12. 予期せぬ助け
私は反射的に身をすくめた。この忌々しい世界で、こうして突然ひょっこり現れてくだらないことを話しかけてくる存在は、十中八九警戒対象だった。特にこんなにまともそうな女の子なんて、さらに危険だった。へたな返答は状況をさらにややこしくするだけだった。
私は土埃まみれの顔を上げて女の子を睨みつけた。返答の代わりに冷たい視線で沈黙を守った。あいつが先に口を開くように仕向けるつもりだった。
女の子は私の殺気だった眼差しにも構わなかった。むしろ目を丸くして私を興味深く観察しているようだった。まるで珍しい昆虫でも見つけたかのように。
「うーん…なかなか荒々しい気配をまとってるね。そしてこのみすぼらしさは見たことのない希少種なんだけど。もしかして森から来たの?あ、そうだね。この方面から来た人初めてだわ。」
女の子は私が口を開かないので、独り言のように呟き、やがて確信に満ちた表情になった。
私は唇を噛んだ。私の姿がそんなに露骨だったのか。それともあいつの直感が妙に正確なのか。このままこの女を無視して逃げ出そうかとも思ったが、夜はすでに深く、私は疲れていた。その上、あいつは何の脅威にもならないようだった。
「中に入りたいんでしょ?城がなかなか堅固に閉まってて、手こずってるみたいだったけど。」女の子は城門をちらっと見てから私に体を向けて無邪気に笑った。その笑顔は何も知らない子供のものというには、どこか測り知れない妙な輝きを帯びていた。
「馬車の時間はとっくに過ぎてるし、水路は危険だし、城壁は…クク、無謀だよね。ひょっとして私が手伝ってあげようか?」
私は再び沈黙した。何を望んでいるんだ?私を利用しようとするのか?それともただ間抜けなのか?どちらにせよ、今すぐあの城の中に入らなければならないことには変わりなかった。
「対価…は?」
私はかろうじて声を絞り出した。私の声はかすれて乾いていた。
「うーん…対価か…。」
女の子はしばらく悩むように空を見上げた。
「特に必要ないんだけどね…。」
それから、にこやかに笑って私に手を差し出した。
「じゃあ、ただってわけにはいかないね!君の一番大切なものをもらっていくのはどう?」
私は警戒心に包まれて彼女の手に視線を向けた。私の一番大切なもの?この忌々しい世界で私に残された一番大切なものなんて、ただ『命』しかなかった。
女の子はそんな私の眼差しを読み取ったかのように、にこりと笑った。
「心配しないで。今すぐじゃない。とりあえず私についてきて。このままだと夜が明ける前に凍え死んじゃうよ。どうせ寒そうだしね。」
彼女は私の返事を待たずに、城壁に沿って闇の中へ歩いていった。その後ろ姿は、何の警戒心もなさそうだった。私はしばらくためらった。信じられないほどの好意だった。でも、疲れ果てて倒れるよりはマシだろう。私は結局あいつの後を追った。
「……君、名前は?」
彼女は天真爛漫に笑いながら答えた。
「リエル、私の名前はリエルよ。」