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第十五話

Kはイライラしていた。


今夜は三箱目のタバコを開けようとしている。さすがに俺は止めた。これ以上吸うのは良くないし、こっちも胸焼けがして、吐き気に襲われて気持ちが悪い。


だが、Kはまたタバコに火を点ける。そして次はテキーラを頼みだした。いくらなんでも今夜は飲み過ぎだ。なら、自分の代わりに飲んでほしいと言いだす。別にテキーラの一、二杯くらい飲んだところで大したことはない。


俺はKに言われるまま、彼女の指定する数のテキーラを喉に通した。気が付くと、テーブルには塩とライムが散らばっており、ショットグラスも増えている。目の前では、ショットグラスをテーブルに叩きつけ、苦い顔をしながら飲み干したKがいた。いつの間に…。


私なら…。テーブルクロスの下で隠したりはしない…。

Kは堂々とおもむろに俺の指先を握り、こちらをじっと見つめてきた。戸惑いは確かに隠せない。だが、これは明らかに酔った勢いだ。この先に進むのは簡単だ。だが、今までの白熱した討論を無駄にしたくはない。意見も生活習慣も考えも違うからこそ、異性でいるより友として仲良くいたいんだ。


上手くコラボや彼女の興味がありそうな話題に変えて、するりと彼女の手から逃げ出した。すると離れたその時、Kは顔を真っ赤にして怒り、どこかへ行ってしまった。全くどうなってるんだ?今夜は…。一体、何が悪いんだ?いや、俺が悪いのは分かっている。一体彼女は、何の気分が悪いんだ?残されたテーブルで、俺はそんな事をちまちま考えていた。


30分が経ってもKは戻ってくる様子が無い。俺は怒って帰ったのだろうと思い、席を立とうすると、足元が何かにあたったのが分かった。彼女のバッグが置いてあるままだ…。しかも口は開いてて、無用心にも財布を入ったまま。まさか忘れて帰ったのか?


その時、ポケットにしまった携帯がけたたましく鳴りだし、通知はKの名前を表示している。


電話の先では、助けを求める彼女の弱々しい声が、どこかの個室で鳴り響いてる。


なんて女だ…。完全に泥酔している…。


続く

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