第一話
この奇妙で中途半端なあなたの魂に、今夜、別れを告げにきます。
思えばあなたは三度、私に会いたがっていました。わたしも、こちらへいらっしゃるのでは?と願ったものです。別に貴方が大した人間だとか、たいそう立派な偉業を成し遂げたとか、そんな価値のある人間だと思っておりません。そうですね、言うなればウソのお上手な方ぐらいでしょうか?それもみんなから好かれたいためのウソでしたね?よくぞここまで頑張ろうとしたものです。そんな時のあなたはたいがい、私を黙って覗き込んで涙を流していたものです。フフフ、今、あなたが初めてこの世に生を受けて、目蓋を開き、私を見つめ、大泣きした時を思い出しました。
今ではどうでしょうか?ただ確かめているだけなのではないでしょうか?
私は三度とも大笑いしました。楽しくて素晴らしくて心地よくて美しい時でした。しかし同時に貴方は凄まじい生命力と根気で汚れながら、穢れず、戯れながら、群れをなさず、されど求めるものは、自分の中にあらず、また他人の中にもあらずでしたね。
そんな貴方の中途半端な魂が、時折愛しくて、噛りたくなることばかりでした。
好かれるためにウソを重ねた、貴方の中途半端な魂に、今日は本当に別れを告げます。もう二度と、貴方は私を見ることもなく、私を凝視することもないのですね?
だから、今度は私が貴方の今迄を見る番です。
続く




