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第七話

奇妙な夢だった…。


昼間、私服警察と名乗る怪しい老人に、駅の裏路地のような場所に連れていかれる。そこには全て木造でできた長屋があり、孤児と思われる多くの子供たちが暮らしていた。その中で、今朝運ばれたという生まれたばかりの黒人の女の子が、頬も痩け、声も枯れ、衰弱した体を動かす事無く、手当てを受けながら横たわっていた。声も掛けることさえも、何もできない俺は、ただ黙って彼女の瞳を眺め、彼女もこちらに気が付きじっと見ている。


連れてきた老人は言う。あの娘がどこから来たのかさえ分かれば…だから話かけてやってくれと。俺は何も話せなかった。ただ彼女の瞳を見つめるだけが自分のできる限界。


だが、不思議な事に、彼女の瞳の大きさは変わらないまま、まるで一秒ごとに成長をし始めていく。ふと気が付くとハイハイをし、歩きだし、こちらに近寄ってきた。


どこから来たんだい?彼女は霞が関…。とぽつり答える。すでに身体は6、7才だろうか?一体何があったのかな?その質問に彼女はただ、分からない…。覚えてない…。けれど表情は明るく、幸せに溢れた満面の笑みを浮かべ、すっかり成人に成長していた。


気が付くとまわりにいた子供たちも、彼女と同じように成長し、長屋が狭く感じるようになっている。そして彼女は一人の男の子に恋い焦がれてゆく。けれど決して俺からは目を離そうせず、幸せを噛み締めながらやがて子供を産む。


老人は言った。ありがとう…。

どうやら俺の役目は終わったらしい。そうだ、そういえば俺は何かを探していたんだ。一体なんだったのかな?そうもしないうちにこの夢は闇に萎んでいった。


昨夜…。

テーブル下でK子に手をしがみつかれてから丸一日が経った。今夜もKと逢うことになっている。俺はなんなんだろうか…。


続く

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