第1話、失踪
私立志善高校
2年A組
その日の授業はすべて終わり、部活に行くものや帰る者や教室に残るものでざわざわとしている中、帰宅部である鬼成 叶〈キナリ カナエ〉も他の生徒同様に机の中の教科書をロッカーに詰め込んで帰ろうとしていた。
「カナ!」
すると背中を叩かれ、振り向くと同い年の従兄弟である桃島 京助〈モモジマ キョウスケ〉がニヤニヤして立っている。
「なんだよ、京助。部活行けよ」
京助のこのニヤケ顏は嫌な予感しかしない。
「いやー・・・それがさぁ今度、史帝女子と合コンやんだけど、向こうの子が3人来れなくなっちゃったんだよねー」
やっぱり女の話か。
「それでマコちゃんに友達2人連れて参加してほしいってことを伝えt「断る」
叶は即答すると教室を出た。
京助が必死に追いかける。
「待って待って!なんでよ!兄のお前が説得したらマコちゃん、来るかもしんないじゃん!あと、友達2人はマコちゃんがいつも一緒にいるあの可愛い子たちでいいから!」
マコとは、叶のひとつ下の学年にいる妹、真〈マコト〉のことである。
「あのなぁ、マコにそんなこと言ったら飛び蹴りを顔面に食らうわ!頼むならシズに頼め!お前、同んなじクラスだろうが」
シズとは叶のひとつ下の弟、閑〈シズカ〉のことであるが、たまたま閑が早生まれ(※)になってしまい、学年が同じになってしまった弟である。
「一応シズに頼んでみたけど、小声で死ねって言われたよーあの腹黒王子はなんとかならないわけ?」
京助は頬を膨らませた。
「それが普通の反応だろ。そんなにマコにきて欲しいなら自分で頼めよ」
「マコちゃんには嫌われたくないもーん」
もうすでに嫌われてるような気がするが。
「とにかく、俺は言わないからな。自分でやれ。そういうわけでお前は部活に行け。俺は帰る!!」
そう言って自転車に乗って叶はこぎだした。
カナのバカー!というブーイングが後ろから聞こえるが、無視してそのまま学校を出て行った。
* * *
家に帰ると家には誰もいなかった。
他の兄弟たちはみんな部活やらなんやらで、帰宅部の叶が一番に帰ってくるのだが、
「オカンがいねえな・・・・」
いつもは家にいる母親がいない。
買い物にでも行ったのかと考え、叶は冷蔵庫からプリンを出して食べだした。
テレビでもつけようかと、リモコンを手にとったとき、テーブルに置いてある1枚のメモ用紙に気づいた。
「なんだこれ・・」
手にとって見てみると、
"カナちゃんへ
冷蔵庫のプリンは、シズちゃんが買ったプリンだそうなので、食べちゃダメだよ。
母より
P.S. お母さんはちょっくらアメリカに行ってきます"
・・・・なんかP.S.と本文の内容が逆転してるんだけど!!!
しかもすげぇ、そこら辺のスーパー行くみたいなノリで書かれてるけど、これってUSの方じゃなくてアメリカ村の方だよね!?そうだと言って!!
叶が唖然としていると、携帯のバイブがなり、見てみると
"空港なう\(^o^)/"
ああああああああああ!!!!!
オカンンンンン!!!!!!
やっぱUSの方だったかぁああああああ!!!
なんで急にアメリカ行きたくなったんだよ!!!意味わかんねー!!朝もいつも通りだったし、本当なに考えてんだ!あのババア!!
前から天然だとは思ってたけど、天然どころかボケた婆さんレベルだぞ!!
叶はすぐさま母親に電話するも出ず、
「・・・・もしかして嘘・・・か?」
母親が考えたドッキリか?と思い、母親のクローゼットを見れば、服がほとんどなく、大きいキャリーバックもなくなってる。
マジかああああ!!!!!
本気じゃねぇか!!あのババア!!!
どんな大掛かりな家出だよ!!!!アメリカって!!何しに行くんだよ!!!
叶は何度も電話をかけるが出ない。
「まさかもう飛行機に・・・」
マコやシズに連絡するか・・・?
でもあいつらも今部活と生徒会で電話には出れん・・・
「ただいまー」
叶がテンパっている間に、誰かが帰ってきた。
※早生まれ: 1月1日〜4月1日の間に生まれること。叶は4月9日生まれ、閑は3月29日生まれのために同じ学年となった。