好きだ。
「シシリー!」
「ナヴァン?」
正直に言えば、止めそびれた。
夏の祭典はごたごたしつつも無事に終った。
後片付けもそのあとの休息日も過ぎた授業日。
ナヴァンが考え込んでいたのは知っている。思い詰めてるから注意しとけと先輩にも言われた。
すこし、シシリーが身構えたのも気になった。
「好きだ。おれが帰る時、一緒に来てくれないか?」
ナーヴァーンーーーー!
呆然とするどストレート。
「お断りします」
回答もどストレートだった。
超ぶった切ってる。
しかし、ナヴァンもめげなかった。
「そうか。でも、おれはお前が好きだ。ちゃんと告げずに後悔したくないんだ。タイミングを計って、雰囲気を作って、伝えるより、後悔する前に、伝えられるうちに伝えたかったんだ」
ナヴァンさん、爽やかそうな笑顔で言い切られました。
ココは朝食時間のサロンです。横に一緒に部屋を出てきた俺、コールもいるんだ。
勿論、人集りだよ?
朝の食事時間、ちょっと早めだからな。
シシリーの横に静かに佇むミルキラ様の視線が痛い。
「朝食、一緒に食わないか?」
そんな中、言ってしまえるナヴァン。
俺に付き合えなんて、言わ、ないよな?
「そうですわね。コール様、ナヴァン様、食堂にまいりましょう。通りの妨げになってしまいますもの。シシリー、いきますわよ」
強制参加です。ミルキラ様の誘いを断ろうものなら女子から嫌われること請け合いな上に、今ならもれなく問い詰められて朝食食いっぱぐれが確定。
でも、食事は胃痛と無縁がいいです。
遠巻きに見守る中にフィブレ先生がおられた気がします。い、胃が痛い。
「困った方ですわね」
ミルキラ様が朝食を取りに行っている二人を眺めつつ、ため息をつく。
「すみません」
謝れば、小さく微笑みを向けられた。
「先日の一件から、かしら?」
俺は頷く。
一緒に控室から湖に向かったはずだった。
「自分が離れなければ、とか考え込んでたかなぁ」
「事態は、変わったかしら?」
タイミングがずれるだけじゃないかと思う。
先輩は誰の凶行だったか知っていると思うが、表沙汰にする気はないらしかった。
いつか、起こるべくして起こった。事態。
先輩はそう呟いていた。
「おれを好きになれない?」
ナヴァンが、シシリーに囁いていた。
テーブルに食事が並ぶ。
ミルキラ様聞こえないフリ。
「困る、から」
シシリーの言葉に心でそーだよね〜と頷いておく。
「伝えられないのは、おれがイヤだから」
やめないと言いきるナヴァン。困らせるのはいいのか。
「一緒になんか、行けないから」
「唐突だったもんな」
そういう問題か!?
「卒業の時に迎えにきてもいいと思っている。おれがシシリーを好きだから、シシリーにもおれを好きになってほしい」
困惑するようにミルキラ様に視線を送るシシリー。
露骨過ぎるラブアタックに困惑マックスだね!
「就職収入安定安全が確保確認出来てからいらっしゃいな。シシリーの予定収入より高額確保はせめてですわね。血縁者から引き離す不安感というものを軽く考えられるのもほどほどになさいませ」
ミルキラ様。カッコイイ。
「弟がいるから、おれがこっちにきてもいいと思っている」
うちの国、他国人の就活は難易度高いぜ!?
朝食は食った気にならなかった……。
量は食ったんだけど、味が、さ。




