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2度目のラグナロク  作者: 雪華将軍
第二章 闘技国編
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第三十三話 隼の魅技

投稿遅くなってすみません。テスト期間です。断筆したと思いました?私は何度でも帰ってきます。


「そらそらそら〜!俺の華麗な足捌き!裁キ!裁キ!イヤァ!」

『うぉぉおおおおおおお!!』


 ついに始まった【高貴な闘技場アリストクラセ・コロシアム】『王座奪還戦』——

 バッチバチの熱い戦闘から始ま——らず、大会は、参加者たちによる順繰りのパフォーマンスショーから始まったのである。


 最初に出てきたあの…『ファソウラ』…?という男の見事なダンスパフォーマンス。聴けばあの男は『格闘戦』から出た最優秀選手らしい…、それも納得だな。


「左左左右左左右右…左決めポーズ…速いな、腕軸による回転主体の所謂…『蹴連者(シューター)』タイプ、珍しい戦い方だな…」

「あら?シードさんは、あの子の戦い方を知ってるのかしら」

「ん?…ああいや、知らんぞお姉サン」


 1人で壁に腰掛け、呟いていたらいきなり話しかけられた。話しかけてきた女性は魔法帽を被った中々魅力的な淑女だ。見知らぬ気品あるレディ流石に私も緊張する。


「あらあらあら、私たちそこまで年齢、変わらないと思うわよ?」

「はあ…ああいやレディよ、お名前は?」

「レディ、ぁは…いい響きね、ロエチャメ」

「ロエチャメ・タイポグリセアシよ」


 よろしく、とロエチャメと握手を交わす。ぅうむ、目元をベールで隠したこの女中々…胸がデケェ…。

 中々扇状的に見つめてくるもんだから、流石にドギマギしちゃう。

 あまり自身の胸の大きさを気にするヴ私ではないのだが、ロエチャメのプロポーションの良さに僅かに目を奪われるのは仕方がない…と、自身より小さくて、大きいロエチャメから視線を逸らす。


「あらら、シードさん、筋肉で分かりずらいけど、貴女も中々大きいわよ?」

「いや別に気にしてませんが…あ?」


 ——私、口に出したか?

 コイツ、無駄に駄肉付けた女かと思ったが…どうやらこの女食わせモノだな?


「バハハ…」ギラッ!!

「『最下位防御魔法ザ・オールノーマンシールド』」


 ヴァラックは『思考』を読まれた事にすぐ様気付き、目をギラつかせ殺意を飛ばす。ロエチャメはすぐに防御魔法を掛けてその殺意に耐えた。


「おっ…と、すまん…嬉しくなってしまった。」

「あら、あらら?」

「はぁ…強そうな奴見つけるとテンションがぶち上がるのは…、私の悪癖だ。」


 急激に冷えた殺意に、私はそんな彼女に対して、笑みを浮かべた。

 ——うふふ、思考を読めたのは貴女が油断していたからよ?ヴァラックちゃん。戦いの中でじゃあ貴女の思考を読めるほど、貴女、油断してくれないでしょう?


「ロエチャメさんよ、すまんな」

「いいのよ、それくらい熱っぽい方が健全よ」

「一々色っぽいなこの人…」


 食わせ者、それもかなりの熟練者に思わず笑みを溢れさせてしまうのは仕方ないだろう?こんな瑞々しい女なのに、内に秘める経験値はまるで戦いによる傷だらけの老婆を見ているかのようだ。


——


「お、次は俺か」


 思考の波に浸かっていると、会場から聞こえてくる歓声に耳を傾ける。どうやら次のパフォーマンスに行くらしい男が、少し緊張した面持ちで参加者専用の観覧室から退室していく。


 —あの男もこの大会で上位層だな、見た目はかなり…いっちゃ悪いが特徴のない男だが…。


「(隙が、ないな)」


 常在戦場の体現者だな、隙のなさだけならば私より『遥か上』だろう。


「っと、私はその次か。」

「ええ、頑張ってね」

「おう …って距離の詰め方上手くない?」

「女の武器は愛嬌と言葉の上手さよ、貴女に言っても分からないだろうけど。」


「そうだけどよ、言い方ね?」


 本当に食えない女だぜ…

 そんな事を思いつつも、視界の端で『忙しなく動くデルタたち』を観客席付近に見つけて、「間に合ったか」と安堵した。


○暫くして


「よし…」

「やるか」


 前の男のパフォーマンスが終わったタイミングで、観客席で大きな拍手と歓声が上がった。どうやら私の出番の様だ…。コロシアム用に用意した装備のフードを『ピン』と指で摘んで整える…。悠々と歩き出す姿には、自信と『力の権威』が溢れていた。


『さぁー!マーデン選手の見事なパフォーマンスで場の雰囲気が更に熱くなった所で、更に更に更に!』

『今大会の1番の目玉と言っても過言じゃありません!!』


「上げ過ぎじゃないか?」


 ——何故、連中は私をここまで上げる?そこまで派手な技なんて持ってないんだが…しかし、期待には応えられる様努力させてもらおうか…

 内心、そこまで自信なさげにステージに上がりる。司会者の女はマイク(※音を届ける魔法付き)を使い、観戦者たちが居る観覧席のスピーカー(※音を拾う魔法)でそのトークを始める。


『さぁ!現王者が君臨して6年目…、毎月開催されるこの大会で、連続王座の最長歴2位の「1年と4ヶ月」を抜いて、独走中!!』

「(そりゃあスゲェ)」

『しかぁーし!!いずれの王者も『指名権』を使った試合でその王座を下っている…ッ!』


 中々上がる煽り文句じゃないかと、参加者でありながら、観戦者の様な気持ちでテンションが高揚するのを感じる。

 司会者の女の文言が上手いな、こんなのを聞かされたら、参加者だって楽しくなってくる。


『期待の星「オリオン」、そんな彼女は一体どんなパフォーマンスを見せてくれるのか…!!さぁいってみましょう!』

『オリオーーーン!!ヴァラァアァアク!!』


○一方 デルタたち…


「ふん…ん」


「「「ふぁいとーー!!」」」


 私は3人娘の応援を受けて、巨大な『()』を頭上に掲げていた。


「ぐ…かなり重いが…いけないことも…ない。」


 そんな時、私の耳に『オリオン』という言葉が届いた、どうやら私の仕事が来たらしい。直ちに腰を低く落として、その『塊』を大きく 振り翳した。


「「「いっけーーっ!!」」」


「ルァァアア!!」


 かなり重くて制御が難しかったが、間違いなく『ステージ場』には入るだろう。

 ——凄まじい速度で半円を描く軌道に、目を細めて軽く拳を握る。何をするのか分からないが、憧れの人からの頼みだ、その人のパフォーマンスの一手を担えたなら、幸福というもの…。


○コロシアム ステージ上


ヒューー…


 凄まじい轟音と共に私や司会者の下へ降り注ぐそれは、私の望んでいた『それ』であった。


ドゥ… …ゥウン…


『どぁあああああ!?』


「私のパフォーマンスはこれを使わせ貰おう」


 ——私が驚きのあまり腰を抜かすと、その物体は『オリオン』の目の前に数度跳ねて、停止した。

 その『塊』正方形で光沢を帯び、無機質で冷たい、そうこれは——


『金属塊!?』


「ただの金属じゃねぇ、10m×10mの『蒼月の錬鉄塊』」

「見た目は綺麗だが、硬度があり割れやすく、粘度のある不思議な錬鉄だ」


 ——まぁ少しマニアックな話ではあるが、この金属はひたすらに武器や装備なんかには向かない、簡単に言えば割れやすいのだ、主に数グラム使って強化アクセサリーに使う。


『で、ではヴァラックさん、こちらを使って何を見せてくれるんですか?』


「見てれば分か…る!!」


 私は限界まで開いた手の平を金属塊に這わした。子供の頭を撫でる様に優しく金属肌を撫でる。

 そして一気に握り締めた。


「ふ…ぬ…!」


ゴポゴポ…ぐにょーーん!


 ——指圧され赤熱した金属を握りしめ、20cm程度「引き」伸ばしたのだ。文字通りの握力のみで、特殊錬鉄の融解温度に至ったのだろう。


 —あまりの凄技に私や観客席から驚愕の声が聞こえてくる、自分でもマイク越しに「あが…っ!?」なんてよくわからない声が出たけど、司会者として実況をやめるわけにはいかない。


『い、一瞬のうちに金属が変形してしまいました!流石オリオンに選ばれる選手!凄い!凄過ぎます!!』


 こんな凄技を『見せられる』なんて、いや司会者でありながら見入ったのだ、『魅せられた』が正しいだろう。実況を終えようと観客席の人々に拍手を促そうと声を出そうとした…けど


『へ?』


ごぽっゴポッポポポ…!!グツグツグツ…


 オリオンの選手は、両手で鉄塊の上側表面を力強く掻き回す。当然の様に赤熱して融解した『ソレ』を、まるで粘土の様にコネ始めたのだ。

 何をしたいのか分からないけれど、ひたすらに「凄い」そんな言葉しか湧いてこない。こんな吹き晒しで数秒も掛からず、金属を膂力だけで溶かしたのだ、これ以上何があるのか想像もつかない。


「ククク…、何を『作っているか』当てられるかな…」

『つ、作る?』


 司会者の女のオーバーリアクションに喉を鳴らしながら、『目の前の鉄塊を捏ねていく』。

 とりあえず、角を溶かしたからこのまま楕円形にして…『首を伸ばし』…『尻尾も造形した』。大まかにこんなものか…。


『えっと…これは何かの…生物ですか?『亀の様な…竜の様な?』』

「ほぼ合っている」


 —コイツを何の生物と答えるなら、『亀』か『竜』しかないからな。

 暫くこねる内に、下部には四つの柱の様な脚ができ、背には甲羅、そして垂れる尻尾までかなりの造形が出来てきた。


「取り敢えず完成」


『うわぁ…!綺麗な『ドラゴン(・・・・)』…』


 作っていたのは端的に言えば『地竜の像』だ。ただ10m台の金属を伸ばしたりしているから、全長14〜5mはある巨大な偶像。


「確かに、凄いわね…でも」

「ガフガフ、子供の粘土細工じゃぜ」


 私の隣で短髪を撫でるお爺さんは、ヴァラックちゃんのパフォーマンスについて、遠回しに大したことないと言っている様だった。実際『あの程度』なら私だって、余裕で出来るわ。でも…


「ヴァラックちゃん、本当に、これだけなのかしら。」

「オン?イャアー…、こんな『霞んだ』金属細工なんて見ても、観客には魅力ないダロ」


 少し小馬鹿にしたようなセリフを吐いた『ファソラ』くんの言葉で、私は漸く気付いた。——一度溶かしたから金属体に『酸化膜』が張って、霞んで見えるのだと。


「…まさか」


 ヴァラックちゃんがこれからする事は、もしかしたら凄技なんじゃないかと、期待を込めた瞳を彼女へ向けた。


『それでは!見事な技を魅せてくれた、ヴァラックさんに大きな拍…』


 ——そしてその期待は、直ぐに回収されることとなった。司会者ちゃんの言葉を遮る様に、像に触れたヴァラックちゃんが、ドラゴン像の胸部を『殴り上げる』事によって—。


「ウィーク…ウィーク…ウィークウィーク…」

「ヴラック・コング=アッパー」


 喧しい轟音と金属から発せられる火花に、司会者の女が目を瞑るのだ、あまりの衝撃でステージから粉塵が巻き起こる。これでも壊れすらしてないのは、流石歴史あるステージとしか言えない。


『ちょ!折角作った像が壊…れた?』


 ——壊されたと思った像は、確かに歪んでいた。直立していた足は曲がり、顔は口を大きく開けて叫ぶ様に、というかこれはまるで…。


『戦ってるみたい…』

「はー…!」


 再び追撃する、更に痛みに歪んだ表情を浮かべる様な像を見て、私は『酸化膜』を引き剥がす。——これで漸く完成だ。


「ワィ!?霞んだ表面が剥がれて…綺麗な蒼銀の光沢が!」

「なるほど、ね」


 —酸化膜を『プレゼントの包み紙』として使うなんてね。彼女が酸化膜を剥がすと、中から見事に精巧な『地竜の像』が作られていた。


『い、今までボンヤリとしていた輪郭が、ハッキリとして、ま、まるで痛みに喘ぐ姿を見ているかの様な、生々としたリアル感を感じます…!』

「300分の1スケール、タイトル『山王の絶叫』なんて所か?」

『何度も捏ねられた事によって光沢に濃淡が出来ていて、酸化した事も重なり、重厚感が途轍もないで。300分の1!?』

「本物は3000m級の大物だったからな、『必要なだけの素材』貰って後は換金したが…かなり儲かったぜ?」


 観客からの大歓声と、関心のあまり洩れる吐息に耳を傾けた。観客たちの反応に流石の私も満更ではない。造形なんて5つの頃に、土を捏ねて作った泥団子くらいだったからな…、上手くいって良かったぜ…。


『最高の作品をありがとうございました!!皆さん!ヴァラック選手に大きな拍手を!!』


わぁぁああああああああああああ!!


 さらに増幅する大歓声に包まれながら私は静かにステージから足を退けた。私の後にパフォーマンスをする『もう1人のシード』の男が、片手で眉間を押さえているが…申し訳ないとしか言えないな。


「『オリオン』ヴァラック!最後に芸をやる俺の気持ちを考えてくれ!鬼か!?」

「ブフ…んん…ああすまんすまんえっと…初めまして『シリアス』」


 ——この男は前回行われた『シード決定戦』の優勝者らしい。流石に強いがユーモアのある男で、初対面でもかなり好印象だ。切り傷だらけのスキンヘッドで人受けは良くなさそうな上、正直あのパフォーマンスを越すインパクトは、魔法くらいだろう。


「すまんな『シリウス』よ、精々場を冷めさせない様に努めてくれ」


「ひっでぇ!」


 —この男面白いな。

 ——…当然の様に、あのインパクトを越せなかった『シリウス』は、もう1人のシードであるが故に期待され過ぎたのだろう。バッシングこそされなかったが、『しーーん』となる会場で、演舞するあの男を私は見てられなかった。


「いや…本当すまない」

「謝るな!惨めになるわ!」


こんばんは!

第の33話をご覧頂きまして本当にありがとうございます!


ちょっと進みが悪いですかね…?1話1話重要なので、やはり会話シーンが長くなってしまう。


 それと以前から言っていましたが、その内第二章終了と共に、カクヨムへ本格的に移ろうと思います。なろうは読者様は多いんですが、書籍化と考えるとやはり厳しいと思い、この判断をしています。一応楽しみにして下さっている方もいるので、更新は続けますが、カクヨム中心になるので、そのうち、更新を止めようと思います。


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