第三十話 事件級な訓練
投稿した気になってました…すんません。
※『変更』【能力】から→【能力】
「す、すいませんすいませんッ!」
ゴスッ!ゴスッ!!
——草原にて、鈍く重い打撃音が響き渡る…。
草原で胡座を掻くヴァラックは、一切の呻き声を上げることもなく、ただ静かに真っ直ぐと虚空を見つめ、その打撃を甘んじて受け入れていた。
「も、もういいじゃないですか!」
「"ボゲっ…ゲフゥウ…!"ダメだ、まだ2割の体力が残っている…1割切ってからが修行『開始』だ、まだウォーミングアップ前の段階…ここで止めちゃ何もなせん。」
—とはいいつつ、そろそろ気張らないと…意識が持ってかれそうになるな…!
ここまでで既に開始から4時間、絶え間なく降り注ぐ攻撃を余すことなく受け止めた、木製武器が砕けること大凡20本…途中変わるがわる武器を買いに行って貰ったりして、効率が悪いから…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「本身を抜け、それで私を切りつけろ」
「「「ダメダメダメダメダメ!!」」」
「ヴァラックさん!勘弁を!!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
などと、提案してみたが…ものの見事に断られてしまった…。
仕方なく、時間は掛かるが確実にダメージを受けてきているこの方法で続けさせているのだ。
「…(グ…あと30分もすれば…丁度いい…かッ!)」
「「うううう…」」
——もっとも、アハートとイマチュイアの2人はひたすらに辛そうな顔をしていた…ヴァラックは無視したが。
だが3人娘の内の1人…只人のホリーナは、グラディウスをそこまでの嫌悪感なく振るっていた。そして…ヴァラックは一つの違和感に眉を顰める。
「フッ…」
ドゴッ!
「…(ん?)」
「や、やー!」
「もうやりたくなぃぃ!」
あれ、ホリーナ…強くないか?
さっきから体に響いて来る打撃音が、ホリーナだけやたら強い…?流石にデルタほどではないが…なんというか…。
剣術が…上手い?
さっきからッ…!ぶち当たるッ…剣ッ…重くないッ!?グフォ……、だ、ダメージを喰らってきて漸く気付いたが、ホリーナコイツ…『格闘経験者』…!
ヴァラックは体に染み渡る熱さに眉を顰めながらも、この見事な剣術に浸っていた。ここまで『清廉とした攻撃』は初めて喰らったからだ。
「グ…ッ」
「!」
(ヴァラックさんが遂に膝を付いたッ…!)
「よし、皆んな!アタイらの攻撃が漸く効きだしたよ!このまま間髪入れ「まてまてまてまて!ホリーナ!」あ姉さん?」
「ヴァラックさん…ダウンした!」
…え?
——そこには、白目をむいて静かに俯くヴァラックが居た、ひたすらに体勢を変えず耐えていたため、気付かなかったのだ。
ホリーナの剣撃が見事に顎に入り、ヴァラックの意識を刈り取ったのだ。アハートとイマチュイアはポーションを飲ませようと駆け寄るが、デルタがそれを静止…今まで何のためにこんな事をしたのかを思い出させた。
「「で、でも!!」」
「取り敢えず…待機…ですかね?」
「いや叩き起こす」
姉さんが思いっきりヴァラックさんの肩を揺らして、声を投げかける。
あっ姉さん!ビンタは!ビンタはダメです!!
ゴキョン!!!
「いっッーーーッッ!!」
——ああ言わんこっちゃない…、ヴァラックさんのアダマンタイト並みのマスクをそんな手で殴ったらボロボロになりますって…
アタイらさっきから、木製の武器を壊す原因の8割がマスクに当たっちゃってですから、手なんか簡単に壊れてますからね…ホント…
そんな尊い…いや無駄な犠牲がありつつも、すぐに目を覚ましたヴァラックは、フラフラになりながらも立ち上がるのであった。
「グ…ぐおぉ…ぉぉ…」
「あ、ヴァラックさん起きました!続きを———「よ、よーーし!今から4対1の訓練をはじめーーるッ」えっ、まだ体力が2割残っているとか…」
「おっふぉ…ッ…んん、ホリーナよ!いきなり飛ばし過ぎてもアレだと思ってな…、まずこれくらいで訓練を始めようぜ?」
——こ、これ以上喰らってられん…ッ、度を越したダメージを貰っても、そもそもそんなダメージを喰らってる時点で私に勝ち目がない、瀕死の瀕死状態で鍛えた所で逆転の目はないだろう…。
目指すは瀕死の手前、つまり今の事だ。
「ぐ…はぁぁぁ…ッ!"ドパパパッ…!"よ、よし…いつでも掛かってこい」
「「血塗れ過ぎますって!!?」」
マスクの下から大量の血液を垂れ流しながら立っている、ヴァラックを心配して駆け寄るアハートとイマチュイア…そんな2人をギャグっぽくフラフラしているヴァラックの瞳が…射抜く———。
!
「アハート!イマチュイアッーー!離れろッ!」
「え?」
…アタイの眼前でヴァラックさんに近付く2人のどちらかが声を発したのか分からなかった…けれど、確かなことがある———。
「戦闘中に手ぇ…差し伸べるとは…いい度胸じゃねぇか、ええ…?」
——ヴァラックさんがすでに、戦闘体勢に入っている事だ…。
「いきなりですね…『能力』『強き心臓』…!」
「っ!『技術』『山仙大岩戦士』ー!!」
いつのまにかヴァラックの左右に転ばされたアハートたちを横目に、デルタとホリーナはそれぞれの強化技を発動させた。
——…アハートらは、転ばされただけか…流石にヴァラックさんも、助けようとしてくれた2人の意識を落とすのは可哀想だからか…放心こそしているが、戦線復帰が十二分に可能だろう…。
——さすが姉さん…私より余裕を持った雰囲気だ…戦ったことがある姉さんは、実際かなりのアドバンテージを持っていると思っていいだろう、ほぼ拮抗していたお二人…それになにせ…
「フー…」
——『不知』という私が居るんだ、流石のアタイでもある程度戦える…!
「——『魔蝋の壁守』。」
「!(ほお、どちらもかなり『高位な強化技術』だな?)」
ククク…、まさかホリーナが高位の強化技術を『二つ同時』に使えるとはな…、私が知る限り複数の高位ランクの強化技を使えるのは…ササキさんとよく絡んでる「カセトー」くらいか?
——元下金等級冒険者『カセトー』、ヤツの放った『最高の状態』や『大震剣撃』はともに最上位に類する『技術』だ。
片方は、一撃のみ人生最高の技を放てるモノ、この世で使えるものは殆どいない、稀少なスキルだ…まぁそもそも、伝授する人もまた天才だからか、かなり感覚的な修行なのだ。
更に対するは、相手が高い硬度を誇るほどに、破壊能力が増幅するスキル…、『山王の竜翁子 戦』では相性が悪かったが…、もしヤツの体が全身『鉱石』ならば、文字通り粉々になっていただろう、本来生物用じゃないから仕方がない。
「さて…どちらも知らんスキルだ…な」ぼそ…
どうするか…、また雑に地面を投げ飛ばすか?それとも拳圧?前者のスキルは恐らく…攻撃力増強か防御力向上…ここらが無難か…、しかし二つ目は想像も出来ん…
ヴァラックはボロボロにしてもらった体を動かしながら冷静に思考を巡らせた…、実際思考を巡らせるのも訓練の一つだ、ヴァラックは意外と戦闘択が雑なのだ。
今回もかなり雑な初手で様子見しようかと、思考を巡らせた…だが
「『静電身雷』『身切木人型』『生命残穢Ⅲ』!!!」
…
……
………
「あ?」
———こいつ、今なんて言った?『静電…なんだって?
—混乱するヴァラックを他所に、ホリーナはスキルの発動を完了させると、半身に構え…グラディウスを中段胸上に固定させる。
…はっ…、あまりの衝撃でまた飛びそうであった…、っていうか「5つ」って…は、初めて見たぞ…?な、なんかバチバチしてるし…え5つって…!?
「お、おまっ…5個って…凄ぇじゃねぇか…」
「…戦闘中って言ったのヴァラックさんじゃ…ああいえ、元がそこまでなので、スキルの修行に注力してたんですよ」
「な、なるほど…」
——以前、『技術』は誰でも習得できる的なニュアンスで言ったが…あれは間違いだ、そもそもスキルを取るには「才能」が必要になる。
1つも取れない人なんて割とざらにいるのだ、かく言うヴァラックその人も、『強化ポーション』なしで使用できるのなんて最下位のスキルですら2〜3個だ。
(※ヴァラックのスキルは、弱すぎてスキルを使う時には、ポーションで強化する、使うとしても戦闘中は基本使わない。)
「そ、それはそうと、時間制限があるので…行きますね」
「お、おう…、フーーーッ…よし」
「2人で掛かってきな」
黒隼のヴァラックは、棍棒の水牛…そしてグラディウスの純銀女騎士と、日が暮れるまで戦いあった…。
——しかし、この女騎士の戦闘については、のちの物語で語られる…。
だが、あえていうのであれば…
「ふーー…はぁ…ん…はぁ…、戦闘技術は…デルタ越えか…」
地に伏す私と…それよりギリギリ前に撃沈させた2人を、倒れた視線で捉えながら私は少し眠りにつく…。
○○○○○
ちなみに、アハートとイマチュイアは放心から戻って早々に、ヴァラックに気絶させられていた。
「きゅーーー…」
「きゅるるる…」
こんばんは!
第30話をご覧頂きまして本当にありがとうございます!
内容薄くてごめんなさい!でも書いてて、ホリーナ気に入っちゃったんですよ!そんなつもり無かったですけど、ホリーナの話を掘り下げる章を、後に設けます!
ホリーナなんか一番好きかも…ああいや一番はガルンだ!うんうん!
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