表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/257

第七十六話

《記憶の狭間 改悛の玉座室》


薄暗い蝋燭のシャンデリアで照らされた個室がある。そこは床一面に奇妙な絨毯が敷かれてあった。淡い紅色で周りを縁取られた、一辺が約25センチ程度の正方形が無数に刻まれており、それぞれの真ん中には眼球が埋まっている。部屋の中心には緑色の玉座がポツンと無造作に置かれており、サテン生地でできた緑色のカーテンが、部屋中の窓という窓をすべて閉ざしている。


「今夜はやたらと静かだ…。」


そこへ漆黒のローブを纏った『吾』と、K美の姿に変貌をとげた『荊の女王』である『私』が現れた。


「『荊の女王』よ、ご覧の通り旦那様はもう気付かれてしまった。自分が騙されていた事や、彼等に陥れられた事を…。何とも不憫だとは思わぬか?」

「はい…。『私』は『自分』を救いたい…。この身を捧げてでも、守りたい。」

「今度こそあの方の自殺を止めるんだよ。以前は二度も失敗したからね…。」

「はい…。」

「過去の傷なんかに捉われてはいけないんだ。その為に我々はいつだって、本当の自分とは何か?を問い続けて生きて行かなければならない。たった一つのこの左手首の傷がある事で、我々は他人に傷付けられてしまう。これ以上、余計な事で傷付く必要は無いのだ。」


そこへ、大男である『我』が姿を現した。『吾』に対しては、哀しい懐疑的な瞳を見せている。『我』の態度に、『吾』は嫌悪感を表している。


「なんだ、その情けない瞳は?」

「…。」

「それよりも奴等の様子はどうなんだ?」

「『僕』も『俺』も、仲違いしたまま自分の巨塔へ戻った。彼等は自らを閉鎖病棟に隔離したようなものだが…。これで本当に良かったのだろうか?」

「クックックッ…。ざまぁみやがれってんだ。これで俺達にも心象世界で巨塔を建築できるチャンスが生まれてきたわけだ。」

「『自分』を失っていく人間の心に、自意識の巨塔を建てて何の意味がある?」

「それならてめぇは!この左手首で馬鹿みたいにいつまでも輝く傷を抱えて生きて行けるのか?!冗談じゃね!このままでは天国に行けねぇし、ましては救済も受けられやしない!」


その瞬間に『吾』が、滑らした口を塞いだ。しかし『我』は聞き逃さなかった。確かに『吾』はと救済の二文字を口にした。『我』眉間にシワを鋭く寄せたまま、脅かす様に近寄った。


「貴様は、まさかグノー…。」

「グノー?何の事だ…?」


『吾』はシラを切ったが、明らかに何かを隠しているようだった。『我』背中を向けて無言でその場を去ろうとした。


「どこに、行くんだ?」

「貴様には関係無い。」

「教えろ!」

「敢えて言うならば…『我』儘に行く…。」

「クッ!」


それ以上『吾』も止める事はできなかった。『自分』が記憶の中で、再び手首を切るタイミングを外すわけにはいかないからだ。


「分かってるんだろうな?!俺達の真の目的を?!奴等の手助けしても、何も達成しやしないんだぞ!」

「御意…。」


だが『我』の行く先は既に決まっている。「守りが必要なプライドは意地だ!」 と説く自意識のいる《無限の三円塔城》と、「守るべきプライドはある!」 と主張する自意識のいる《無慈悲なき巨塔》 である。


続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ