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『婚活アドバイザー成田の異世界相談録』

婚活アドバイザー成田、結婚四十年目のドワーフに「妻と別れたい」と言われる

掲載日:2026/11/01

「成田さん。妻と別れたいんだ」


 昼下がりの冒険者ギルド。


 俺の向かいに座ったドワーフの男性は、そう言って深々と頭を下げた。


「……別れたい、ですか」


「ああ。離婚を考えている」


「ちなみに、ご結婚されて何年になります?」


「四十年だ」


 ……四十年。


 長いなぁ。


 俺が婚活アドバイザーをしていた頃、四十年連れ添った夫婦の相談を受ける機会なんて、ほとんどなかった。


 そもそも、俺自身が四十六歳だ。


 人生の大部分を一緒に過ごした相手と別れたいと言われても、簡単に答えを出せるはずがない。


「まず、お話を聞かせていただけますか?」


「ああ。頼む」


 男性は、ごつごつした手を膝の上で握りしめた。


 名前はガルド。


 王都の外れで鍛冶屋を営む、百十二歳のドワーフだという。


 奥さんは人間の女性で、名前はマーサさん。


 六十八歳。


 四十年前に結婚し、娘さんが一人いるそうだ。


 俺は成田和彦。


 異世界に転生してしまった、元婚活アドバイザーの四十六歳だ。


 今は冒険者ギルドに籍を置きながら、人間関係や縁談の相談に乗っている。


 剣も魔法も大したことはできないが、人の話を聞くことだけは、前の仕事で嫌というほどやってきた。


 とはいえ。


 異世界で結婚四十年目の離婚相談を受けることになるとは、思ってもみなかったけれど。


「妻がな、海を見たいと言い出したんだ」


「海、ですか?」


「ああ。南の港町に娘夫婦が住んでいる。そこへ行って、しばらく暮らしたいそうだ」


「なるほど」


「だが、俺には鍛冶場がある」


 ガルドさんは、少しだけ胸を張った。


「祖父の代から続く工房だ。炉の火を絶やすわけにはいかん」


「それで、意見が合わなくなったんですね」


「ああ。妻は俺が一緒に来ないなら、一人でも行くと言う」


「……はい」


「四十年も一緒に暮らしたのに、今さら別々に生きるというのか」


 ガルドさんの声が、少し低くなった。


「だったら、いっそ離婚した方がいいんじゃないかと思ってな」


 ……なるほど。


 ただ、気になることがある。


「ガルドさん。奥さんから、離婚したいと言われたんですか?」


「いや」


「では、離婚を考えているのはガルドさんだけ?」


「……そうなるな」


「ちなみに、奥さんと別れたいんでしょうか?」


「そんなわけがあるか!」


 ガルドさんは勢いよく立ち上がった。


 周囲の冒険者たちが、こちらを見る。


「……あ、すまん」


 ガルドさんは、気まずそうに座り直した。


 俺は小さく頷いた。


「では、別れたいというより、どうしていいかわからないんですね」


「……そうかもしれん」


 その時だった。


『――おじさん!』


 俺の肩の上で、緑色のスライムがぷるんと揺れた。


 ミドリ。


 森で出会い、俺が名前をつけた相棒だ。


 《簡易念話》で話しかけてくる彼女は、こういう時も遠慮がない。


『――この人、奥さんが大好きなんですね!』


「……うん。たぶんね」


『――じゃあ、一緒に海へ行けばいいのに!』


「それが簡単にできないから、相談に来てるんだよ」


『――難しいですね!』


「……本当にね」


 ◇◆◇


 翌日。


 俺はガルドさんの工房を訪ねた。


 別に、離婚相談を引き受けたからといって、必ず夫婦の家まで行くわけではない。


 ただ、昨日の話には、少し引っかかるところがあった。


 ガルドさんは奥さんが海へ行きたがっている理由を、ほとんど話していなかったのだ。


 ……というより、聞いていないようだった。


「おお、成田さん。よく来てくれた」


 工房の奥から、ガルドさんが顔を出した。


 分厚い革の前掛け。


 煤のついた腕。


 背丈は俺よりずっと低いが、肩幅は倍くらいありそうだ。


 奥では、炉の火が赤々と燃えている。


『――おじさん! 暑いです!』


「そうだねぇ」


『――パンが焼けそうです!』


「ここはパン屋じゃないからね」


 ミドリは不満そうに揺れた。


 ガルドさんが豪快に笑う。


「面白いスライムだな!」


「ええ。おかげで退屈しません」


『――わたしも、おじさんといると退屈しません!』


「それはどうも」


 そんなやり取りをしていると、工房の奥から女性が現れた。


「あなた。お客様?」


 白髪交じりの髪を後ろでまとめた、小柄な女性だった。


 年齢を重ねた穏やかな顔立ち。


 けれど、その目には、はっきりとした強さがあった。


「マーサ。昨日話した相談員の成田さんだ」


「ああ、あなたが」


 マーサさんは俺を見ると、少し困ったように笑った。


「主人がご迷惑をおかけしていませんか?」


「いえ。今日は、お二人のお話を少し聞ければと思いまして」


「……そうですか」


 彼女はガルドさんを見た。


「あなた、離婚の相談をしたんですって?」


「な、なんで知ってる!」


「昨日、自分で言ってたでしょう。『もう別れるしかない』って」


「……む」


 ガルドさんが黙り込む。


 ……ああ。


 これは、思った以上に話し合いが必要そうだ。


 ◇◆◇


 工房の隣にある居間で、俺たちは向かい合って座った。


 テーブルには、温かいお茶と焼き菓子が並んでいる。


『――おじさん! このお菓子、おいしいです!』


「よかったね」


『――もう一つ食べてもいいですか!』


「マーサさんに聞いてみようか」


「もちろん、どうぞ」


『――ありがとうございます!』


 ミドリの食欲は、今日も絶好調だ。


 俺は二人に向き直った。


「まず、マーサさんに伺ってもいいですか?」


「ええ」


「どうして、海へ行きたいと思われたんでしょう」


 マーサさんは少し驚いたようだった。


 それから、ゆっくり微笑んだ。


「子どもの頃からの夢なんです」


「子どもの頃から?」


「はい。私、生まれてから一度も海を見たことがないんですよ」


 ……そうなのか。


「若い頃は、いつか行けると思っていました」


 マーサさんは、お茶の入ったカップを見つめた。


「結婚して、娘が生まれて、工房の仕事を手伝って。毎日忙しかったけれど、幸せでした」


 ガルドさんが、小さく頷いた。


「娘が独り立ちしてからも、主人は忙しくて。私も、この工房を離れる気にはなれなかったんです」


「……はい」


「でも、この前、娘から手紙が届いたんです」


 マーサさんは、棚から一通の封書を取り出した。


 中には、港町の景色が描かれた小さな絵が入っていた。


 青い海。


 白い帆船。


 遠くまで続く水平線。


「孫が描いてくれたんです。『おばあちゃん、一緒に海を見よう』って」


 彼女は、絵を指でなぞった。


「それを見たら、急に思ったんです」


「何を、ですか?」


「……私、いつまで『いつか』って言っていられるのかしら、って」


 居間が静かになった。


 ガルドさんが、眉をひそめる。


「マーサ。そんな大げさな」


「大げさじゃないわ」


 マーサさんは、静かに答えた。


「あなたは、あと何十年も元気で鍛冶仕事ができるでしょう。でも、私は違うの」


「……」


「今年は歩ける。来年も歩けるかもしれない。でも、十年後はわからない」


 ガルドさんは、何も言わなかった。


「私はね、あなたと海を見たいのよ」


 マーサさんの声が、少し震えた。


「でも、あなたが来られないなら、一人で行くわ」


 ……。


 俺は、ようやくわかった気がした。


 この夫婦が争っているのは、海へ行くかどうかだけじゃない。


 二人にとって、時間の長さが違うのだ。


 ◇◆◇


「……そんなこと、考えたこともなかった」


 ガルドさんが、ぽつりと言った。


「そうでしょうね」


 マーサさんは、責めるような口調ではなかった。


「あなた、三十年前にも言ったもの。『工房が落ち着いたら旅行に行こう』って」


「……ああ」


「二十年前にも」


「……」


「十年前にも」


 ガルドさんは、顔を伏せた。


「俺は……本当に行くつもりだった」


「知ってるわ」


 マーサさんは頷いた。


「だから、ずっと待っていたの」


 ……つらいなぁ。


 どちらかが悪いと、簡単には言えない。


 ガルドさんは家族を支えるために働いてきた。


 マーサさんも、その仕事を支えてきた。


 どちらも、夫婦のために生きてきたのだろう。


 でも。


 相手のために頑張っているつもりでも、相手が本当に望んでいるものを、見失うことはある。


「ガルドさん」


「……何だ」


「少し、質問してもいいですか?」


「ああ」


「工房の火を絶やしたくないとおっしゃっていましたね」


「そうだ。祖父の代から続く、大切な工房だ」


「では、もし三か月ほど工房を休んだら、どうなりますか?」


「……三か月?」


「はい。仮の話です」


「注文は遅れる。客にも迷惑がかかる」


「それ以外には?」


「……炉を冷ますことになる」


「はい」


「再び火を入れるには、準備が必要だ」


「なるほど」


 俺は頷いた。


「では、工房そのものがなくなってしまうわけではないんですね」


 ガルドさんが、顔を上げた。


「……そりゃあ、そうだが」


「お客さんに相談したり、仕事を一時的に預けたりすることはできませんか?」


「……」


 ガルドさんは腕を組んだ。


 そして、しばらく考え込んだ。


「弟子が一人いる」


「はい」


「腕はまだまだだが、簡単な修理なら任せられる」


「それなら、できることがあるかもしれませんね」


「……だが」


 ガルドさんは、苦しそうな顔をした。


「俺がいない間に、何かあったらどうする」


 ……ああ。


 そうか。


 工房が心配なのは本当だ。


 でも、それだけじゃない。


「ガルドさん」


「何だ」


「四十年間、工房を守ってこられたんですよね」


「ああ」


「誰かに任せるのは、怖いですか?」


 ガルドさんは、俺を見た。


 しばらくして、ゆっくり頷いた。


「……怖いな」


 その声は、さっきまでよりずっと小さかった。


「祖父も父も、死ぬまで炉の前に立っていた。俺もそうするのが当たり前だと思っていた」


「……はい」


「俺が休んだら、何かが終わってしまう気がするんだ」


 マーサさんが、夫を見つめた。


 俺は少し考えてから言った。


「終わるものも、あるかもしれません」


 ガルドさんが顔を上げる。


「ただ、それが悪いこととは限りませんよ」


「……どういうことだ?」


「誰かに任せることで、次の人が育つこともありますから」


 仕事を引き継ぐのが怖い。


 自分がいなくなったら、何も回らなくなる気がする。


 そんな気持ちは、少しわかる。


 俺も以前は、仕事を抱え込みすぎて、家族との時間を後回しにしたことがあった。


「工房を大切にすることと、一日も休まないことは、同じではないと思います」


 ガルドさんは、黙って聞いていた。


「もちろん、簡単に休めるとは思いません。お客さんとの約束もありますし、弟子の方の都合もあります」


「……ああ」


「だから、実際にできるかどうかは、これから確認する必要があります」


 俺は、二人を交互に見た。


「ただ、離婚するかどうかを決める前に、できることがまだ残っている気がするんです」


 ◇◆◇


「……成田さん」


 今度は、マーサさんが口を開いた。


「私からも、聞いていいかしら」


「もちろんです」


「もし、主人がどうしても行けないと言ったら?」


 ……うん。


 大切な質問だ。


「その時は、マーサさんが一人で海へ行くという選択も、尊重されるべきだと思います」


 ガルドさんが、はっとした顔をした。


「ですが、それが離婚を意味するとは限りません」


「……限らない?」


「はい。夫婦だからといって、いつも同じ場所にいなければならないわけではありませんから」


 マーサさんは、少しだけ目を見開いた。


「もちろん、離れて暮らすことが寂しいなら、それも話し合う必要があります。でも、海へ行きたいという願いと、結婚を続けたいという気持ちは、両立してもいいはずです」


 ガルドさんは、じっと妻を見た。


「……マーサ」


「何?」


「お前は、俺と別れたいのか?」


 マーサさんは、呆れたように笑った。


「どうしてそうなるのよ」


「だって、お前は一人でも行くと……」


「行くわよ。海は見たいもの」


「……」


「でも、あなたと別れたいなんて、一度も言ってないでしょう?」


 ガルドさんの口が、ぽかんと開いた。


 ……うん。


 やっぱり、そこだったか。


「じゃあ……離婚しなくてもいいのか?」


「当たり前でしょう」


 マーサさんは、少し怒ったように言った。


「私が海へ行きたいと言っただけで、あなたが勝手に離婚の話を始めたのよ」


「……すまん」


「まったく、四十年も一緒にいるのに」


 マーサさんは、ため息をついた。


 そして、少しだけ笑った。


「あなたは昔から、私が何を考えているか、聞く前に決めてしまうんだから」


 ……耳が痛いなぁ。


 俺だって、美咲に同じことを言われたことがある。


 家族のために頑張っているつもりで、肝心の家族の話を聞いていなかった。


 そんなこと、何度もあった。


 ◇◆◇


 その後、俺たちは具体的な話をした。


 まず、工房の注文を整理する。


 急ぎの仕事は終わらせる。


 延期できる仕事は、お客さんに相談する。


 弟子には、任せられる範囲を確認する。


 そして、旅に出るなら、いつから、どのくらいの期間にするのか。


 最初は難しい顔をしていたガルドさんも、少しずつ自分から案を出し始めた。


「……一か月なら、何とかなるかもしれん」


「一か月?」


「ああ。炉の整備も、その時期に合わせればいい」


 マーサさんが、驚いた顔をした。


「あなた、本当に?」


「まだ決まったわけじゃない。弟子にも客にも相談せんといかん」


「ええ」


「それに、旅の途中で何かあったら困る。荷物も準備せんとな」


 ガルドさんは、ぶつぶつと考え始めた。


 マーサさんは、そんな夫を見つめていた。


 そして。


「……ありがとう」


 小さく、そう言った。


 ガルドさんが、顔を上げる。


「何だ、急に」


「まだ何も決まっていないけれど」


 マーサさんは微笑んだ。


「一緒に行く方法を考えてくれたのが、嬉しいの」


 ガルドさんは、しばらく黙っていた。


 それから、照れくさそうに鼻を鳴らした。


「……四十年も待たせたからな」


 ◇◆◇


 帰り道。


 俺は、ミドリと一緒に夕暮れの王都を歩いていた。


『――おじさん!』


「ん?」


『――あの二人、離婚しないんですか?』


「今のところは、しないみたいだね」


『――よかったです!』


「うん」


『――でも、海へ行けるかは、まだわからないんですよね?』


「そうだね。工房のこともあるし、これから話し合わないと」


『――じゃあ、まだ終わってないんですね!』


「……そうだよ」


 俺は、思わず笑った。


 そう。


 相談を受けたからといって、すべてがその場で解決するわけじゃない。


 むしろ、話し合いの始まりにすぎないことの方が多い。


『――おじさん!』


「今度は何?」


『――わたしも海を見てみたいです!』


「そうだねぇ。いつか行けるといいね」


『――いつかって、いつですか?』


 ……。


 俺は、思わず足を止めた。


 ミドリは、何の悪気もなく聞いている。


 でも。


 今日の話を聞いたあとだと、その言葉は妙に胸に刺さった。


「……そうだね」


 俺は少し考えた。


「行ける時が来たら、ちゃんと相談しよう」


『――約束ですよ!』


「うん。約束」


 ミドリが嬉しそうに揺れた。


 ……いつか。


 便利な言葉だ。


 でも、便利だからこそ、気をつけないといけない。


 俺には、日本に帰るという最終目標がある。


 美咲と、悠斗と、結衣。


 あの三人に、もう一度会いたい。


 その気持ちは、今も変わらない。


 だけど。


 帰る日がいつになるかわからないからといって、今ここで交わした約束を、全部曖昧にしていいわけじゃない。


 俺は、肩の上のミドリを見た。


「……ミドリ」


『――はい!』


「もし海へ行けることになったら、パンも持っていこうか」


『――本当ですか!?』


「うん。海を見ながら食べたら、おいしいかもしれないし」


『――最高です! 海、大好きです!』


「まだ見たことないでしょ!」


 夕暮れの道に、俺の笑い声が響いた。


 ◇◆◇


 それから、ひと月ほどたった頃。


 ギルドの受付で、リリアさんに呼び止められた。


「成田さん。お手紙が届いていますよ」


「俺にですか?」


「はい。ガルドさんからです」


 ……おお。


 どうなったんだろう。


 俺は封を開いた。


 中には、少し乱暴な字で短い文章が書かれていた。


『成田さんへ。


 あのあと、弟子と話した。


 驚いたことに、あいつは俺が休む間、工房を任せてほしいと言った。


 客にも頭を下げて回った。


 怒られもしたが、事情を話すと、待ってくれる者もいた。


 それでも片づかない仕事があり、結局、出発は二週間遅れた。


 マーサには、また待たせてしまった。


 だが、今度は一緒に出発の日を決めた。


 今、俺たちは港町にいる。


 海は広い。


 正直、あんなに広いとは思わなかった。


 マーサは、初めて海を見た時、しばらく何も言わなかった。


 それから、泣いた。


 俺は、どう声をかければいいかわからなかった。


 だから、隣に座っていた。


 しばらくすると、マーサが俺の手を握った。


 四十年前と、同じ手だった。


 ……いや、違うな。


 昔よりずっと細くなっていた。


 それでも、俺には、あの手だとわかった。


 成田さん。


 俺は、妻の時間を、自分と同じだと思っていた。


 だが、違ったんだな。


 帰ったら、また炉に火を入れるつもりだ。


 ただし、今度は弟子に任せる日も作ろうと思う。


 マーサが、次は山を見たいと言い出したからだ。


 まったく、忙しい女だ。


 ……だが、悪くない。


 ありがとう。


 ガルド』


 ……。


 俺は、しばらく手紙を見つめていた。


 四十年。


 その長さを、俺はまだ知らない。


 でも、これだけはわかる。


 長く一緒にいることと、相手のことを全部知っていることは、同じじゃない。


 だから、何年たっても、話を聞く必要があるんだろう。


「……よかったですね」


 リリアさんが、微笑んだ。


「はい」


 俺も頷いた。


「本当に」


 その時だった。


『――おじさん!』


 ミドリが、俺の肩の上で元気よく跳ねた。


『――お手紙に、海のパン屋さんのことは書いてありますか!?』


「……書いてないねぇ」


『――ええっ!? 一番大事なのに!』


「いや、もっと大事なことが書いてあったよ!」


『――じゃあ、次のお手紙で聞きましょう!』


「……まあ、機会があればね」


 リリアさんが、くすくすと笑った。


 俺も、つられて笑ってしまった。


 離婚相談から始まった、小さな縁。


 結局、俺がしたことは、二人の話を聞いて、少し質問しただけだ。


 海へ行くと決めたのも、工房を休む方法を考えたのも、二人自身だった。


 ……それでいい。


 俺にできるのは、婚活相談くらいなんだけどなぁ。


 もっとも。


 結婚四十年目の相談ともなると、婚活という言葉が合っているのか、少し怪しいけれど。


 ――完――

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

今回は、結婚四十年目のドワーフと人間の夫婦のお話でした。

長年一緒に暮らしていても、相手の気持ちをすべて理解できているとは限りません。

特に、寿命の違う種族同士の夫婦なら、同じ「いつか」という言葉でも、その重みは違うのかもしれません。

ガルドとマーサが、これからもお互いの気持ちを聞きながら、二人の時間を大切にしてくれたら嬉しいです。そして、成田にもいつか、大切な家族と再会できる日が来ることを願っています。


本作は『婚活アドバイザー成田の異世界相談録』シリーズの独立短編です。


成田が異世界で婚活相談を続けながら、妻子の待つ元の世界への帰還を目指す長編本編、

『46歳、社畜のオタク婚活アドバイザーですが、異世界転生したらコミュ力だけで無双してしまいました ~妻子持ちのおじさん、帰宅を目指して魔王すら成婚させる~』

https://ncode.syosetu.com/n9705mx/


も連載しています。

本編は毎日 **10時・14時・20時** に更新していますので、気になった方はぜひ覗いてみてください!


面白かった、心に残ったと思っていただけましたら、評価・ブックマーク・感想などで応援していただけると、とても励みになります。


また次の相談でお会いしましょう!

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