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ルームメイトは留学生

「春の祭典かぁ」

 寮で工具に手をいれているとルームメイトがポツンと呟いた。

「シシリー嬢誘うの? 彼女なら多分ミルキラ様と回るんじゃないかなぁ」

 けっこう誰とでも仲良くなるシシリー嬢と仲違いしたとの噂を持つ俺のルームメイトは留学生だ。去年から俺は同学年の留学生と同室になり続けている。去年は身の回りのことは一応できるが完ぺきには程遠い少年だった。同じ留学生の中に世話役がいたみたいだけどバラされた。本人は楽しそうにしてたけどね。今年は、世話役サイドか無関係らしい。ほどよく身勝手だが、酷い迷惑もない。

 そして、ルームメイトのよしみでシシリー嬢に惚れたらしい事も知っている。広めないのは誰にも聞かれてないからだ。……面白いっていう本音は伏せるさ。

「ミルキラ嬢は別の相手と行くはずだけどなぁ」

 ふぅん。

 まぁ、そんなことより、

「挨拶以外の会話が成立してからじゃないとどーしよーもないんじゃないの?」

「うっ!」

 自覚はあったらしい。挨拶は、成立してるよな?

「狩猟会の害獣駆除でも組めないんだ。謝りたいのに」

 狩猟会……。専門学部も実は被ってるんだけど、会えてないのには理由がある。

 仲が悪いらしいと周りが判断している事と、シシリー嬢贔屓のミルキラ様やフィブレ先生がいい顔しないだろうという判断のもと、外野によって距離を取られている(受講時間のコマがずらされてる)ことに気がついてないらしい。それでも隙を刺すように遭遇しては、嫌われていっているらしい。いつか馬鹿だろうと言ってやりたい。

「そろそろ出禁の時期だね。それに学力試験もあるし、誘えなかったら諦める?」

 少し考え込むように黙る。シシリー嬢は定期的に害獣駆除手伝いを出禁にされる。理由は……やりすぎるからだ。

「いや、諦められない。好きなんだ」

 ストレートだよね。じゃあ、

「シシリー嬢ならえんぶかいに出ると思うよ」

 四季祭ではふたつの『えんぶかい』がひらかれる。

 演舞会と演武会だ。設置された舞台の上で演技するのは変わらない。

 華やかに舞い踊る演舞会。華やかに過激に型を披露する演武会だ。

 ちなみにシシリー嬢が出るのは演武会の方。

「そ、それ以外の時間なら……えっと演技時間は? 見たい!」

 食いつく食いつく。

「まあ、一番広い舞台で人が集まるからわかると思うよ?」

「そうかぁ~。あ! コールは当日どうするんだ?」

 え? 俺?

「俺はキャスティエ先生がやる補習の手伝いだよ」

「あー、第一学年の担当教師だよな! 年増の美人先生! 胸元とか目のやり場に困るよなー」

 ……

「おれ、シシリーが初恋つーか本気なんだ」

「うん、その心境は俺もわかる、かな」

「そうか!」

 にぱっと奴は笑う。

「ああ、一目惚れとか、初恋とかって熱いよな」

「だよな!」






「という会話があったんだよね」

「そう、ですか」

「年の差って、些細なことだと思って。好きの気持ちが大事じゃないかなぁと」

「ええ。わかりますよ」

 ひとつ息を吐き出し、会話相手に手を差し出す。

「応援します! フィブレ先生!」

「ありがとうございます。コール君」

 俺はルームメイトの取得授業情報をその恋敵に贈ることにした。


 俺のキャスティエ先生は年増じゃねぇ!






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