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星見

作者: 柊 蒼輝

 僕の視界は、ぼやけてブレて視える。いつもは眼鏡を掛けているけど、コンタクトレンズだと目が痛くて着けてられない。眼科の帰りに、ママが言った。

「裸眼で、何を視たい?」

 僕は、空を指して言った。

「星が、視たい」

 ママは車に僕を乗せ、シートベルトを()める。カチリと音がして僕はシートに(うずくま)った。パパは運転席から僕を振り返り、大きな声で言った。

「プラネタリウム、観に行くぞ!」

 ママが助手席に乗って、笑った、時間をスマートフォンで確認して、今からだと14時に間に合うねと微笑む。裸眼で視てもぶれるしなー。ママとパパの話だと、双眼鏡を貸してくれるらしい。車は住宅を抜け山道を登った。プラネタリウムってなん?僕は満天の星空が視たいのに、そう言うとパパが大きな丸いお空の劇場だと想えと笑った。車はカーブを抜けて山道を折れ駐車場に停まった。車を降りて、半円の丸い屋根の建物に向かうと、途中にアゲハ蝶が僕を追い越して行った。追い掛けようと走り出すと、ママとパパがげんなりした顔で本当に体力あるなあと溜息を付く。パパとママは体力が無いお祖父ちゃんお祖母ちゃんだなあと思って、今日の絵日記をプラネタリウムにしようと決めた。建物の前で写真を撮って、入り口に入る。昆虫や鳥のはく製と一緒に、名前が記載されている。ぶらぶら見てると、アナウンスが鳴った。受付を済ませたママがチケットを僕とパパに渡すと、順列に並んだ。双眼鏡を受け取って、使い方を教えてもらう。眼鏡が、邪魔になりそうだった。入り口を潜り抜けると、大きな丸い天井に呆気に取られる。真ん中に不思議な形をした機械があった。ママにあれ何と訊くとあれで星を映し出すんだよと教えてもらった。チケットの番号にかかれた椅子を探して座る。少しすると音楽が途切れ、場内が暗くなった。座席を倒して観ろとパパに言われて背中に力を入れると、座席がゆっくり横たわった。西方にオレンジの太陽が映し出され、ゆっくり沈みだす。アナウンスと供に時間も忘れ満天の星を視ていた。南の空にへび座とアンタレスが映え、今年は巳年(へびどし)ですねえとアナウンスが(おもむろ)に流れる。その時だった、アナウンスが、大きな音と共に叫んだ。

「ピタウス星軍の中に大きな星が!落ちてきます、どうしましょう!」

 天井に矢印が映った、僕は双眼鏡で確認する、大きな赤いギザギザの星が、少しずつ大きくなってくる。良く見え過ぎて僕は眼から涙が溢れた。会場にどよめきが走り、子供たちが叫ぶ。ひゃーレンジャー助けてとか、サニキュア行けーとか会場に響く。アナウンスがぽつりと言った。

「どこに落ちるか解りません、よく考えて行動しましょう」

 東から太陽が昇ってきて、会場が明るくなった。困ったなとパパが呟きながら出口を指して、僕の手を掴んだ。明るい喫茶店みたいな場所に出るとお土産が売っていた。ひゃーレンジャー頑張れと想って、ママにおねだりする。ラーメンの、宇宙食を買った。

 建物を出て、噴水を仰ぎながら来た道を戻る、絵日記長は赤いギザギザの星にしよう。

「良く、星空視えた?」

 ママが、僕に聞いた。

「うん、凄かったよ。ひゃーレンジャー頑張れ!」

 鬱蒼(うっそう)と茂った林に蝉時雨(せみしぐれ)が響いていた。

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