2 Tactical movement
移動の間は、特に問題もなく。ちまちまと遠距離からアルスを狙撃でいやがらせしてくるプレイヤーが1人いたが、連射力が低くDPSの稼げないスナイパーライフルが単独で攻撃したところで、アルス相手にはたいしたダメージにはならない。悠長に棒立ちしているところをユキノジョーが狙撃でデスボックスに変えた。
そうして危なげなく次のエリア内に入り込んだチームは、小さな集落に潜伏。しばらくするとエリア縮小が完了し、次の縮小範囲が表示された。
「また遠いな」
ノイズが呻く。2度目の縮小範囲は、またもやエリアの北西方面。再び移動距離が長い。それを見て、ユキノジョーが提案を出す。
「早いとこ動き始めて、大きく北回りするルートでエリア内に入ろう」
「もう移動を始めるってこと?」
「そう。今回は縮小範囲が連続で北西に偏ってる。だから大きく削られる東から南にかけてプレイヤーが溜まる可能性が高い。このまま東から入ったら乱戦の放り込まれる。物資は十分だし、リスクを避けるには縮小エリア内でも北か西の方にいたほうがいい」
「大回りして北から入ると」
「そうだ」
現在の生き残りチームは25チーム中16チーム。そのほとんどが南東に偏っていると考えられる。まっすぐ向かうのはリスクが大きい。
「俺は別にいいぜ」
「俺も。経験者のユキノジョーに従う」
「うん」
「よし。じゃあ移動だ」
方針が決まると、さっそく行動を開始する。マップにユキノジョーが引いた線に従い、ワイヤーフック持ちのノイズが先行し偵察。レミルトンとユキノジョーはクリアリングとともに、アルスの脚についていける程度の物資漁りをしつつ、迂回しながら縮小範囲を目指す。
移動については敵の襲撃を受けることもなく、順調に進んだ。途中でまだ荒らされていない建物をいくつか見つけたので、実入りもそれなりだ。
だがすべてが順調にはいかない。先行偵察をするノイズがいよいよ縮小範囲に入ろうというタイミングで、ボイスチャットで事態を伝える。
「敵だ。縮小エリアぎりぎりの建物に陣取ってやがる」
ノイズがピンを立てたのは、マップ上でも目立つかなり大きな建物だ。ユキノジョーは記憶を掘り起こし、それがショッピングモールだったことを思い出す。
「気づかれてるか?」
「まだばれてねえと思うが、アルスが来たら確実に見えるぞ」
「わかってる。縮小までには余裕があるし、ここは突破しよう。俺たちは正面からぶつかる。ノイズはうまいこと側面を突いてほしい」
「接近できる場所を探す」
ノイズによると、敵は屋上に陣取りながら周囲を警戒しているとのことだ。アルスの巨体を隠しながら近づくことは不可能なので、堂々と進攻する。
「撃ってきた!」
「わかってる! 派手にぶちかますぞ」
ユキノジョーとレミルトンの持つ小銃が銃弾を放ち、それよりずっと派手なアルスのロケットが爆炎の花を咲かせる。
真っ向からの射撃戦においては、歩兵ではアルスには勝ち目がない。攻撃力でも耐久力でも、文字通り桁が違う。特にテチのアルスはロケットランチャーとグレネードランチャーの爆発物4つ装備。スキルも攻撃性能を高めるものを選択している。柔軟性には欠けるが、他の追随を許さない打撃力を持つ特化型ビルドだ。
とはいえ、高所を取られている分撃ち合いはやはり不利。敵は少し下がれば安全圏に逃れることができるうえ、撃ち下ろす形のため容易に狙える。敵のアルスが掃射したガトリングガンがレミルトンの体を穴だらけにし、ユキノジョーの体力もごっそりと持って行かれた。肩に装着された機関砲でテチの耐久値もガリガリと削れる。
とはいえ距離を取っての撃ち合いでは、歩兵は倒せてもアルスを削り切るのは難しい。ダメージを受けたテチは煙を出しながらも岩の影に引き下がって回復。幸い今は装甲版にも余裕があるので、集めてきたリソースを削りながら耐え忍ぶ。
しかしエリア縮小の制限時間が迫っている。突破できなければ先はない。そのための鍵を握るのは、ユキノジョーたちが引きつけている隙をついてショッピングモールに乗り込んだ鉄砲玉。
「屋上手前まで来たぞ。すぐにでも狙える」
「よしっ! レミルトンが復帰したら一気に攻めるぞ!」
エリア縮小開始まであと10秒。だが範囲が縮小しきるまでには多少の時間がかかる。ここからはスピード勝負だ。
「復っ活!」
「待ちわびたぞ」
「突撃する!」
通信の直後。屋上の敵の動きがにわかに慌ただしくなる。油断していた敵にノイズの急襲が決まったのだ。とはいえいくらノイズでも1チームを単独で相手するのは重い。合わせてユキノジョーたちも前進し、プレッシャーをかけていく。
「テチは下からグレネード! レミルトンは俺と非常階段だ!」
この状況に、敵は歩兵でノイズに対処しながらアルスでユキノジョーたちを迎撃する対応を見せる。正面からの射撃戦ならアルス単体で歩兵を圧倒できるので、悪くない選択だろう。だが、敵のアルスの武装はガトリングと機関砲。爆発物ほど大雑把な狙いでは攻撃できない。その弱点を突き、ユキノジョーはスモークグレネードを焚いて視界を遮りながらショッピングモールまで走る。
「2キル取ったがこっちもやられた。後は頼む」
ガンガンと階段を駆け上がっているうちに、ボイスチャットでノイズが報告。
「十分だ」
レミルトンとユキノジョーはなだれ込むように屋上へと到着。敵のアルスがテチと撃ち合っているのを確認し、即座に生き残った歩兵に鉛玉を撃ち込む。
「このまま張り付け!」
気づいた敵のアルスが銃口を向けようとするが、遅い。アルスの旋回性能が追いつく前に突撃し、足元までスライディング。射角の内側に潜り込む。これで詰み。そのまま敵のリスポーンよりも早くに耐久値を削り切り、ユキノジョーたちは安全圏への進入に成功するのだった。
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