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呪いの魔女



 夢は魔女を倒し、王子様が手を広げてくれてるシーンで終る。

 全寮制の学校。

 国が資金を出してくれる学習期間。最低限以上の勉強、生活をしたければ、それ相応の仕事をしろという方針らしかった。

 それは本人がそれまで培った技能を駆使し、新たな技能を修得せよということだと私は理解した。

 厨房の下働き、清掃。家畜の世話。親もなくたらい回しにされていた私にとっては信じられないくらい楽な作業だった。

 そんな楽な作業で褒められて少し上乗せの賃金や、お菓子を握らされるのだ。

 その上、学業に影響でないようにね、と声もかけてもらえた。

 ここで、褒められることを知った。だから、学業も結果を出せば褒めてもらえるかと思った。

 担任のフィブレ先生は優しい。

 ほとんど勉強とは無縁だった私にも時間を割いて教えてくれた。

 フィブレ先生に褒めてもらいたかった。

「頑張りましたね」

 そう言ってくれる笑顔が欲しい。


 やれる。


 私の技能なら、やれると嬉しくなった。


 私の外見は悪くない。ちょっとまだ細いけど、食事事情は改善されたもの。

 フィブレ先生に認められる女性になりたい。

 そう。

 フィブレ先生は夢の中の王子様のようだった。

 毎夜見る夢。

 魔女を倒し、王子(フィブレ)(せんせい)に受け留めてもらう夢。

「セルツェ、セルツェ!」

 同室のアレキシがいいところで私を起こした。

「なぁに?」

「なぁにってアンタ悪い夢見てたんじゃないの? ヒドくうなされていたから起こしてやったんじゃない」

 うなされて、いた?

 ああ、きっと魔女のせいね。

 あの女が呪っていたんだわ。

「今日は一緒に害獣駆除に参加するのに大丈夫?」

 心配そうな表情に手を振る。

「大丈夫」

 雑草むしりより賃金がいいし、捕獲駆除して獲物は取り分になって、食生活向上や工作資材になる。合間に木の実を拾うことも可能だという話を教えてもらった。

「組んでくれる先輩が怖くないといいなぁ」

 害獣駆除は危険もあるということで、五名から六名で組むのが普通らしい。監督してる人達から認可が下りるまで単独ではできないことになっている。




 運動着に革靴はしっかりしたブーツ。集合場所には十数人の学生と狩猟会と農業会の担当者。慣れた上級生のところに割り振るかたちらしかった。

「セルツェ、ヨロシクね」

 紹介されたのはシシリー先輩だった。その横にはミルキラ先輩もいた。

「わたくしは薬草採取ですから、駆除とは無縁ですわ」

 ツンッと足手まとい発言。

「よろしくお願いします」

 そう言って笑ったのはキト君でその横にいるカイエン先輩も軽く頭を下げた。

「誘ってくださってありがとうございます」

「足手まといかも知れませんがよろしくお願いします!」

 遅れすぎないよう挨拶をねじ込む。

「よろしくお願いします。アレキシです」

 アレキシも便乗した。その後お互いの名乗りをして、集団説明を受ける。

 シシリー先輩。

 そう、シシリー先輩が半分くらい聞いていない。

「よく聞いて、自分の中でも反復なさいね」

 ミルキラ先輩が楽しそうなシシリー先輩の横で冷たく言った。





 ヒュンッと風を切った金属棒が獲物を地面に縫いつける。

「セルツェ、アレキシ、これ高値で売れるんだよ!」

 ご機嫌笑顔で獲物を束ね、木の表面を這っていた甲虫を無造作に掴み取り、振り回す。セリフは一緒。

 私は目が点。

 アレキシは悲鳴をあげて逃げ回った。

 虫捕り道具なんとかしよう。高値で売れるなら。

「キト様、セルツェさん、こちらの薬草は傷口にあてて縛れば治りが早まります。覚えておいて損はありませんわ」

「縁の赤いものは毒がありますから、縁の赤くないものを選んでくださいね」

 ミルキラ先輩の説明にカイエン先輩が付け足す。

 見覚えのあるハーブを数束採取して駆除にも勤めたけど、もしかして、基本身についてないんじゃないかって思う。

 ひとチームの駆除数はシシリー先輩で軽くクリアしていたから。


 後で、シシリー先輩と組めるのは稼ぎがいいと知った。

 報酬は頭割りだった。

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