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2度目のラグナロク  作者: 雪華将軍
第二章 闘技国編
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第二十七話 口隠し、目元を隠す


「くっ…ッ!!」


 ——依然空に漂うヴァラックは、観客席に降り注ぐ魔法の花に対処していた、だが…当の本人の顔色は悪い。


「(クソッ…下手したらコロシアムの外にまで被害が出るぞ…ッ!!)」


「っぐぅぬぅ……ぅ!!」


 酔いの覚め切ったヴァラックは眉間に血管を浮ばせながら、魔法を掴み…投げつけて相殺させていた。


 ——無理だ、少なくとも半分(・・)は撃ち漏らす…!私が飲酒前なら…と後ろ向きな思考が巡る自分に嫌になる、嘆いてそれを自分で責めても現状は変わらない。


「〜〜っ…つ、使うか…?『必殺』…ッ!?」


 ヴァラックは本当に嫌そうな顔をして、魔法を見ながら自身の『必殺技』とも言える選択肢を取るか悩む…。


 —こんな所で使いたくない…が、そうも言ってられない緊急事態だ…、まさか暴走した魔法相手に使うとはな…と、魔法を一瞬足場にして、『竜を殺すために使った構え』を取ろうとする。


 その時であった。


「大変そうだな、手を貸す」

「!?てめぇ急に声掛けんなビビるわ!」


 ——背後から見知らぬ男の声聴こえてきたのだ、私はもう若干キレ気味にその声の主へ視線を向けた…。


 その男は全身をすっぽり覆う…外套?マント?ポンチョ?を着込み、フードで口元だけ僅かに覗かせているなんとも怪しい人間だった。


「本当誰だ貴様…?」

「今はいい…、俺が半分消してやる、お前は残りをやれ」


「…いいだろう…任せた。」


シュッ!!


 なりふり構ってられずに、ヴァラックは空気を叩きつけて、あえて地面に急速落下していった。


 コロシアム内で魔法使いたちが避難に勤しむなか、ほぼ静止した周囲の中1人高速で動くヴァラックは、ほんの一瞬場内に足先を着けて…足先だけで大きく跳躍した。


『お前は入り口方面を、俺は反対側を受け持とう。』


「!…観客席で使われてた、音を届ける魔法か…、どうせ聞こえてないだろうが…」



「あんなの着てて熱くないのか?」ぼそっ


 物凄くどうでもいいことを呟くと、体を大きくのけ反らせて、両腕を腰の位置で構える、真っ直ぐコロシアムの入り口方面に飛ぶと、またも空気を叩きつける…だが、今回は両拳である上に…威力が違った。


「『ヴラック・


コング…ドラミング』!!!!」


 超高速で連続で放たれる拳は空気を弾き飛ばして、ゴムボールを破裂させた様な音で、魔法へ殺到するのだ。


 ッグ…キツイな…!!


 あ…あの男はどうなっている…ッ!?


 私が鬼気迫る鬼気迫る表情で放ち続けながら、ちらり…と横目で身元不明の男をみる、その男は空へ縦横無尽に飛び回り、ヴァラックと同じく拳で破壊している。


「(一つ一つ叩いているのか!それでは間に合わんぞ…!)」


「フッ…!ハッ…!」


 ——恐らく魔法で飛んでいるのだろう、だが明らかにそのスピードでは間に合わない、ヴァラックはやはり見知らぬ者に任せるモノではないなと、後悔の念を抱きつつも空気砲を飛ばすのに専念する。



 …一方、その不審なフード男はボソボソと聴き取れない声で何かを呟いていた、それはまるで…詠唱のようなモノを——…。



 

「『最上位魔法(ハイエンドマジック・)絶対命令=減速(ディセレショナリティ)』…!」


「『()の魔法は、直ちに速度を落とせ…!』」


ヒューー……ゥウ……ウウ ウ…



 落下速度を急速に落とした、常人より遥かに速く動いているヴァラックにとっては、最早止まって見える速度だ。


 ヴァラックは混乱しつつも、この気を逃すまいと速度を上げて魔法を破壊しつくしていく。


「貴様か!助かる!これは魔法か何かか?」


ドゴッ! ボシュ!!


「ああ、対象物に対する行動を『指示』出来る魔法だ…、効果時間はそこまで長くない!3秒で決着だ!」


メキャ! ズドド…!


 ——まったく知らん魔法に驚愕しながらも、あの男と協力しながら魔法を跡形もなく粉砕していく…というかアイツ詠唱してたか(・・・・・・)…?


 …まぁいい、今はこの綺麗な花を砕くまで…!


「ハァ!!」

「シュッ…!!」


 ——2人は常人からは一切見えない速度で魔法を砕いている、下の魔法使いや観客からすれば、一瞬の出来事である…


シュタ…


「フーー…ッ」

「はぁ…」


 ———その間…約15秒、収容人数が700人近く入れて尚且つ、ゆったりと寛げるほどのスペースを覆う弾幕を、2人で防いだのであった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「見事だった」


 暴走した魔法を破壊した後に、例の男が独特の『グリップ音』をギュムギュム…と鳴らしながら近づいてきた。


「ふー…いや、アンタの支援がデカかった」

(…ゴム製の靴か…、それに歩き方…、常に敵に対して距離を取れるように心構えでいるのか…)


「フ…立てても何も出ないさ」

(…立ち姿で分かる、何て力強い足腰だ…、それに膂力も凄まじい、魔法で強化していた俺を越すパワーか…)


 …互いに世間話のようなたわいもない会話を続ける…。


 実際2人ともそこまで疲労を感じさせない佇まいなのだ、ヴァラックは既に汗を止めて呼吸も整えられて、フードの男に関しては一切汗を掻いてすらいない。


「で…えーと、どちらサマ?」


「…それはこちらとてそうだが…まぁ『マントの魔法使い』とでも言っておこう。」


「まんまだな…じゃあこっちは『怪力マスク女』とでも呼べばいい」


「『怪力』『女』…?……いいや、人違いか…」



 ——…自分で名乗った名前だが、面と向かって言われると腹立たしいな…、とは言わず口をキュっと閉じ(※マスクで見えないが)、『マントの魔法使い』と会話をそこそこに、コロシアム場内から出口へ向かう。


「『マントの魔法使い』よ、人違いとは?」


「ああ、この国にはすでに『怪力の姫』という女性が居てな…、『怪力マスク女』と名乗り、その上マスクで顔が隠れていて、雰囲気が若干似ている」


「む…なら『マスク女』にしておこうか?」



 …唖然とする魔法使いや観客をよそに、コロシアム場内の出入り口から2人は横並びで退場する、2m60あるヴァラックは言わずもがなの巨体だが、『マントよ魔法使い』も2m以上の巨体だ……だが…。



「ふむ…どちらでもいいと思うぞ」



 ———覗く口元ですら、かなり美形だと分かる。


 2m越えの身長でありながら、マントから察せるシルエットはそこまで太くない…、声は落ち着いた青年のシャープな低音、覗く口元から頭身も8頭身くらいだろう。



「…(こういうのを美少年というのか…?歳は知らんが…)」


「『マスク女』よ」


「…どうかしたか?」


 顎に手を置いて「(イケメンと言うヤツか…)」と思考を巡らせるヴァラックに、『マントの魔法使い』は声を掛ける。

 僅かに前を歩いていた『マントの魔法使い』が歩を止めるのに合わせて、ヴァラックも足を止める。



 ——『マントの魔法使い』から投げかけられた言葉は、私にとって、かなり意外なものだった。



「お前は…、今度行われる『王座奪取戦』にエントリーしているのか?」


「…なぜ?」



「…なぜ、とはどの『なぜ』かは知らないが…、単純に…お前と闘いたい(・・・・・・・)と思ったからだ。」



 …ヴァラックは更に「なぜ?」と言いたくなった。


 ワザワザ大会なぞを挟む理由が分からなかったからだ、目の前の相手が私という『ネームバリュー』を欲しているならまだしも…、それならば他人と間違えるような事はないだろうと、ヴァラックは自身の頭で結論付けた。


 ———なぜ…、私が大会に出ると質問したのだろうか…そしてなぜ…、大会「で」私と戦いたいのだろうか。


「なぜ『大会で』私と戦いを望む。」


「…なぜなぜばかりだな、…強いて言うなれば、俺は大会という場でお前という強者を倒した『実績』が欲しい。」


「ほう…?ククク…この私をトロフィー扱いか…!」



 私はデルタたちに会った時に発した様な『威圧感』を目の前の男へ、思い切りぶつけてやった…が…。



「どうだ、闘いの挑戦受けるか?」



「…ククク…!バハーーッ(・・・・・)……!」



 ——ひとつもビビってないなぁッ!!


 私はそんな『マントの魔法使い』の一切歪まない唇を見て、思わず笑みが零れる…溢れる…。



「お前ほどの強者に見初められるとは…なんとも…堪らんな、この感情!!」


「…」


受けよう(・・・・)ッ!!私は貴様を砕いてみたくなった…!」


「ああ…、お前なら受けてくれると思った。」


 …強者を見つけ激情に咆哮するヴァラックは、マスクで口元が隠れていても、その目元から嬉々とする表情が窺える。


 …まだ見ぬ異色者に静かに闘志を燃やす『マントの魔法使い』は、フードで目元が隠れていても、その口元はゆっ…くりと口角を上げていき、緩やかな弧を描く。


「バハーーーー……ッ!!」

「…………ッフ…」



 ——互いに初めて「まともに」正面を向き合う、ヴァラックは白く目を向いて獰猛に吠え、『マントの魔法使い』は僅かに上を向く唇を開いて言葉を掛ける。


「ああ、そうだ…これを」


スラ…さらさらっ!


 その手元は、スラスラ…と何かを紙に走らせる音が聞こえ、文字が描かれた『豪華な紙』をヴァラックに手渡す。


「ハハハー…ふっー…ん、これは…?」


「『指名制参加権チケット』…今からじゃあトーナメントに参加出来ないが、このチケットがあれば大会に参加出来る。」


「って言っても今書いたチケットって使えるのか?」


 さっきまで高らかに、低く笑い飛ばしていた私は『マントの魔法使い』の言葉で笑みを止めて、そのチケットを見詰める、確かにチケットだが…今サイン書いただけで使えるモノなのか…?


「問題ない」


 ——ヴァラックの疑問に答えるように、『マントの魔法使い』は人差し指を一本、真上に立てて静かに呟いた。




「このチケットは、前回優勝者が1人までいつでも指名できるものだ、今の走り書きでも当日受付に持っていけば使える。」


「ほう…?私は認められた…と」


「そういう事だ…では、俺は失礼する。」


キュ…キュ…キュ…


 『マントの魔法使い』はチケットを手渡すと、独特なグリップ音を響かせながら1人先に歩を進めて、背後のヴァラックに軽く手を上げて振る。



 —私はチケットをポケットを見ながら、横目であの男を見て一度手の平を振って挨拶を返す。


 いやぁ…参加するつもりは一切なかったが…アイツとは流石に戦ってみた過ぎるだろう、とチケットを指で弾いて大会に胸を膨らませる。


「…せっかくだから、あのエルフの店で大会用に着飾ってみるか…」


 ———楽しみだ…。


……

………


「あれ、優勝者が指名できる…って…?」


 ——バッと振り向くも、すでにあの男がいた場所に人影はなく、通路が続いているだけであった。


こんばんは!

第27話をご覧頂きまして本当にありがとうございます!


 私はモロにバトル系少年漫画に影響受けてるので傍点とか効果音とかかなり多く使ってしまう…。

 皆さんが不愉快に思うのならなるべく控えます、特にない様でしたら、この私なりの作風でいきたいです。



 いつもありがとうございます…ッ!

 先日沢山の方にご指導いただき、作品の書き方について学びを得ました、添削を重ねて徐々に今話みたいな書き方に統一しようと思います。


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