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第二十八話

限られた不確かな世界の中で、唯一人が信じられるもの、それは裏切りだけだ。不安や欺瞞や疑惑のような中途半端で流動的で不安定なものでは駄目だ。エネルギーであって確実ではない。だが人からの裏切りや、人への裏切りは、決して裏切らない核のようなものだ。それを手にできた者だけが強くなれる。

力や精神の強さではない本来ある強さを得ることができる。


彼らは無防備にも、代理の家族を演じ、代理の兄弟を演じ、恋人の代理を演じている。そして疑いもないように自分達の輝きを発している。


やたらとKに近づいて情けない姿を演じているK助と、常に何があろうと人の上に立ちたがる自分を演じているK。俺はしばらくこの下らない関係を観察する事にした。俺の信者が求めていた答えを見出だすべく、敢えて二人の前で静観した。


「そうなんすよ、なかなか僕らが好きな音楽をみんな分かってくれないんですよ~。」

「K助は昔からDJをかじっていて、こいつが選曲するのって渋いのばかりなんだわ。でもなんかいいのね。」

「渋い…というか、自分はただ掘り下げただけなんですけどね。音楽はどんなのを聞きます?」

Kは俺が答える間も無く、俺の信者を語りだした。

「あ、この人もかなり渋いの聞くの。あんましK助がチョイスするような感じではないけど。知り合いの人が結構音楽とか作る人が多くて、結構辛口なんだよ。」


俺はカレーか?全くふざけてやがる。そうやって人を決めつけ、自分の骨となる部分は殻に入り、誰にも分からないと決め込む。全くふざけた輩だ。こいつらの優越感は劣等感の固まりなんだ。しかも最悪で、同調さえ認めようとしない、劣等感。認めたら存在意義を無くす劣等感。俺はちょっぴり意地悪な質問をしてみた。


自分らの行動には理由があるの?彼ら二人は突然びっくりした顔でこちらをのぞいてきた。そして嘲笑。つまりノリで真面目な本質をごまかすわけだ。


こうやって、彼らは人の心を蝕む。俺は帰ることにした。もともと酒も飲むつもりはなかった。新しい住人に悪い気がしたからだ。


廃墟が見える…。ギリシアが両手を広げ、待っている。

続く

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