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2度目のラグナロク  作者: 雪華将軍
第二章 闘技国編
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第二十三話 全然道中

すみません…タイトル書くの忘れてました…


「…ッフー…」


 ヴァラックにとっては蒸し暑い壁の中の仮眠室で、ヴァラックは大量に発汗していた、


 すでに首に巻いた毛皮の装飾(屠鬼閣落)は外して、ズボンを縛る帯に括り付けているなど、最大限装備を外しているがそれでも汗は止まらない。


「ヴァラックさん、水どうぞ」


「んぐ…っすまんなデルタ…」

「声すぐに出ないほど喉カラカラじゃないですか…」


 まるでワンラウンドでノックアウトされたボクサーの様に、顔を伏せてダウンしているヴァラックを介抱するために、デルタは水を勧めたり3人組の女は団扇を仰いだりと忙しなく動いている。


 若干の申し訳なさを覚えるヴァラックであったが、熱さにクラついて今にも吐きそうなためそんな余裕もないのだ。


「姉さん!ヴァラックさん!入国許可下りましたよ!」


「漸くか」


「は、早く避暑地へ…!」


 すでに前のめりになって頭を抱えているヴァラックは、何かに祈る様に頭の上で手を合わせるなど、色々ギリギリであった。


「…」ジーー…


「…背負えってこと…ですか?」


 あまりの吐き気で動けないヴァラックはデルタに無言で両手を伸ばす、大きさ的にもデルタしか背負えないからだ。


 …だがそれにデルタは無言で後ろ髪を…絞る(・・)、髪からは大量の水が滴る…よくよく見ると、デルタの背中部分が濡れていて、背中の毛がしっとりしている。


「…な、なんだよ…私の()だぞ?有り難く受け取っとけ」


「ヴァラックさんの汗が蒸れて、背中が痒いんですよ…」


「よぅしホリーナ(・・・・)イマチュイア(・・・・・・)…コイツ裏行ってシメとけ」


……

………


「「…みぇ!?」」


 「ホリーナ」と呼ばれた只人の騎士風の女は甲冑をガシャガシャ鳴らして驚く。


 「イマチュイア」と呼ばれた軽装の蜥蜴亜人の女は爬虫類の瞳を凝縮して驚愕…。


「あ、姉御に…ッ!?」

「ウチらが…ッ!?」


「そりゃあ春知らぬ乙女(・・)が汗臭ぇって言われたんだ」


 目に見えてアワアワし出したホリーナとイマチュイアを見て、ヴァラックが可笑しそうに「くふぅ…ッ」と息を漏らし、目元を細め顔を上げる。


「ん…ぶふぅ…くく!」


「ヴァラックさん…く…笑ったら…あははッ…可哀想…プクク…!」


 それにつられてデルタも、「あはは!」と快活に笑い飛ばす、2人揃って笑うのでホリーナとイマチュイアは目を丸くして放心していた。



「ウ…ウチが…姉貴を…ッ!」


「「まてまてまてまて本気にするな!」」


 只人のホリーナはいつの間にか抜剣していた「青銅製グラディウス」をキマった目で見つめていた、ヴァラックとデルタはホリーナに慌てて冗談だとホリーナに剣を収めるに説得する。


 ホリーナがグラディウスを納刀したのを確認して、2人は肩の荷を下ろすのであった…。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


~内門~


「(巨女が巨女をおんぶしてる…)」

「…(な、なんだこの人ら…)」


 結局デルタに背負ってもらったヴァラックは、背に揺られながら門の中の部屋を出る…光の滲む一室を出たヴァラック達は門を抜ける。


「((((凄いみられてる…))))」


 …内門の門番に奇妙なモノを見たような反応をされたが、そんな視線も門の影から抜けた際に照り付ける陽光にヴァラックは目が眩み、内門の門番の視線も忘れて目を瞑る…。


「…っ……。」


 ルアンの街では感じない包み込むような暖色の太陽に瞼越しにゆっくりと瞼を開く…、真っ暗な瞳に映る景色にヴァラックは…




「これは…凄いな…」


 __純粋に見とれてしまった…。


 いままでルアンの街にこもっていたヴァラックにとって、この景色はあまりにも新鮮なものであったのだ、デルタの背に揺られながら行き交う人々を戸惑いながらも眺める。


 ヴァラックの居たルアンの街や、魔王乃唾液躍動体デモン・ムーブフレグムの件で訪れた()アルマ領地…現イノセント領地(・・・・・・・・)など…、それぞれ大きな街ではあるがそこまで観光などに向いた場所ではないのだ。


「こんなに人が…初めてみた…。」


「?そうですか?今日はそんなに…人はいないですが…」


「そうですねぇ、昨日はバザーがやってて混んでましたから余計に人が少なく感じますね」


「あ、アタイ昨日可愛いネックレス買ったんですよね」


 デルタがあたかも普通ですよ?といった様子で小首を傾げる、それに続きイマチュイアは顎に人差し指を指して先日のバザーのことを思い返す…、ホリーナに関してはそのバザーを楽しんでいたようだ。


 三人の会話についていけないヴァラックは、「なんだこいつら…」といった顔で盛り上がる三人を見つめる…、唯一会話に参加していなかった蜘蛛亜人の娘にヴァラックは視線を向ける。


「なぁアハート(・・・・)?こいつらばっか盛り上がって私ら置いてけぼりにして…」

「私は砂糖菓子買っちゃいました!」


「えぇい…裏切者めィ…」


 蜘蛛亜人のアハートもちゃっかりバザーを楽しんでいたのだ…、会った日にちなどせいぜい半日程度だが、すでにかなり仲良くなったヴァラック…。


 どこかおいてかれているようで少しだけシュンとしてしまう…、ここまで気の合う同年代とは逢ったことがないのだ、話についていけないのはやはり少しだけ寂しいものである。


「ヴァラックさん!」


「ン…どうしたアハート?」


「これ上げます!」


 デルタの背で静かに毛先を弄って揺られるヴァラック、それにアハートは蜘蛛の脚を一生懸命動かしてデルタの横に並び、ヴァラックに一つの「包み紙」を投げ渡すのであった…。


「おっと…なにこれ?」


「へへ…例の砂糖菓子!一つお裾分けします!」


「これは…」


 それは先ほどまで話に出ていた砂糖菓子が包まれていたのだ、カロン!と軽い音が中から聞こえてくる包み紙を、アハートに軽く揺らし見せると首を少し盾に揺らす…。


 なんだなんだとイマチュイアやホリーナが背負われたヴァラックを囲むと、それにやんわり目配せしたのちに包み紙の封をピリ…とはがす。


「これは…」


「「黒い…ダイヤモンド?」」


「アハート、いいのか?バザーでこれ目当てで砂糖菓子買ったんじゃないのか?」


 現れたのは「黒いダイヤモンド」…に似せられた「琥珀糖」であった。


 デルタの目の前に、デルタが抱えているヴァラックの手が伸びてきてそれが目に入ると、デルタはアハートに「あげていいのか?」と疑問を問いかける、それは__


「ヴァラックさんみたいだって嬉しそうに取ってた置いてたのに?」


「姉御!本人の目の前で…、恥ずかしいですよ!?」


「!…本当に貰っていいのか?」


 デルタの補足を聞いて余計に貰っていいものか疑問が絶えない…、砂糖菓子なんてかなり割高なのにもらっちゃっていいのかと…。


 しかしアハートは全く気にしていないように笑顔で顔を振った。


「いやぁ、やっぱり本人に貰ってもらうほうが嬉しいです!」


「私じゃ勿体なくて食べられないですし」


「…!」


 ヴァラックは真っすぐ向けられた好意に目を僅かに細めマスクの上から頬を掻く…、あまりの眩しい笑顔に直視するのが恥ずかしいくらいにその純粋な好意に嬉しくなったのだ。


 ヴァラックはデルタの肩を「ちょんちょん」と指先でつつき背から降ろして貰う、恥ずかしさから若干赤い頬がマスクで隠れていることに感謝しつつ、ヴァラックは真っすぐアハートのもとまで歩き屈んで目線を合わせた。


「ど、どうしましたか?」


「…アハート」


「はい!」


 ヴァラックがいきなり近づいてきたことに動揺しつつも、2本の腕を後ろに組んで…もう2本の腕を前に組んで、指先を弄りながらヴァラックと目を合わせる。


 ヴァラックはそんなアハートを見てフ…と息を漏らしながら掌をアハートにかざす…、俗にいう「よしよし」でアハートにの頭を力強く撫でる、いきなりのことに驚きフリーズするアハートをよそに声をかける。


よし…よし


「え、ちょ…ヴァ、ヴァラックさん?」


よしよし…


「ありがとう、アハートよ…」


 ヴァラックはあまり純粋すぎる感情に対して免疫がない、それは本人の性格が荒くれ者よりであることが助長しているからだ。


 故にヴァラックは自身でも何故頭を撫でているのかわからない、実際に掛けた声は曖昧な言葉で自信なさげな返答であった。


「え…っと…これは…お礼のつもりで」


よし…よし…


「ヴァラックさん」


「な…なんだ」


 ヴァラックの不安そうな声色に伏せ気味な頭…、そんなヴァラックをみたアハートは真っすぐヴァラックを見詰める…、アハートの視線に合わせて顔をゆっくり上げる…。



 アハートは静かにヴァラックの肩に手うを添わせて…、抱きしめる。


ぎゅ…


「こっちこそ、ヴァラックさんの存在に私たちみんな助かっているんですよ」


「…私はここに来たことないぞ…?」


 なぜ抱きしめられたのか分からないヴァラックは更に混乱する…、なんとなく抱き返したが本当になぜ抱き返したのかも分からないのだが…。


「私たち女の武力的地位が 男と同等になった(・・・・・・・・)のは、間違いなくヴァラックさんのお陰なんですよ!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 …それはヴァラックを銀等級にしてここまで有名なのは理由がある…、それはエミが熱弁した例の吟遊詩人の歌…。


 当時で考えると吟遊詩人の歌ほどの功績は、女性の功績にしてはあまりにも異質で…異例の戦績であったのだ…。


 当時確かに強い女性はいた…、だがいずれも「王席騎士団」に名を連ねるような者であったり、「高位種族」の女性であったりなど、一般の女性とは言えない者たちだったのだ。


 そんなイレギュラーを参考に出来るわけでもなく、実際女性の戦闘能力は男性に遠く及ばないレベルだったのだ、冒険者にしても兵士にしても…差別しているわけではないのだ、だがどこか女性を前線から遠ざけるような暗黙の了解…とも言えないくらいなのだが、確かに性別の壁が存在していた。



 …だがヴァラックの歌を切っ掛けにそんな壁が撤回されたのだ。




 いままで中央…よくて後方で守られていた女性は、先頭で剣を握るようになった。



 これにより女性の強者が多く表舞台に登場するようになったのだ。


                           ~『黒隼の歌』引用~


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「私は、女で…体が人一倍小さいんです…」


「でも、ヴァラックさんのお陰で…『女傑(レディース)』のお陰で、戦うことに自信がついたんです!」


 …アハートから自身への思いを涙を目元に浮かべながら話す姿に…健気な姿にヴァラックは目元が熱くなった…、抱きしめたアハートの背越しに手にもっていた黒いダイヤモンドの琥珀糖を優しく手に包み込む。


ぎゅぅぅ…


「まだ…まだまだ泣くのは早いぞ」


「え…」


「これからしばらく一緒にいるんだ、今泣いてたら枯れ死んじゃうぜ?」


 自身の小さな体を抱きしめるヴァラックのその言葉に、溢れんばかりの涙と花咲くような笑顔を浮かべる、アハートは亜人の中でも異形感の強い「虫系」の亜人だ…怒っているような顔やギザギザな歯は、アハートの性格とは真逆で厳つい…、


 しかし今この瞬間は歳相応の優しい顔付きになるほどの満面の笑みを浮かべるのであった。


「うぅぅ…!嬉しいですぅぅッ!!」


「おお…よしよし…」


 …ヴァラックは決してアハートのためだけにこの国に留まるわけではない、ゆっくりこの国を楽しむためだ、…だが…この国にいる間はアハートたちと一緒に居たいと思ったのは、決して嘘ではない事実であるのだ。


「こいつは…」


(デルタがアハートのために本気になるわけだ…。)


 あった当初のことを思い出した、デルタがアハートが負けたことに本気で悔しがる理由を強く共感した…、それで許されることではないが、アハートの純粋さにヴァラックは共感せざるを得ないのだ。


こんばんは!

第23話をご覧頂きまして本当にありがとうございます!


 遅くなってすみません!


 パソコンで書くのやっぱり難しい…、内容確認してないので誤字とか多そうですがすみません…



※3人組 ちょこっと紹介!


〇アハート・イノセンス 蜘蛛亜人

私 姉御


〇イマチュイア 蜥蜴亜人

私 姉さん


〇ホリーナ・ロリフーマー 只人

アタイ 姉貴


一応それぞれストーリーがありますが、書くか迷ってますので出ないかもしれません、今話はアハートのバックストーリーを軽く出しました、恐らく第三章に本格的掘り下げます。



いつみみていただき 感謝 しています !!


 次回 も お楽しみに~~ !!

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