第28話 脱出ゲーム部の謎解き2
すみません!
5分程度更新が遅れましたが、今日も元気に更新です!
「えっと、それはどういうこと?」
質問をしてきたのはひまりではなく、会長だった。
「その話をする前に……俺自身脱出ゲームなんてやったことがないので村重くんから聞いた話からしか判断ができないのですが。脱出ゲームって色々と種類があって物によってはけっこうスペースを取ることもあるらしいですね」
「たしかに。うちの文化祭で脱出ゲームを企画したクラスが過去にあったけど、教室まるまる使ったりしてたよ。去年のレンちゃんのクラスがそうだったんじゃない?」
「そうですね。神社の鳥居に結界が貼られてしまって境内から出られなくなったというストーリーで、脱出をするために謎を解いてお札をはがしたり神様の怒りを鎮めたり......あれはルーム型というやつだったそうだけど、村重くんが作ってるものや大会に応募する企画はどんな形のものなの?」
「テーブル上で謎解きを完結するホール型というやつだそうです。1つの部屋にテーブルを複数置くことでテーブルと同じ数のグループが一度に脱出ゲームを体験できるそうなんですが......副会長、ちょっと詳しすぎじゃありません?」
「詳しくはないわよ。知っている範囲のことだけ」
こうもスラスラと知識が出てくるとヒビペディアの異名をつけたくなる。
「まあ、ともかく。村重くんが出ようとしている大会では、提出した企画書で予選をやって、本選に進んだ人間は東京の学校を借りて、一般の来場者も呼んで遊んでもらうそうです。そこまでやる以上、提出する企画は高校生が作るものと言えど大会側はほぼ完成したものを送らせるはずです。となると、大会に参加する側は企画を作るにしても1回テストプレイだの小道具だのを作って企画として成り立つのかを考える必要があるはず……ってことを考えると、俺なら長期間使えるスペースが欲しいです。村重くんは1人じゃなく数人の仲間と大会を出るので、なおさら企画を練るための話し合いができるスペースが欲しいはずです。そうなると、部活の申請をして部室を手に入れるのが一番だと思うんですけど.....なぜか村重くんは4月ではなくいま部活を作っていた。ひまり、確認なんだが村重くんからクイズ研以外の部活に入ってるって話聞いたことあるか?」
「えっと......入っているのはクイズ研だけだって言ってました!」
「ありがとう。唯一入っているクイズ研も先輩にいびられるから、脱出ゲームが作れる環境じゃない。となると、村重くんは自分が使えるスペース───部室がなくても脱出ゲームを作ることができたとなる。そこで、俺は『これまで村重くんはどこで脱出ゲームを作ってたんだ?』と疑問を持ちました」
「それでセンパイは村重くんに脱出ゲームをどこで作っているのかって聞いてたんですか!?」
「そういうこと」
脱出ゲームなんて手の込んだものを作るなら部室のようなスペースはあった方がいい。なのに、4月に入っていままで部活の申請をしていなかったうえに今になって部活の申請をするのはなぜなのか。
村重くんの脱出ゲームに対する情熱が薄いなら、めんどくさかったのだろうの一言で済むのだが、対面で話した感じてきにめちゃくちゃ情熱あるんだよなぁ。
だからこそ、なんでいま部活作るの?と思うのだが、この疑問を解消することはそう難しくない。
「......ハヤトくんの言うことも一理あるね。だけど、聞いてる限りだとホール型?のゲームは企画を作るだけならそんなにスペース必要なのかな。私が知らないだけかもしれないけど、実際企画は大きなスペースがなくてもできるからいままで部活の申請をしなかったって可能性はない? いまになって部活の申請をしたのは、村重くんが話してたみたいな脱出ゲーム部をもともと作ろうと思ってたけど、部活を作るのが流行ったから急いで申請をした......みたいな」
「そうなんですよね......俺もその可能性があるのでちょっと詰まってるんですよ。実際、村重くんは自分の家や友達の家で作っているって言ってましたし」
まさしく会長が言ったとおり、別に脱出ゲームを作るのに部室は全然必要なかったからいままで申請してなかったという可能性がある。友達が所属している部室の一角を借りて作業をしていた可能性だって考えられる。
せめてホール型がどれくらいの規模でやるものなのか分かれば、企画段階でどれくらいのスペースを確保してテストをすればいいのか分かるのだが……動画でも探すか?
そんなことを考えていると隣にいたひまりが俺の顔を覗き込んだ。
「センパイ、いまって何で困ってるんですか?」
「うーん、ホール型の脱出ゲームがどんなものなのか分からなくて困ってる……会長と副会長はホール型の脱出ゲームやったことあります? もしくはプレイ映像を見たことがあるでもいいですけど」
「ごめん、わかんないや」
「私もないわ」
「となると……トオルなら知ってるか?」
俺がトオルへの連絡を考えていると、ひまりがスッと俺のスマホを渡してきた。渡されたスマホには動画が流れている。どうやらYotubeeにあがっている脱出ゲーム大会のダイジェスト動画のようだ……ダイジェスト!?
「これならホール型の脱出ゲームがどんなものなのか分かったりしないでしょうか?」
「え、これだよこれ。どこにあったんだ?」
「ホームページの下の方にありました! お役に立ちそうですか?」
「ひまり、お手柄だ!」
「えへへ、よかったです!!!」
ひまりが見つけてきてくれた動画を副会長が全員で見られるようにパソコンに映し出す。机の中央左端に置いて全員で覗き込む。
哀愁を感じさせるBGMに合わせて、去年の大会の様子が映し出される。ゲームの小道具なのだろうオリジナルの新聞やクロスワードパズルが映ったあと、開会式らしき映像が流れる。
「思ってた以上の規模かも......」
「そうですね。センパイ、これって一般の人も見に行けるんでしたっけ?」
「チケット代を払えば行けたはずだぞ」
「ちょっと、ここ」
副会長が映像を止める。そこに映っていたのは高校生らしい男が、黒板に書いた部屋の見取り図をバックにゲームの司会をしている様子だ。
副会長は黒板に書かれている見取り図を指さす。その見取り図には異界の間やら鏡の間やら、中央に位置する謎解きを行うテーブル以外にもいくつかエリアが設定されているように見える。
「これゲーム会場の見取り図よね? 部屋全体を使ってゲームをしてるように見えるわ」
「ほんとだ......他の映像見る限りパーテーションで区切ってエリア作ってるみたいだね」
「あ! これなんていうんでしたっけ? この軽音部の人たちが使ったりするやつです!」
「これはミキサーというのよ。ゲームの演出のために効果音や音楽を流したりマイクの音量調整を行うと思うのだけど......見てる限りだとミキサーも参加者が操作してそうね」
「司会の人たちも探検家の衣装を着たり、テーマパークのキャストばりに声張ってゲームの進行やってますよ」
動画は5分程度の短いものだったが、大会がどんなものなのかがなんとなく伝わる内容だった。それに、村重くんが作ろうとしているホール型の脱出ゲームがどんなものなのか分かった。
「どこまで企画を練る必要があるかは分かりませんけど、この規模のことをやろうと思ったら俺なら部室が欲しいですよ」
「私もあった方が嬉しいな......うーん、これは難問だ」
「4月の段階で部活を申請すればいいのに、どうして村重くんはいまになって申請をしたのかしら......」
───ホワイトボード───
・なぜいまの時期に作るのか
→部活づくりが流行っているから
・クイズ研究部でなんで脱出ゲームを作らないのか
→気の合う仲間がいない&九条のせい
・いままで部活の申請がなかったのはなぜなのか
①スペースがなくても企画が問題なく作れたから
→やはりスペースが高確率で必要
②自分たちで使える部室のような空間があった
→不明
─────────────
俺はホワイトボードに新たに分かったことを書き込むのだが、結局分からないことにため息をつくのであった。




