第三十五話
「あんたは!どうしてそうやって馬鹿なの!」
なんで自分が母親に怒られなければいけないんだ?自分は苦しくて誰かに止めて欲しかったのに…。何も気が付かないで寝室で寝ていたのは誰なのさ…。でも悪いのは自分なんだ…。
「お母さん、ごめんなさい…。だから怒らないで。」
「私は本当に情けないよ!自分の息子が自殺するなんて!」
俺が情けないだと?この俺の存在が世間様に情けないだと?貴様はこいつに対して何を言っているのか分かっているのか?なんて母親だ。自分の監督不行き届きを棚に上げて、自分の恥ずかしさを先行するなんて。こんな母親は信用するな。
「お願いだからもう二度としないでちょうだい。」
「分かったよ、もうしないよ…。」
約束なんてするな。お前の母親はお前のレベルに行くことができないから、理解できないからそんな約束をしようとしているんだ。親に期待する愛情と勘違いするな。
「お前の書いた遺書は、お父さんがしまっておく。見るのも辛いからな…。お前はまだ何にも分からないんだ。きっと母親の愛情が足りなかったんだ。」
なんて言い草の父親だ。自分には責任が無いって腹だ。暗に男としてのお前の弱さを責めているんだ。
「私はちゃんと育てました!いっつもそばで私を見てました!」
「だったらなんでこんな下らない事をするんだ!?お前がちゃんと見てなかったからだろう!」
「あなただって止められなかったでしょう!?」
「俺は分かってたさ!俺の可愛い息子だもの!」
自分は悪いことをしたんだ。自分の両親が口論しているのは、自分がいけないからなんだ。
違う…。こいつらはお前の親でもなんでもない。まだ子供なのさ。こいつらには分からない領域にお前がいるから、分からないと言えないんだ。自分勝手で思い込みの激しいただの欲張りな生物だ。信用したら馬鹿を見る。いいな?信用するな。
「お兄ちゃん、私怖いよ…お兄ちゃんがそんなことするなんて…。」
自分は妹を傷つけてしまった。きっと本当に恐がらせてしまったんだ。
違う、お前の妹はお前という傘が無くなることが怖いんだ。お前という傘があれば、可愛くていつまでも親にわがままを言える妹でいられる。
「…。」
兄ちゃんはシカトした。それどころじゃないって言い草だ。一度でいいから…兄貴らしいとこ見せてみろよ!
無駄だ。やめろ。こいつは分からないふりをしているんだ。もしお前と向き合えば、こいつが今までいじめられていた過去を振り返らなければならない。そんな自分には戻りたくないんだ。例えお前が傷つこうとも、葬式の時にみんなと同じように涙を流すだけだ。
みんなみんな家族のみんな、心配掛けてごめんなさい。自分が全部悪いんだ。みんなに迷惑を掛けてる自分が悪いんだ。
違う、お前が悪いんじゃない。気が付こうとしない周りが悪いんだ。お前は何も悪くない。お前は愛する者の為に、愛する者の気持ちを少しだけでも理解しようとしただけだ。
自分は天上を見ている。あ…今はベッドの上なんだ。左手首は?治療してある。一体何針縫ったんだろう?イタ!傷より縫ったところが痛いよ…。
いいか、誰も信用するな。それがお前が生きて行くために必要な事なんだ。
続く




