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パートナーになっていただけませんか?

 サロンにむかう彼女を呼び止めた。

 彼女は心引く存在。小柄さを感じさせない威圧感を持つ彼女に憧れる。

 外の身分は無関係。それで気さくな対応をとる者も少なくはない。その校内にあって、周囲からの敬意を維持し、気高くある姿は美しい。そう、生きたいとすら思う。

 だから、もっと貴女を知りたい。

「もし、よろしければ、演舞会でパートナーになっていただけませんか?」

 彼女がヒールの高めの靴を履けば間違いなく自分の背を越えてしまうことがわかる。

「キト様」

 困惑した声は拒否を呼びそうで回避法を考えなくてはいけない。

「せっかくの楽しむ機会は、素敵な方とすごしたく思ったのです」

 ミルキラ先輩は素敵だと思うから。

「素敵……? わたくしが? ありがとう。でも、アレキシやセルツェを誘わなくてもよろしいの?」

「アレキシはカイエンが誘ったようです。セルツェは、誰かと共にというつもりはなさそうですね」

 確かに、断られることはある程度想定せざるをえなかった。

 彼女は気位が高く、舐められること、侮られること、軽く見られることを嫌う。年下の自分が誘いかけること自体を屈辱と感じたと言われても仕方がないような気がする。その予想内の反応はとても心地よい。

 ただ、当然ながら侮ったわけではなくて。知りたいだけ。もっと自分を、知ってほしいと思ってしまうのだ。

「ミルキラ先輩の」

「わたくしの?」

 淡い色合いのツインテール。キツメの眼差し。

「水着姿を、他の方に見られることは嫌だと思ったんです」

 湖渡り競技。他に参加できない者はこれに参加を強制されるのだ。先輩はまだ何に参加するか決めてないらしいと聞いて、イヤだなと思ったのだ。運動は苦手そうだから、出るようにも思えなかったけれど。

 予想しない意見だったらしく、キツメの瞳が驚愕に見開かれる。音の出ない状況で口がパクパクとあえぐ。

「ひとつには必ず参加と聞いて……その」

 もう何か決めていたのだろうか?

「自分は、確かに年下で、この国に生まれた貴女にとっては余所者である留学生。この学年の間しかいません。もし、他に過す方、過したい方がおられるのでしたら、断ってください」






「キットー!」

 アレキシの声に本から目を上げる。

「キト。キットだと他が反応しないか?」

「えー。しらなーい。そんなことよりさーミルキラ先輩誘えた?」

 そんなことより?

「誘えたよ。並んで恥ずかしくない衣装の準備と、当日贈る花を準備することが条件だった。でも、前提条件だよな?」

 基本的最低条件な気がする。

「そっかー。厳しいよねー。おっけ、任せて! ミルキラ先輩が選んだドレスタイプとカラータイプ調べたげるわ!」

 ぐぐっと拳を握るアレキシ。虫嫌いではあるが、行動派で情報通だ。

「感謝する。だが、学習室では声量を落とせ」

「うんうん。応援してるんだー。大丈夫! ミルキラ先輩はキトに好意的だよ!」

 納得するように頷くアレキシ。その根拠はどこから? あと、ここは学習室だ。

「あたしは、頑張って泳ぐんだー! 見にくる?」

「カイエンも泳ぐと言っていたから見に行くと思うよ。だから」

「え? カイエン先輩泳げんの?」

 西の国。

 母国には海があり、あてがわれている別邸には川沿いに立っていた。非常時の避難路は川沿い。水泳は叩き込まれた。


「やっほー! 一緒に水遊びー」

 カツン、音と共に視界に影がさす。

 しかたなく本を閉じる。

「アレキシ、移動しよう」

「え?」

 きょろりとして、そこに立つ監督教師に気がつく。

 あちゃ、っと表情を崩す。

「お騒がせしましたー」

 揃って廊下に出る。

「でも、ミルキラ先輩の水着姿を見たいとか思わないの?」

「不特定多数に肌を晒す事をよしとするとは思えない。先輩が望まないであろう事は望みたくないね」

 じっとアレキシの視線。上から下までを観察されている気配。

「わかった!」

 何を理解したのだと思わせるキラキラとまぶしい笑顔。

「貧相な身体を先輩にさらしたくないのね!」

 

 女じゃなかったらケンカを買っていたと思う。


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