表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

わらって、まざって、ドキドキ



「せっかくだし、ババ抜きでもやろーや! ねっ、ねっ!」


おやつのあと、はるかが言い出した。というか、もはや「言い出した」じゃなくて「始めようとしてる」くらいの勢いだった。


「今日から5人になったんやし、仲良くなるにはこれが一番やって!」


「またババ抜きですか? 昨日も一昨日も、それでしたけど…」

真琴が丁寧にカードをそろえながら、小さくため息をついた。


「えー? ほな神経衰弱にする? でもそれ真琴が一番弱いやん」


「うっ……」


「別に何でもいいけど、決まったら教えて」


ひよりが布団からもそっと出てきて、あぐらをかいたままトランプの箱を受け取った。


「ほい、ちほちゃんも! トランプやるで!」


と、はるかが私の顔をのぞきこんできた。

きらきらしたアイシャドウ(子ども用だろうけど)がまぶたにちょっとだけ光ってる。


「……う、うん」


「よーし! じゃあ7並べとかどうやろ?」

「いいね」

「はるかちゃん、前回場を流しすぎて怒られてたじゃないですか」

「いやいや、あれはユヅキがずっと3のハート持ってたせいやって!」

「わたしは最初に出したもん!」

「もんって、子どもか」


そんなにぎやかなやりとりを聞きながら、私はちょっとだけ笑った。

口元がゆるんだの、たぶん誰にも気づかれてない。


「じゃ、王様ゲームやろ!」


「「「やだ」」」


「え~☆」


満場一致で否定されるなんて、前に何かあったのかな?

結局、選ばれたのは当初の予定通りババ抜き。

というより、すでに真琴が手際よく配り始めていた。


「ペアのカードは先に捨ててくださいね。それから順番は時計回り、負けた人は……どうしましょう?」


「やっぱ罰ゲームでしょ」

はるかがにやっと笑う。


「罰ゲームって、またあれ?」

ユヅキが、ひよりの横ににじり寄って身を縮めた。


「せや! 負けた人は……ひとつ”恥ずかしいヒミツ“を暴露するねん!」


「えっ……」


恥ずかしいヒミツ。その言葉を聞いた途端、ドクンと心臓が跳ねた。


「うわぁ……さいあく……」

ひよりがため息をついた。


「ちほ、いくで!」

はるかに笑顔でうながされて、私はためらいつつカードを引いた。

なんとなく、ドキドキして手のひらが少し汗ばんでた。


手札の中に、ジョーカーは──


なかった。


「せ、セーフ!」


「反応バレバレやん、それ!」


「ほなわたしから……うわ、ひより、あんたこれジョーカー持ってるやろ」

「しらーん」

「ちょ、手が力んでるって!」


そうこうしてる間に、ゲームは進む。

でも、私の心の中はさっきとちょっとだけ変わっていた。


(なんだろう、この感じ)


昔いた施設では、トランプなんて滅多にしなかった。

いや、私だけしなかった。仲間はずれにされて、遊びになんて混ぜてもらえなかった。


でも──ここは、なんかちがう。


「ユヅキ、勝ち抜けやん!」

「いえーい、優勝!」

「さすが、やりますね…」

「ちょっと、真琴真面目にやってるの~? 全然減ってないよ?」

「こっ、これからです!」


カードが飛び、笑い声がまざって、私の中にあった壁が、ほんの少し、くだけた気がした。


「よーし上がり! あぶな〜ビリ回避や」


「……あれ?」


「ちほがビリか。ほなとっておきのヒミツ頼んだで」


そうだった。罰ゲーム…忘れてた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ