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10. 境界の彼方


どれくらいの時間が流れただろうか。僕はかろうじて目を開けた。全身が引き裂かれるように痛かった。巨石の爆発と共に、飛び散った残骸が周囲に散らばっていた。森を圧し潰していた、あの重苦しい気配は消え失せていた。ぼんやりと昇った陽光が、濡れた木の葉の間からキラキラと輝いた。生きていた。ひどくも、しぶとくも。


僕の右腕の黒い文様が、微かに蠢いた。今度は一体何を吸収したんだ?疲労に浸食されてぼやけた意識の中でも、新たな情報が脳裏に染み渡るのが感じられた。


[現在吸収能力]


・ストーンスキン:一時的に皮膚を硬い石のように硬化させ、物理攻撃に対する防御力を高める。使用時にはわずかな重圧感を伴う。


・シャドウ ステルス:周囲環境と自分の体を同化させ、視覚的にほとんど見えなくします。(使用時は集中力を消耗。体が少し冷たくなる感じと共に、自分が「透明になった」という奇妙な疎外感を感じることがあります。発動中は完全な停止状態で効果が最大限になり、素早く動くと効果が減少します。)


・サイコキネシス:対象に微弱な精神力を注入し、物理的に操作する。(現在、使用者の精神力レベルによって出力に制限があります。過度な使用は精神的疲労を伴います。)


念動力。サイコキネシスか。まあ、悪くないな。ゲームでよく見る能力だ。


僕は指先に力を込めた。意識の中で念動力をイメージした。床に転がっている小さな石ころ一つに集中した。熱い血が逆流するような痛みと共に、かろうじて僕の意識が届いた小さな石ころ一つが、地面から微かに浮かび上がった。ぐにゃぐにゃと、不安定に揺れながら空中へとほんの少しだけ浮上した。そして、やがて力尽きたのか、再び地面へと落ちた。


「ちくしょう…これっぽっち…これだけなのか?」


僕は虚脱した笑みを漏らした。


「くそっ…冗談か。これが念動力だと?こんな石ころしか動かせないくせに?」


失望感が波のように押し寄せた。僕の全ての足掻きは、この微弱な力を得るためだけのものだったのか、という虚脱感が押し寄せた。


しかし、やがて首を横に振った。違う、違う。そうではなかった。僕の目的は、あの取るに足らない能力などではなかった。このうんざりする森を抜け出すこと。それが僕の唯一の目標だった。巨石は消えていた。体を圧迫していたあの圧倒的な結界の力も消え失せていた。僕はついに、自由になった。


僕はよろめく体を起こした。全身はぼろぼろだったが、心だけは軽かった。喉の渇きと空腹が再び僕を圧し潰したが、もはやそれは大した問題ではなかった。足を踏み出す度に、森の陰鬱な気配が後ろに遠ざかるのを感じた。森の境界、もはや何の抵抗もないその線を越えた。


視界が広がった。際限なく続くかと思われた木々は、嘘のように遠ざかっていった。そして遠く、はるかな地平線の向こうに、巨大なシルエットが威圧的にそびえ立っていた。壮大な城壁と、天を突くようにそびえ立つ尖塔群。一目見て、ここが普通の都市ではないと分かった。巨大な帝国の心臓、その首都だろう。都市全体を包み込むような灯りが、夜空を彩っていた。


自然と足がそこへと向かった。人間の文明。僕が切望して探し求めていた場所だった。地獄のような森から抜け出し、ついに安息の地に辿り着いたという微かな希望がよぎった。


しかし、城門に近づくにつれて足取りは次第に遅くなった。煌びやかな都市の灯りの下で、ふと自分の姿を振り返った。破れて汚れた衣服。血と土にまみれて泥の塊のように絡みついた髪の毛。数日昼夜を問わず洗うことも食べることもできず、骨ばかりが残った憔悴しきった姿。野生動物と大差ない僕の姿だけがあった…。

私の物語に貴重なお時間を割いてくださり、心より感謝申し上げます。 もしお読みいただき、何か不足な点や改善すべき点がありましたら、忌憚のないご評価や貴重なご意見をお聞かせいただけますと幸いです。 常に学び、成長できるよう努めております。

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