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第十七話

なんで分かるの?どうしてそう言えるの?一体何が望みなの?あなたは何者なの?


何者ではない。過去には何者かになりたかった子供だっただけだ。分かるのではなく、外れた歯車を見つけて直すだけだ。そう言えるのは、言い返せないように言ってるからだ。何が望みなのか、それは自分が一番してほしいことをすることが望みなのだ。だが、それでも頑なに拒否ができる人は、本当に賢い人なんだ。


K子は車で迎えにきた。こちらはかなり酔いが回っている。ふらふらして、足元がおぼつかない。雨がけたたましく地面を叩きつける。K子の車まで辿り着くまでで精一杯だった。K子は俺を見るなり、車から飛び出してきた。情けない。女性に助けられるなんて。


「びちょびちょじゃない。どうしたの?」

どうした?あぁ俺が電話をしたのか。そうでなければ誰も来やしない…か。きっと甘えたかっただけなんだろう。たしかKを介抱した後、タクシーを呼んで彼女の自宅まで送らせた。タクシーのテールが滲みだし、一人、夜中の道を歩いていると、突然世界中が回りだし、自分もテキーラで相当酔っていた事を忘れていた。ははは、参ったな。


「連絡あって嬉しかった。もう会ってくれるとは思わなかったから。」

なんてお定まりのセリフなんだ。そんな事を言って恥ずかしくて淋しくはないのだろうか?もう自分はなりきっているのだろう。そのために俺というお定まりの不埒な役が必要なんだろう。


「大丈夫?気持ち悪くなったら、すぐ止めるから言って。」

大丈夫だ。ただ酔いが回っているだけだ。一体今は何時なんだ?まだ11時半じゃないか。何をやっているんだ俺は。とにかく眠たい。眠たい…。もう疲れたから眠たい…。


その夜、それぞれの色を発する人魚達の夢を見た。あはは、なんだいこれは。明らかに夢だろう?だが、彼女達の奥には、どんよりとした空気に包まれたもう一人の人魚がいた。彼女はしくしく泣いてるばかりだった。


目が覚めると、見知らない天井が見えた。シーツもベッドも何もかも知らないものばかりだった。辺りを見渡すと、何やら生活感を感じる部屋だった。うん?どこだここは。部屋の隅にはセンスのある観葉植物。レースのカーテンから日差しが入り込んでいた。


外を見ると、どうやらどこかのマンションにいるらしい。疑問はつきないまま、整理整頓が行き届いた見知らない部屋で、俺はぽつんとベッドに座っていた。

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