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1 Crash!

「北と東に1部隊ずつ降りてるのが見えた」

「よっしゃさっさとやろうぜ」

「ばっか。まずは装備だよ。初期カービン弱いし回復なしじゃ勝てても死ぬ」

 さっそく突撃しようとするノイズをユキノジョーが抑える。

「死んでもリスポーンできるだろ?」

「下手に喧嘩売るとヘイトためるだけだから」

「わかったよ」

 敵の接近に警戒しつつ周りに落ちている武器を集める。だがメンバーの半数がこのゲームに慣れていないせいでアイテムの選別にもたつき、その間に敵が動きを見せる。

「東のやつらちょっかい掛けてきやがった」

「りょ」

「やったる」

 即座に動いたのはノイズだ。そしてレミルトン。一方でテチは引き下がって様子見、ユキノジョーがバックアタックを警戒する。仲間に歩幅を合わせないテチの動きはだいたいのゲームでは戦犯だが、アルスレイジでは問題ない。テチの搭乗するロボット、アルスの破壊が敗北条件であり、それ以外のメンバーは倒されてもリスポーンできるからだ。だからといって無謀に突撃していいものではないのだが。

「ぎゃっー!!」

 レミルトン1乙。

 無警戒に体を出したレミルトンが爆散するのを見て、ノイズは物陰に身を隠す。そこからスナイパーライフルを構え、見えたシルエットに撃ち込む。

「ちっ。仕留めそこねた」

「ノイズ、前線維持できるか?」

「行けるだろ。敵は2人。ガチ攻めじゃねえな」

「頼んだ。レミルトン復帰したら押し上げる」

「別に倒しちまっても構わないんだよな」

「それ死亡フラグッ!」

「復活に30秒かかるし今乙られると普通にきついんで勘弁してください」

「わかった。まあ引き気味に戦う」

 ノイズは物陰に隠れてアサルトライフルの銃撃をやり過ごし、敵がリロードに入ったタイミングで焼夷手榴弾を投げつける。これで正面の道は塞いだ。しばらくは持つだろう。

 一方、待機時間が過ぎたことでテチの乗るアルスからカプセルが放出され、レミルトンがリスポーン。なお、設定的にはアルスに搭載された使い捨ての随伴兵器という扱いだ。3体までしか同時に展開できないのは、遠隔操作するアルスの処理能力の関係とされる。

「って、武器が初期カービンしかねえ!」

「あー、死ぬと装備はその場に散らばるのか。こっちに落ちてる」

「そのための初期装備だ。一応アルスの保管庫にいくつかは突っ込めるんだけどな。今はねーからそれでがまんしろ」

「ういー」

「じゃあレミルトン来たら押し上げるぞ」

「頼んだ。俺はこのまま北のやつらがこないか警戒する」

「テチはどうする? 一緒に来ればあいつら圧倒できそうだけど」

「あー、待機で。アルスの回復拾えてないし今被弾するとつらい」

「わかった。じゃあ射線の通らないここで待つ」

「悪い」

「構わない」

「前線着いたぞ」

「おっしじゃあ前出るぜ」

 レミルトンの援護射撃を受け、ノイズは選択スキルのワイヤーフックで上に登る。ビルの上部から敵へ向けて飛び降り、ワイヤーフックを地面に射出して空中で軌道変更。地面を滑りながらショットガンを連射。よそ見していた1人を2発で撃ち倒し、残った片割れが銃身を上げる前に蹴りを見舞う。ガンッと金属同士が派手な音を立て、敵が倒れこむ。それでも敵は銃で反撃してきたが、無茶な状態で撃った銃身は反動に跳ね上がり、身をかがめたノイズの頭上を弾が過ぎる。隙だらけの頭部に至近距離から撃ちこんで終了だ。

「倒したぞ」

「ナイスー!」

「おーしおし」

「このまま東のやつらやっちゃう!?」

「それでいいんじゃねえか? 今なら結構いけるだろ」

「待った。北のやつらが漁夫りに来た」

「あーもう邪魔すんなよな」

「すぐ向かう」

 ユキノジョーは近づいてくる敵を射撃で牽制しつつ、テチの操縦するアルスとともに南へ後退。東から来た敵と違い、こちらは全員だ。圧が強い。射撃武器だけでなくアルスの放つロケットとグレネードが飛び交い、激しい爆音が銃声をかき消す。致し方なしとユキノジョーはアルスを盾にするようにしてどうにか生存。牽制射撃を加える。アルスの耐久値回復手段は拾えていないので消耗は避けたいのだが、今ユキノジョーが落ちるのはまずい。

「エントリーだおらあっ!」

 引き下がりながら耐えていると、敵の上からノイズが飛びかかっていった。上に陣取ったレミルトンの援護射撃を受け、2キル。

「ナイスだ! 倒し切るぞ!」

「へ。敵全然反応できてねえ。うわあっぶな!」

 敵のアルスのグレネードランチャーが頭上を取ったレミルトンを狙うが、爆風でダメージを受けるも体力は残り、その間に反転攻勢に出たユキノジョーが最後の1人を沈める。

 随伴歩兵がいなくなれば、戦術兵器も棺桶である。アルスの武装は強力だが、射角の関係で至近距離を狙えないようになっているのだ。そのため歩兵に張り付かれるとなすすべがない。30秒も集中攻撃を受ければ、新鮮なスクラップの出来上がりだ。

「なんとかなったか」

「ひゃあ新鮮な死体漁りの時間じゃー」

「おっ。装甲板あった。これでアルス回復できる」

「東の奴らが復帰してくるだろうから急いで回収な」

「とりあえず全部保管庫に突っ込んどけば良くない? 余裕で入るでしょ」

「まあそれでも。回収したらドローン飛ばすから周辺警戒頼む」

「おいすー」

 一応、屋内の斜線の通らない場所に隠れてから、ユキノジョーは固有スキルを使って東の敵チームが確認する。

 現在地はマップの北東部にあるガイノスという街だ。廃墟と呼んだ方が正しいか。人が住んでいないのは当然として、周りの建物もかなり崩れている。半分くらいは今の戦いが原因だが。

 しかし街である以上障害物は多く、ドローンで空から探しても建物内の敵はわからない。が、巨大人型ロボットはもちろん普通の建物には入れないし隠れられる場所も少ないので、見つけるのは簡単だ。

 このゲーム、攻撃対象のアルスが目立つせいでバトルロイヤルながら隠密が基本的にできない。歩兵による奇襲は結構決まるが。

「おし見つけた。装備の拡充を優先してるっぽいな。こっちにくる気配がない」

「あー、さっき威力偵察で2人死んだから装備けっこう厳しい感じなのかも」

「かもな。ただ、残すと厄介そうなんだよなぁ」

 マップによると、今回の縮小範囲はエリア北西部のようだ。アルスレイジのバトルロイヤルは時間経過とともにエリアが狭まっていくよくある方式のもので、エリア外になると同時に強制的にアルスは機能を停止させられる。

「西側に向かう必要がある以上、対処しないと後ろから撃たれる可能性が高い」

「一応、まだ縮小までに余裕あるけど」

「できるだけ早く移動して有利ポジとっておきたい。アルスレイジのバトロワじゃ、縮小ぎりぎりに移動して後ろから撃たれるのを防ぐってのは悪手なんだよ。射線通る場所にいると狙撃でチクチクアルス削られる。リスポーンできるからって単独行動でいやがらせしてくるやつ多いからな。範囲縮小に追われてると警戒する余裕ないから格好の的だ」

「うわそれめんどくさいやつ」

「つーことは、さっさと倒してさっさと移動がベストだな」

「まあ、かいつまむと?」

「なら今のうちに突っ込むしかねえだろ。のろのろ物資漁りしてるところを各個撃破だ」

「そうだな。それで行こう。3人で一気に攻める。テチは後ろからついてきてくれ。周りを潰したらアルスを一気に落とす」

「りょ」

 ユキノジョーの指揮のもと、3人で固まって移動。悠長に物資あさりをしている敵を見つけ、囲んで倒す。

「これで気づかれた。対応される前に一気に行くぞ」

 今倒した敵のリスポーンまで30秒。理想はその間に歩兵を全て倒し、アルスに張り付いて削り切ることだ。が、全部うまくいくはずもない。

「敵アルスが突っ込んできやがった。装備はガトリングを確認!」

「おめえが最初に来んのかよっ!」

「砲撃する。援護を頼む」

 歩兵のものとは比べ物にならない銃弾の嵐。廃墟の中に身を隠せば、ガリガリと壁を削られる。が、遅れてきたテチからの砲撃を横面に受ければ、流石にそちらへと対応を移さざるを得なくなる。

「敵歩兵発見。スナ1サブマシ1だ。マークする! だが動きっぱだ。あんま信用するな」

 屋上に上がったノイズからの報告。

「サブマシンガンを迎撃する。ノイズはスナを潰してくれ!」

「おう!」

 この状況で歩兵がアルスを狙う意味はほぼない。ノイズのつけたマークと、避けるべきテチの射線から敵のルートを推測し、ユキノジョーとレミルトンは迎撃に走る。

 はたして、敵は予想通りの場所から現れた。ユキノジョーたちを見た敵は即座に廃墟の壁に隠れて応戦。だがリロードに入ったところでレミルトンがグレネードを撃ち込んで炙り出し、身を晒したところを2人がかりの射撃で削り切る。

 一方でノイズはワイヤーフックを駆使。敵の狙撃手へと一気に距離を詰める。狙撃手の迎撃。

「やられるかよっ!」

 ノイズは腕を使って急所をガード。が、そもそも銃弾は空中のノイズをとらえ損ねた。どのみちやることは変わらない。着地と同時に地面を滑り、ショットガンを抜く。至近距離からの攻撃で一気に仕留める。

「仕留めたぞ!」

「ナイスキル。1人目の復活まで10秒ちょいだ。その前に削り切るぞ!」

「おっしゃ一気にやったるぜ!」

 最後に残ったアルスを狙い、3人で一斉に攻撃を仕掛ける。敵はどうにか抵抗しようとしたが、歩兵がいないと弱いのがアルスの悲しい性だ。機動力の問題で追われると逃げることもできない。まずはノイズがショットガンをゼロ距離から連射し、さらに追いついたユキノジョー、レミルトンも好き放題に射撃する。テチとの撃ち合いですでにダメージを負っていた敵アルスは歩兵がリスポーンしてくるよりも前に耐久を失われ、爆散する。

 周辺にいた2チームを撃破したことにより、辺り一帯は制圧を完了。これまで敵が集めていたアイテムもまとめて手に入れたことで物資も十分に集まったユキノジョーたちは、エリア縮小に備え次の戦場へ移動を始めるのだった。



*固有スキル

ノイズ:ワイヤーフック:前方に射出し、引き寄せることで三次元的な機動を行う。クールタイム30s。スタック2

レミルトン:カタパルト:内臓のグレネードランチャーにより投擲武器を射出する。クールタイム10s。スタック1。投擲物を手動で装填する必要あり

ユキノジョー:ドローン:偵察ドローンを展開して索敵を行う。クールタイム60s。スタック1

テチ:クールダウン:アルスの冷却効率を高め、武器のオーバーヒートを抑制する。クールダウン300s。スタック1


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