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2度目のラグナロク  作者: 雪華将軍
第一章 山の竜編
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第十五話 胸に燻る炎

オォォ   ォ…!


 …モンブラン山の人工…いや()工洞窟にて、ヴァラックは雪に半身を沈めていた。


 山王の翁竜子に吹き飛ばされてそのまま瀕死の状態で、失神してしまったからだ、既に全身が凍りついた氷像と化したのだ。


ヒューー…  ぱちっ!


「ゥゥ…(嗚呼…熱イ(・・)…)」


バキャン!


「ッ…ゥグ…(…此処…は…そうか)」


「…モンブラン山…」


 ヴァラックは自身が何処に居るのかを把握しながらも、身体に張り付いた薄氷を砕いた、だがヴァラックの身体は酷い痣だらけで頭からは血を流し、目に滲んでいる…


ごろん!


「グッ…フッーーー…」


ごそっ…


「ポーション…」

かちゃっ…


 ポケットを漁り回復ポーションを探した…だがポーションは見つからず、代わりにポケットから出て来るのはガラスと青い氷(・・・)だけだった。


ぽいっ

「あー…くそ…」


熱イ(・・)…」


「(ずっと…熱い…)」


ぐらっ…


 …ポケットの中に散らばったガラス片を払い上体を起こした、"のそり""のそり"と立ち上がろうとするも、体に力が入らず頭から地面に落ちる。


ガツン!


「アアア…熱イ」


ぐぐっ…ぐらっ…


「熱イ…熱ィ…」


 何度も何度も何度も倒れながらも立ち上がるヴァラック、しかし頭を、胸を、掻き毟りながら体を巡るこの熱(・・・)に苦しむ…その時脳裏に浮かぶのは、ガルンでも仮面の猫獣人でもエミでもなかった。


ギロッ


あの野郎(山王の翁竜子)…!」


「許さん…!」


ビキキキッ!


 名も知らぬ竜(・・・・・・)に対する殺意であった、


 これはヴァラックにとって初めての強い感情(殺意)であり、いままでの感情は全て殺意に塗り潰された。


ォォオオオオオオオオオ!!!


「  …ォォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


 …未だ鳴り止まぬこの叫びに共鳴する様に、ヴァラックの怒号が竜工の洞窟に響き渡る。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 "ゴゴゴゴゴ!"…轟音が鳴り響くのはモンブラン山からである。


 街の住人は山に避難していた、冒険者らが伐採し開けた平地を確保し、住民たちは簡易住居に身を寄せていた。


「モンブラン山から白塵が!」


「雪崩れか…?」


「そんな事より街の人達はこれで全員か!」


「ああ!一部を除き完『オオオオオオオオオオ!』」


 冒険者らが激しく行き来し、事態の対処に当たっている時…1人の冒険者がモンブラン山に指を指した。


ォォォォオオオオオオオオ!


 この謎の轟音のせいでモンブラン山にまで影響し、雪崩れが起こったのだろうと、特に気にする様子のないもう1人の冒険者が避難民の把握に当たっていたが…その時であった。


バォン!!


ガラガラガララ…

『ォォォオオ!!』


「「「「「!?」」」」」ざわざわ


 __岸壁から竜の顔が雪の白煙に混じり現れたのは。


『ォォオオオオオオオオオオオ!!!』


「キャアアア!?」


「デカすぎる…」


「っ〜!?」


 街の住民達がパニックに陥る中、一部の冒険者らは街の住人を山頂まで引き連れる為に声を掛けた。


 そして残りの冒険者は街まで降り、あの竜に対する対策を仰ぐ為に冒険者ギルドまで向かうのであった。


ザッザッ…

「エミ、お前は山頂まで街の人達を守るんでヤンス」


「ですが!僕の魔法は絶対に役立ちますッ!」


ふる…ふる…


「そんな震えて何が出来るでヤンスか」


「っ…」


 エミは他の冒険者と共に下山をしようとしていたが、その肩は震えて顔も青白かった。


 そんなエミの頭をポン…と撫でるレインバーエインは、魔法を唱え浮かび上がる。


「大人は子供に頼られたいんだ」


「ッレインバーエインさ「行ってくるでヤンス!」レインバーエインさんッ!」


ふわっ!すっーー!


「…別に強くないのに格好つけ過ぎたなぁ…」

シュタっ


 空路で一瞬のうちに街まで降り、レインバーエインはギルドの戸を開くと見知った数人の冒険者が机を囲んでいるのを見た。


「カセトーさん、ササキさんは大丈夫でしたでサンス?」


「おおレインバーか!ササキちゃんなら上でお眠の時間だぜぇ?」


「はい、ウチのヒーラーに治療させてます!流石の元金等級(・・・・)冒険者もブランクが大きかったようで…」


 カセトーとは別の冒険者がレインバーエインの疑問に答えた、避難する中でササキが倒れた話を聴き、不安に駆られていたのだ。


「そ、それにしても!銀等級(レインバーエイン)下金等級(カセトー)がいるなら、何とかなるかも知れないぞ!」


ちらっ

「あー…」


ちらっ

「それは…厳しいでカンス」


!?


 レインバーエインは恐らくこの場で最強の男、カセトーの濁した言葉を汲み取り、ハッキリと他の冒険者に説明した。


 …当然自身らより格上の2人があのバケモノに勝てないと言葉を濁すのだ、士気は大きく低下した…。


ごくっ…


銀等級(シルバー)…ないしは下金等級(ローゴールド)が無理なら私たちじゃとても…」


「俺ら2人でアイツを攻める、お前らは援護を頼めるか?」


 2人の上位冒険者のまさかの提案に一同は動揺した、


 確かに自分たちでは足手纏いにしかならないのかもしれない…だがあまりに2人に任せるのは無謀すぎる…と。


「「「!?」」」


「そ、そんな!お二人だけじゃあ!?」


ギシッ…!


「そ、そうだぞカス(・・)3人だ(・・・)…ッ!」


アワアワ!


「ちょちょササキさん!動かないで下さっあっお胸ガッ!?」


 誰もが口を閉じる中、階段からミシリと木が軋む音が…音の発生源を見ると、そこには包帯で隠れてはいるが新しい大傷が目立つほぼ半裸のササキが、階段を下っていた。


ダッ!


「ササキチャン、寝てろ」


ジュ…スッー…

「"プハー…"いいやカス(・・)、私も連れて行くべきだ」


カチャ…


 「そうだろ?」と問い掛けられたレインバーエインは、カセトーから伝わる「断れ」という()を無視しながら、自身の考えを素直を話した。


「…連れて行くべきでハンス」


ガタッ!


「レインバー、コイツは重傷をおったばっかりなんだ」


「ホレ見た事か、行くぞ」


ササキ(・・・)あの程度の(・・・・・)モンスターに負けたお前じゃあ役不足なんだ」


 静かに口を閉ざしながら出発の準備をするレインバーエインは、カセトーらの話し合いを流し目に、思考を回した。


 確かに重傷を負った、ブランクのある人間だ…だが間違いなく自分よりも戦力になる存在、みすみす見逃せない。


「待て、待てよササキ!」


ぐいっ!


「…くどいぞ」


「お前が大切なんだ!」




「はぁっ///!?!?」


 先程の緊迫した雰囲気とは一転し、ササキの音が外れた驚愕の声に包まれた、顔は僅かにピンクに染まり目は見開かれている。


 しかし当の本人は、そんなササキの両腕を掴み必死に説得していた、いくら理由を捏ねようとも、この願いが何よりも事実であったからだ。


「え!?カセトーさん…!アンタ!」


「えっちょっ…きゃーー!みんなーー!青春よーー!」


「ササキさんが固まってる!?」


「急に何言うんだカス///!!」


「俺は…お前に傷付いて欲しくないんだ」


「っ!」


 カセトーの真っ直ぐな想いにササキは取り乱した頭を戻しカセトーを見た、だがその瞳に射られたササキはむしろこの場に残ることを良しとはしなかった。


「その…気持ちは嬉しい」


「なら「だから、」!」


ぼすっ…


私にも(・・・)お前を(・・・)守らせろ(・・・・)


 ササキはカセトーの胸に拳を沈ませ、告白の答えを出した、カセトーはその答えに「!」と驚き、瞳を縮小させた。


 その答えを自分の中で消化し終えたカセトーは、ぐっ…とササキを胸に抱いた。


ぎゅぅぅ…


「…ッ分かった」


「っ…ホラ行くぞ」


「分かったでガス」


 互いに抱き合うカセトーとササキ…周りの冒険者はその2人を見つめて、各々覚悟を決めたようだ。


 ササキは適当にその場に掛けられていたジャケットを着込み、レインバーエインに出発の合図を出した。


「『下位空飛(ロー・エアフライング)』」


ふわ…


「俺たち3人で奴を足止めする」


ふわ…


ジジ…ッ スパッー…


「あなた達は、私達の戦いに邪魔が入らない様に動いてくれ!」


 「はい!」と返事を返した冒険者たちはギルドを出て、モンスターたちに反旗を翻すために…


 レインバーエインたちは魔法で浮遊し、巨大なドラゴンに向かった。


ふわっ


「…だがササキチャン、危なかったら…」


「いや、お前こそ危険になる前に撤退しろよ」


「…(俺邪魔でゲス…?)」


 …なんて思いつつも、目の前でモンブラン山から這い出るドラゴン…山王の翁竜子に最速で浮遊した、近付けば近付く程にその大きさに驚愕した。


プア…ぷあぷあ…


「さて…お前らコイツどうする?」


「俺が一番槍を務める」


「…俺、銀等級といえど斥候なんだけど本当にいるんメス?」


『ォォォオオオオオオ!!!』


 レインバーエインはドラゴンの上まで浮遊し、カセトーをドラゴンの背で浮遊を解除した、高速で飛来するカセトーは大剣を上段に構え…回転した。


「『筋力増強(パワーアップ)』『力溜め(パワー・ホールド)』『必中(ヒットマン)』『回転力トルク・アップ・パワー』…『最高の状態(ゴールデン・エイジ)』!!」


『ォォオオオオオオオ』


「『(ザ・ク)(エイク)(・アタ)(ッカー)』!!」


ドォォ  ォォオオン!!


『オオオオオオオオオ!!?』


 流石の金等級冒険者、幾多もの技術(スキル)能力(スキル)を駆使して大剣をドラゴンの甲羅に叩きつけた。


 甲羅にヒビが入り、山王の翁竜子は驚愕の咆哮を上げたのだ…が。


『オオオオオオオオオオオ!!!』


「うるっさッ!」


「ッ〜!!カセトーさんは!?」


ヒュ…ッ!


 あまりの音量にササキやレインバーエインは怯み、意識を保つ事に精一杯であった、恐ろしい咆哮に慄いたレインバーエインは、攻撃を行ったカセトーの安否を確認しようと周りを見渡した。


「っレインバー!」


「どうかしましタンス!?」


「上!」


 ササキの叫びにより、レインバーエインは自身の上部へ視線を向けた…それは…


カセトー(・・・・)!」


ヒューーー!


がしっ!


「危なっ…!」


 それはあまりの咆哮によって、空へ吹き飛ばされたカセトーであった…全身から血を吹き出し目を剥いたカセトーは地面に落下していたが、それよりも早くレインバーエインが回収に成功した。


『オオオオオオオオオオオオ!!』


ドォンドォンドォン!ドォン!!


「マズイッ!」


 カセトーにヒビ入れさせられた甲羅からは、肉を覗かせて僅かに流血していた…それにより山王の翁竜子は敵対し、突進してきたのだ。


「レインバー!私が引き付けている間に早く逃げろ!」


バッ!


「あっちょ!?」


シュタッ!


「"スパーッ…"来い!」


シャキン…!


 レインバーエインから離れ、浮遊の効果が切れたササキは自由落下し、山王の翁竜子の突進する目の前に長尺刀を構えた…だがそれが無謀であるのは火を見るよりも明らかであった。


ドドドドド!!


『オオオオオオオオオオ!!』


「『即死対策(ライフスタック)』『斬撃(スラッシュ)』『 抜刀』!」


「『小鳥鳴き(コトリナキ)』!」


ギャオン!


 迫る外殻に斬撃力を高めた抜刀で応答した、


 足裏で鞘を踏みつけながら両手で柄を握り、地面ごと勢い良く切り上げた。


 …だが、


ギャィィ…ン


「弾か "ドゴッ!"


___れた


 ササキの刀はドラゴンの鱗に食い込むよりも先に、あまりの質量攻撃に力負けして、山王の翁竜子に吹き飛ばされたのだ。


ぐる…!


 カセトーとササキを下した山王の翁竜子は、方向を変え街へ再び歩を進めた。


 …しかし、山王の翁竜子は気付かなかったのだ…あの2人に気を取られて、自身が這い出てきた山(モンブラン山)から飛び込んでくる…ハヤブサに。


ヒュッーー…!


『…ォォオ…?』


ヒュッン…!


 頭頂部に差し掛かる小さな影…ヴァラックの飛来に…。


「ゴァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


DoGAAaaaaaaaaann!!


バギャ!!


『ゴアアアアアアアアア!?!?』


 再び砕かれた外殻が舞う…山王の翁竜子は強い怒りと屈辱を…そして疑問を覚えた(・・・・・・)

 アレ(ヴァラック)は穴ぐらで潰した羽虫(ゴミ)であったはずだ…


「バハハハハハハハハハハハッーー!!」


 __何故、羽虫(ゴミ)に恐怖する?…と。


『ォアアアアアア!!』


「もうお前に油断しない(・・・・・)!」


グシッ…(※髪を掻き上げる音)


 …捕食者たちの怒りと怒りの正面衝突が今、火蓋を…否、あえて言うなら…


 今鎖が千切られた。

こんばんは!

第15話をご覧頂きまして本当にありがとうございます!


 今話と同時に、1話の編集、プロローグの追加を致しました、プロローグに出てくる三つの柱は相当先に出す予定だったんですが、

 よくよく考えてみたら、そうすると読んでて違和感が凄そうで、重要な要素なのでもう予め最初から出す事にしました。2025/06/17

 急にこんな事をして、いつもご覧いただいている方々には呆れられても文句が言えないほど、急に変更してしまい申し訳ございませんでした。

 ですが、プロローグを追加しただけですので、1話から読み返す必要は御座いません、ですのでご安心ください。



※武器紹介パート2


○長尺大刀《帝國緑(テイコクリョク)泥長光(デイナガミツ)

 ササキの保有する帝国で造られた刀、巨大な狼の牙から出来ており、全長は大凡195cmの細身片刃。

 本来なら刀匠の銘を打ちたかったったが、断られてしまい仕方無しに長光の名を付けた。

 そのため、ササキが読んでいるだけで刀には名が刻まれていない。


○大剣《戦大狼(ウォ・イヌ)

 カセトーの持つ大剣、同じく巨大な狼モンスターの牙を削り出して加工したモノで、斬るよりも突く方が向いている。

 …が重過ぎて振るうことしか出来ない、矛盾した武器。



いつもご覧になって頂きありがとうございます!

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