女ゲームの流行もブーム後押しのきっかけですよねー。いやあ、1つタッチするだけでいいんですもんね、複雑なやつとかないし、誰でも遊べますもん。そりゃあ流行るわー。


 それで、ですね、なんで乙女ゲームの話かって言うと、そう、わたくし、乙女ゲーム制作会社の広報担当なんですけど、いやー、上司に酒をたらふく飲まされてアハンウフンなお持ち帰りの後、なんやかんや結婚しましょ、って時に上司の元カノに「この泥棒猫!」ってかわいい声で刺されちゃいまして。

 ゲームでよく聞くかわいい声だなあ、って思ったら、やだー、人気シリーズもののメイン女声優さんじゃないですかー、ちょ、え、マジで? なんて混乱してたらアボンしてましたよ、ええ、アボンです。

 なんかグサグサ複数回にわたって刺されたような気がしますが、最初の痛みが半端じゃなかったんで、もうそれどころじゃなかったっすね。いやあ、マジ痛い。みなさんも一度体験してみるといいですよ、アレ、マジ半端ない。


 いや、ね。一夜の過ちとはいえ、責任とるって言ってくれた上司はスーパーウルトラ有能なひとで、まあ性格も悪いとこあるけどいい人なんですよ、基本。

 こんな形で結婚するのは両親に申し訳なかったけど、でもまああの人らなら「略奪愛! 素敵!」とか言うだろうから、最終的には喜んでくれると思うのね、うん。

 なんせ10も下の妹に先に結婚された、男性経験皆無歴イコール年齢の姉なんで。どんな形でもこれでようやく、みたいな気分になってもらえるじゃないですか。正直自分も思ってましたよ、ギリ嫁ぎ遅れは免れた、と。

 旦那(予定)は財産的にも相性的にも人柄的にも、悪い人じゃなかったし、浮気はしないとか言ってたし、なんか励むとか言ってたし、いやナニをとは聞かなかったけど。本当にナニをとか思ってたけどナニですよね。

 だから、まあ、うん、これから夫婦になるひとと、幸せになっていこう、とか思ってたんですけどねえ。

 人生ってあっけないわな。


 ……あ、ライバル社の作った略奪愛乙女ゲームのバッドエンド、そういえばこんな感じだったわ。


「ええと、うん、あの、ね。その」

「いやー、まだウェディングドレス着てないってのに。せめて1度くらい着たかった」

「あの、ねえ、ちょっと」

「はー、どうせ地獄。この世は地獄。某刀のゲームの髪の毛長いキャラ言ってたよ、この世は地獄、マジ地獄。っはー、あれ乙女ゲームにしても面白かっただろーね」

「あのね!! なんか過去振り返るのもいいんだけど、ちょっとは私の話聞こうね!?」

「あっ、神様チィーッス」

「……チィーッス」


 真っ白い髪の毛をふわふわさせてる自称神さま、そう、私がグッサリされた後に現れた死後の決定者らしい。

 なんかなんやかんやで真面目に細々と暮らしてた私に、再びの命をくれる、とさっきから言っているのです。

 君がここで亡くなるのはあまりにも惜しい、だの、まだたくさんのことを経験したいのでは、だの、男性経験皆無は悲しすぎる、だと、一部余計なお世話だってのが含まれてましたが、とにかく可哀想だから転生させてやるよ、ということだそうです。

 うわあ超展開! とか思ったものですよ。なんていうんです、これ。小説家になろうず、でたくさん投稿されてる異世界転生あるある? なんですかね。

 なろうず、私も読んでるんですけどね、いやあそこのユーザーさんたち、時々スゲェネタをぶちこんでくるんですよ。こいつぁ頂いたッ! ってのを見つけては、オリジナル要素をふんだんに盛り込んでゲーム化するのです。

 いやあ、あの想像力、うちの会社に面接しに来たら一発で採用ですよ。

 最近の乙女ゲームのシチュエーションマンネリ化してきちゃってて、新しい発想ほしいんですよ。これ、どこの企業でも同じだと思いますけどね。

 特にうちは、大手会社なのに来る人少なくて少なくて! 代替わりした社長の面接が圧迫面接なのがいけないと思いますけど!


「ああうん、社長の圧迫面接ひどいのね、私もわかるよ、うちの上司(神王)も圧迫面接だったし、ってそういう話じゃなくてね」

「神でも面接あるんですか!? しかも圧迫面接、うわいやだ」

「あれ、心の中読めるのにはツッコまないんだ!? って、だからそうじゃなくてね! 君の転生先、決まったからね、さっそく行ってもらおうと思って」

「自称神にあった時からわかりきってましたよ。おっ、私どこいくんですか? どこの国っすか? 日本がいいんですけど」

「うん、君が私のこと自称神とか思ってたのはスルーするよ。……日本も何も、地球じゃないから」


 自称神だと思ってたのは、アレですよアレ、神って言うよりは天使かとオモッテー。

 ていうか日本じゃないんですか、そもそも地球じゃないんですか、うわ最悪だ地獄いこ。


「行こうと思っていけるとこじゃないからね、地獄は! ふぅ、あのね、一つの次元で生まれた魂は、神の理によって最初の転生は別のところって決まってるんだ。地球で生まれた魂が、次の転生も地球となると、前世を思い出しやすくなっちゃうからね」


 あきれ顔で説明を始めた自称神さまの話をまとめると、最初にうまれた次元で生を終えたものは、次に転生する場所をその次元外にしなければならない、らしい。

 その理由は、同じ次元に連続して生まれると、前世の記憶を思い出しやすく生活に支障をきたすから。前世と今世がごっちゃになって、心の弱いひとだと精神狂っちゃうのだとか。

 一度別の世界に送ることで、最初に生まれた世界といかに似てようが別世界だから、前世を思い出すリスクを減らせるそうだ。2度目の生を終えた後、3度目以降の魂は最初に生まれた場所に戻る。

 私たちが気軽に口にする輪廻転生、というのは、神たち曰くこのサイクルのことを言うそうです。正直、ふーん、という感想以外とくに何も浮かばないんですけどね!

 むしろ前世の記憶あったほうが便利じゃない? ってのはありますけど、なんでも、前世の記憶は固定概念としてその人の人生を早いうちから決めてしまい、最初の人生と同じ結末を向かいやすくなるそうです。

 確かに、まっさらな赤ん坊がアハンウフンなことを知ってたら、そりゃあ人生楽しめないですよね!!

男性経験のない(上司は除く)枯れた女の記憶なんざ引き継いだら、転生さきでも男運に恵まれなさそう。っていうか、男に転生する可能性もあるから、女性を恋愛対象として見れなくなってしまう。ホモルートだけは勘弁してください。精神的にはNLだろうが、見ている人は悲しいんです!

 私雑食ですけど、そういう問題じゃないんです! もうなんて説明していいのかアレですけど、とにかく周りが……ウッ。


「ああうん、過去に何があったかは知ってるけど聞かないでおくよ。さて、理解したならそろそろ行こうか。新しい君が、君を待っているよ」

「ウィッス」


 人生に未練はあるけど、もうこうなったからにはなるようになれ!! って精神ですよ。

 さらば、両親!! さらば、永遠の戦友(とも)、さらば、旦那予定だった上司!!

 私、いっきまーす!!








 オギャア、オギャア!!


「奥方さま、お生まれになりました! お嬢様、珠のようなかわいらしいお嬢様ですよ……!!」

「そ、そう。うまれ、生まれたのね。よかった、わたくし、産めたわ……。これで、あの人に家族を残してあげられる」

「何をおっしゃっているのですか、奥方さま! 貴方さまも生きるのです! 家族3人で、お嬢様に……ッ!!」

「いいえ、わたくしは、もうここまで。……わたくしの娘、あなたが成長するところも、たくさんの思い出もともにできない母を、そして2人を置いていく母を、どうかゆるして」

「お、おくがたさまっ、奥方さまぁぁああ――!!」


 その日、一つの命の誕生と、終わり。


 

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