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2度目のラグナロク  作者: 雪華将軍
第一章 山の竜編
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第十三話 叫

ズガガガガッ!!


「爽快とはこの事だな」


スーーーッ!


 前回の終わりに引き続き斜面が緩やかな山道を滑り駆けるヴァラック、目元は僅かに柔らぎ何処か年相応の女の子の様な無邪気さをマスクに隠している。


 それもやはり1人山の中という開放感と、何故か膨れるあの山に登りたい(・・・・・・・・)という感情が彼女をこうするのだろう。


ズザザッ!ズザザーーーッ!


「…(…誰もいない)…っすーーーーー…」


「うぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


ヴァラックは叫ばずにはいられなかった、何という開放感(・・・)…いやあえて言うならば解放感(・・・)が正しい表現であろう。


「素晴らしい景色だ…!銀が一面を支配するなんて綺麗なんだ!」


バハハハーーーッ(・・・・・・・・)!!」


 あの日(強敵との連戦)からヴァラックの心にはわだかまりが残っていたのだ、今はまだ自身すらも気付いていないわだかまりが、ヴァラックを無意識に苛んでいたのだ。


 …あまりの解放感で目の前に飛び出したモンスターに気付かなかった程に。


ガサッ!


「ギョオオオオオオ!!!?」


「おおおお、おおおおぉっ!?」


ごちゃっ!!


 目の前を横切った鶏型のモンスターと正面衝突し、ヴァラックが乗っていた木のボートが先行き、少し先の木にぶつかって大破した。


 …ヴァラックとモンスターはというと…


ズチャァ…!


「ごげぇ"ぇ"え"え"!!?」ピーーーッ…


「グッ…!ま…マスクのフチ(・・)がッ!」


 ヴァラックの顔面ダイブにより…鶏型のモンスターの衝突部位が大きく陥没し、そのまま心臓発作を起こし死亡したのだ。


 その時の衝撃でヴァラックにも多少のダメージが入ったが、まぁ鶏型モンスターと羞恥心に比べれば許容範囲である。


「イツぅ…」


イラッ…

「テンション上げ過ぎた…」


ちらっ


「ケェ……」ぴくぴく…


 ヴァラックは一応危険地帯でこんなはしゃいでしまった事に反省しながら、疑問を覚えた。


 …「自身がこんなにハシャグ(・・・・)事に」、並ならぬ違和感とそれと同時に、一種の爽快感を得た。


「ん…しょ」ズサッ…


パッパッパッ…!


「あー、何気にもう暗いし此処らで一泊するか…」


チラリ…


「飯の確保もできたし…」


 ゆるりと立ち上がり服についた砂埃を落とすと、鶏型のモンスターに目を付けた。


 鶏型モンスターを引きずりながら少し先に進んだヴァラックは、河原を見つけた。


ズルズル…ズル


「おぉ、良さげだな。」


どさっ!


「よぅし、ここに決めた」


 「どうして食おうか(やろうか)」と楽しげに運良く手に入れた鶏型モンスターと対面するヴァラックは、河原に落ちていた流木に腰を掛け、脚を組みながらリラックスをする。


 …もっとも、鶏型モンスターにとっては運悪く(・・・)であるが。


「…火起こし(・・・・)するか」


ゴソッ…


かちゃ…


「(あった)」


 ポケットを漁り、出てきた物はまさかの回復薬液(ポーション)…それの下位ポーションである。


 ヴァラックは腰掛けている流木の枝を"ポキリ""ポキリ"と折り取り、地面に撒いた。


ちゃぽんっ キラッ…


「確か…(一点に太陽を集める(・・・))」

……

………

「…まぁそんな上手くいかないか」フッ…


 …ヴァラックが試していたモノは「しゅうれん現象」、簡単に言えば光を一点に集中させ、発火させる現象だ。


 しかし色の薄い下位ポーションとは言え、火を集中させて火を起こすまでには至らなかったのであった。


ゴソッ… ガサッ…


「はぁ、本で見た事を真似したくなるのは…」


ゴソ…!


「男女共通なのかね…」


 出来なかった不服感からか、ひとりごちるヴァラックはまたもポケットに手を突っ込み、ポーションを戻した。


 それと変わる様に現れたのは木の棒の板…それはいつの日か師匠が見せたマッチ(・・・)であった。(ep.1参照)


カロんっ…


「(やっぱりあった方がいいよな)」


バキッ!


 乾いた木の音を手の中で奏でたのち、早速半分に折った。


 木の枝に仕込まれていた着火剤が、折られた衝撃でスパークし、火を灯した。


ボウっ!


「便利すぎ…」


ぽいっ…

……

パチ…パチッ!


「いや本当便利だな…」


 積まれた木々に投下したマッチがみるみる内に、火を広げて一瞬で焚き火が完成したのである。


 流石の便利性に技術に感謝せずにはいられないだろう、今まで生水を飲んでいたのだが、


 冒険先でまともに煮沸したのは今回が初めてだ。


ごくっ…ごっ…きゅ


「…ふっーー…なんかウマイ」


パチ…


「…海ってのはこの夜空みたいな感じらしいが…空と違って魚がいて、鮮魚が食えるらしいな…」


 思い切り内陸に住んでいて、まともに山々の外側を巡った事のないヴァラックは海を知らない。


 だが知識はある、本を沢山読んでいるヴァラックは、様々な豆知識的な知識を広く浅く保有する。


 先ほどの火起こし(しゅうれん現象)なども本からの知識だ。


パチッ!


「…?」


「…私は…こんなに外に興味を持つ人間だったか?」


「…(いや…そもそもなんで私はこの街を離れたがらな…)」


はぁ…


 またも自身の変化に驚いた…昼間の時に感じた山へ登りたいという膨張する感覚に、この街を遠く離れた環境への興味…今まで感じたこともなかった感覚に戸惑った。


 …しかし、そんな感覚に戸惑うのをやめ、今は目の前の焼き鶏に集中した。


ズリッ…

「難しいことはやめだ。」


パチッ…


「そろそろいいだろ」


じゅぅぅ…


 真っ黒に焦がした目の前の肉…明らかにやり過ぎであるように見えるが、ヴァラックは丁度いい(・・・・)と肉を火から上げ地面に直に置いた。


 …内臓を処理しただけで、毛や皮の処理は一切していないため、直置きでも問題ないのだ。


じゅぅ〜…


「臓物処理だけした羽毛ごと焼いた文字通りの丸焼き(・・・)


ムシッ…!


「"んん…"素晴らしい…」


ほかっ!


 皮ごと剥いだ羽毛の下には、白く綺麗な身が脂を滴らせて現れたのだ、ヴァラックはそれ見た事かと嬉しそうにガッツいた。


 …その間口元は周りの羽毛で隠れて見えないが。


「うまひうまひ」ガツガツ…


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 日を跨ぎ、目覚めたヴァラックは川で軽く髪を洗い、焚き火の元で乾かしながら、手には昨日の肉の残りが握られており、むしゃむしゃと肉を黒パンに挟ませて食べていた。


ばり…むしゃ…


「んぐ……」


ふぁぁ…ぁあ…


「ごちそう…さて、行くか。」


パンパンッ!


 手についたカスを叩き払い、立ち上がったヴァラックは焚き火跡を確実に鎮火(・・・・・)してから、焚き火跡にあった昨日食べた肉の大きな骨を蹴り潰し、出発した。


 …出発から約1時間足らずで下山終了、もっとも緩やかな傾斜であったためそんなに山登りをした感覚はないのだが、山を抜けた。


ザッ…ザッ…


「…さてさてさて」


ザッ…ザッ…


「そろそろ山下か」


 山を抜けたヴァラックはその長い足で獣道を軽く踏破し、既に目的の巨大山…『モンブラン山』の麓まで到着した。


「…近くで見るとデカさの意味が変わって見えるな」


「この高さなら…多く見積もっても2泊くらいか」


すっ…


 当然それはヴァラックならばという話である、崖の多い山暮らしの上に上銀等級上位の身体能力が合わさり、それで2泊程度である。


「…」


グッ…グッ…グィーー!


 距離的にも体力的にも余裕を残しても1日足らずで登り切れるが、急いでいる訳でもないので中腹で一泊するのだ。


 ヴァラックは体を伸ばし、関節等の柔軟を入念に済ませた後…飛び込んだ。


ゴウッ!!


「ふっーーー…!」


ドッ!ドドドドド!!


 それはそれは速く走った。


 本来モンブラン山は登山に向いていない山なのは、これまで説明してきた通りであるが、ヴァラックは何もない平地より、こういうアクロバットな場所の方が向いているのだ。


トトトトトトっ!


「涼しー…」


「生き返る…!」


 先程までいた比較的温暖な場所はヴァラックは好まない…、元々寒冷地に住む上に寒冷地ですら既にもう半袖である(ep.1あとがき挿絵参照)。


 …水を生水で飲めるのも(美味しくはないが)、


 その体温の高さにあるのだ…これもガルンの言っていた遺伝子(・・・)に関係するのかはまだ知る由もない。


「よっ…と(ここらがもう中腹(・・・・)か)」


「はぁ…(モンスターも寒過ぎていないし(・・・・・・・・)…)」


 「何故こんな所に魅力を感じたんだろうな」と静かに落胆するヴァラックは、一応登り切るかと片手にポケットを突っ込みながらも、パルクール(※移動動作)を駆使して軽やかに登った。


ダダダダッダ!


「(…だが、未だにここ()で燻る…)」


シュタ…ザッ…ザッ…


「(何だ…、何でこの山に私は魅力を感じるんだ…)」


「何故だ!」


 …高まり続ける謎のこの衝動、自身が自身ではない様な柄でもない昂りに戸惑い続けたヴァラックは、ただただ山頂目指して走り続けた。


 …しかし遂にその感情はピークに達して、足が止まってしまった「何故だ」そう叫ぶも誰も応えない…



…筈だった。


 鈍く光る光沢は白砂の様な色、顔に対して小さな羊の様な角…目は大きく何処か幼なげであるが、


 その目は確かに殺意を持った瞳…2m60cmあるヴァラックより大きな目玉がヴァラックを射る。


「!?…んだコイツ!」


ザッ…


ガバッ!!


『ゴォ……ォオオオ!』


 口を開くだけで尻餅をつきそうな程の轟音…しかしその口から発せられる音にヴァラックは恐怖を覚えながらも、いつかの『仮面の猫獣人』の時の様に…頭を沸騰させた。


「バ…バハハーーッ(・・・・・・・)…!!」


ダダダダダダッーーー!!


『ォォォオオオオオオオオオオオ!!』


「お前だな!お前が私を惹きつけた(・・・・・)!!」

ダッ!


『オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』


 ヴァラックは直ぐに拳を腰溜めに構え、合間見える…瞬間、ヴァラックの筋肉が大きく膨れ上がると、ヴァラックは体勢を低く…足を大きく前に出して飛び込んだ…が


「オ"オォ"ーーーー!!!!」

ゴオォン!


ブシッ…!

「なっ…硬…」


 …ヴァラックの拳はモンスターに止められ


ゴシャッ!!


「ブッ…!?」

プシッ!


 地面に転がった。


 ヴァラックの殴打を顔面で受け止めたモンスターは"のそり"と"のそり"…ゆっくりと穴から這い出て来た。


 …口腔に峡谷、背には大地、尻尾には山脈を、全身がガチガチの外皮に包まれた巨獣。


伝説 山王の(マウンテン・サン・)翁竜子(ウォン=ドラゴン)



 気を失ったヴァラックを他所に、山王の翁竜子は歩みを進める…歩くたびに落石が降り注ぐがこの竜の前には無意味とばかりに、粉々に砕けちる。


「……」


『ォォォオオオオオオオオオオオオオオ!!!』


ズゥォォォォ    ォォォォオオオオン!!


ズゥ   ゥゥウウウン!


がりがりがりがりッ!


 …洞窟かと思われた穴は明らかに削られた痕が残っており、たまたまヴァラックとカチ会ってしまっただけの様だ。


山を統べる王が、今下界へ____。

こんばんは!

第13話をご覧頂きまして本当にありがとうございます!


いつもありがとうございます!平均pvが50になりました!なんか急に増え過ぎ!吐きそうだけど嬉しい!吐きそう!


真夜中に再生数がとんでもないんだけど、何処かの会社が私の作品をみて書籍化するか悩んでたりする?…って妄想。



※ランスボアヒュージの1日


お、早速巨槍猪がいたよ!何をしているのかな?

もぎゅ!もぎゅ!

「ぷぎぷぎ♪」


木の実を食べていね!嬉しそう!

…おや?目の前から人ゲンガキタゾ


ドッドッドッドッ!

「プゴゴゴゴ!!」


「巨槍猪だッーー!!?」

「「「ヒィィイイイ!!」」」


ドゴンッ!! ブシャッ!!

メキュ…バリバリ…

お肉も食べるよ巨槍猪!今日も良い日になるかな!


※ヴァラックに木の枝で追い払われるまで後30分…



〇山王の翁竜子との接敵

https://47325.mitemin.net/i977521/


あ、聞いて!ブックマーク二個も付いたんですよ、嬉し過ぎ!

スクショしちゃいました、ってか嬉しすぎて普通にするよね?

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