第十一話 誇り高き盗賊
「呼び出し…?」
「ああ、俺のチームとヴァラック、お前にもきていた。」
「なんだってワザワザ…」
「あの件の依頼料を払いたいらしいでランス」
「なるほ……ランス?」
それはあの高貴な裁判から2日後…その明朝での出来事だった、
めでたく生まれたコトトとジュワンヌの子、コトトチームのメンバーはそれはそれは愛でて、ヴァラックは無事産まれたことにそっと安堵した。
「でもコトト、お前子供産まれたばっかりでここ離れるのは…」
「ああ…そうなんだ、そこで悩んでいる」
「僕ら的にはコトトさんは残って頂いて、ヴァラックさんとレインバーエインさんの3人で行こうかと…」
「でヤンス」
「ああもうそれ相槌にもなるんだ…」
ヴァラックはその話を聞いて腕を組み天を仰いだ…「ふーーッ」と重い息を漏らすと頭に浮かぶのはスライムを討伐してからのドタバタした日々…
…つわりかと思っていたら実は陣痛で産婆もいないからヴァラックが取り上げて。
…産後すぐ移動するのは危ないため、ここアルマに滞在し、その間永遠とエミに質問攻めされ続けたり。
かと思えば、お気楽サマ…ああいや、お貴族サマに呼び出しを受けるだと?
「だりぃ…」
そう思わずにはいられなかった…それもそうだろう、
いくら銀…上銀等級といえどただの冒険者だ、貴族と会うのは何かと気が進まないのだ、それに…
「ヴァラック…ここの統治者…アルマ家が先日の件に関わっている可能性がある…って事は」
「フーーーッ…(……口封じ…だろうなぁ…)」
やはり気が進まない…そうは思いつつ呼び出しには応じなければならないため、ヴァラックは2人を引連れてアルマ家邸宅に歩を進めた。
「…もし何か振舞われても飲むな食うな、それと完全武装で赴く、何かあれば…」
コツコツ…っ
「その必要は御座いません」
バッ!
「「!?」」
「てめぇ着けてやがったなゴラァ!」
突如背後から聞こえた硬い革靴の音と共に、背後から仮面をつけた猫獣人が現れたのだ。
ヴァラックは声がしたと同時に、頭の沸点が最大に達し現れた猫獣人にハイキックを喰らわせた、エミとレインバーエインはワンテンポ遅れて身構えた…しかし…
ぎゅ…
「…ッ掴っ!?」
ふわっ
「イッ…!」
ヴァラックの蹴りを掴んだ猫獣人…ありえない、あんな華奢な体から出る握力じゃない。
猫獣人は"ふわり"とヴァラックの体を浮かせ…叩きつけた。
バオン!
「……〜〜っハッ!?」
ズシン…
「若い…まるで力を身につけた若竜、いくらか技の完成度は高いようですが…」
ギリッ!
「『ヴラック・…」
あまりの衝撃にヴァラックは目を回した…しかしすぐに復帰して四肢を猫獣人へ伸ばした。
猫獣人はあまりにも間抜けな体勢…まるで赤ん坊が親に抱きつこうと全身でアピールするような、そんな体勢に眉を顰め軽く交わした…が
ズア!!
「しまっ…!?(相手の体の大きさを誤っ…!)」
ガシッ!
ギュゥゥゥ…!
「ライオン』!!」
ヴァラックは四肢で絡め取った猫獣人の体を…自身の体へ押し付けた、しかし押し付けるパワーがおかしい。
猫獣人の体はギチギチと音を上げ凝縮されたのだ、猫獣人はすかさず力を込めたが…すでに遅い。
ぎゅううううううう!!!
「ぬ、抜けられない…!」
「バハハハーーッ…!私に抱かれ圧死しろ…!」
猫獣人は頬に血管を浮ばせて、ヴァラックの拘束に抗った…その力は拮抗して、お互いに攻め合った。
だが、その力の戦いも1人の男により終戦を迎えるのであった。
タジッ…
「猫様、冒険者の方何をされえいるのですか!?」
「「ああ!?」」
「…猫様?」こてん
そこに現れた男は…
「「あの時の!」」
「盗賊でアンズ!?」
現れた男は何とあの時の盗賊であった、だがその時とは違い見なりがかなり良くなっていた、
剣は見窄らしいボロ剣から実直を体現した様な剣に、服装は青を基調とした物に…その上から白い肩掛けを掛けている…
どこからどう見ても…
「お貴族サマだったのか…?」
「いや…、ああいやそうか今はもう貴族なのか…」
「「「?」」」
シュハッ!
「!?逃げられた!」
全員が全員おどろいているなかで、野盗…もといその貴族は頭を掻き、猫獣人はヴァラックの拘束から猫の様にスラリと抜け出した。
仮面を付けた猫獣人はパンと体を叩き埃を落とすと、ズレたシルクの手袋をキュっ…と付け直した。
キュ…ギチッ…
「…私が説明致します、ト…んんヴァラック様。」
ドサッ
「イテテ…急になんだよ様付けして」
しらっ
「いえ、執事として仕事をこなしているだけです。」
地面に座った「さっきまであんな戦りあったのに?」とは口に出さず、ただ重い溜め息を漏らすヴァラックはタートルネックの口を摘み胸元をパタパタとさせ、熱を逃した。
…その光景を真上から見ていたエミは香る匂いに真顔で鼻を伸ばしていた…変態である。
ぱたぱたぱた…
「あ?なにジロジロ見てんだ?」
「いえ!なにも!」きらきら…!
鼻血ダラーー…
「…話を戻しまして、実はですね」
スッ…
「あ、ハンカチ…ありがとうございます」
…そこから語られた内容はつまり簡単に言えば、元領主が心労からか床に伏してしまったのでこの男が継いだのである。
そしてこの男は元々…盗賊でも貴族でもなかったのだ。
「このお方は元々、このアルマの領主カルムトンが雇用していた兵士…その中でも彼はリーダーを務める人物だったのです。」
「…納得」
グシッ…
ヴァラックは乱れた毛髪を後ろへ梳かし、「納得」この一言に尽きたのだ、色々おかしい所があったが一番は、盗賊にしては強過ぎた。
あれは明らかに訓練された馬術だ、そして極めつけには…
「あの矢…気丈なおばさんの旦那さんだったっか?」
「…やはりソコに気づきますか」
「な、何のこと…?」
「あの矢…やたらと綺麗だったんだよ、野盗がわざわざ弓一本にそこまでするとも思えん」
元リーダーの男は目を丸くした、「何という着眼点だ」と…さすが世間から《黒隼》と言われるだけのお人だ、そう思わずにはいられない正に天晴れな考察であった。
「ほう…騎士崩れの野盗であった…という思考にはならなかったのか…むしろその方が多いだろうに」
「確かに…頭蓋骨を貫く正確性と威力、騎士崩れの可能性はあったが…ああそうだ…エミ、何故だと思う?」
…
……
………
「ぼくぅ!?」
今までぼーっとヴァラックを見ていたエミは突如としたご指名に目を剥いて驚いた。
元リーダーの男は何故こんな少年に質問を問いかけたのか疑問に思い顔をその少年に向けた、やはりと言うべきかまだあどけない雰囲気に余計疑問を覚えた。
「えっ…と、理由がないからじゃないですか?」
「!」
にィ…
「正解だ、襲う理由がないのが理由だ。」
?
「どういう事ザンス?」
元リーダーの男は素直に感心した、会話の中だけでここまで情報をまとめられる能力…流石魔法使いと言うべきか、はたまたこの少年だからだろうか。
ヴァラックは満足そうに目元を細め、エミを撫でた。
なでなで…
「つまり、あの場面で普通の盗賊が襲う理由がない…それが普通の盗賊ではない理由だ」
「わ…わふぅ…//」
「なるほど…(なんか懐柔されてるでタンス…)」
レインバーエインは若干引き気味に自身のチームメイトを見ながらも感心した、前から地頭は良いんだろうなとは思っていたからだ。
そしてその考察の内容にも納得した、そりゃあそうだと。
「確かに…あんなスライムがいて窃盗なんてリスクでしかないでナンス」
「ああもう語尾がぐちゃぐちゃ…つまりそういう事だよ」
ぱんぱん!
「話を再び戻しますが、この方…ああこのお方は」
「ギル…ギル・イノセントだ、よろしく頼む」
元リーダーの男…ギルは名乗っていなかったなとハッとし、姿勢を正して礼をした。
ヴァラックは「こっちの方がしっくりくるな」と盗賊風のギルと、身嗜みを正したギルを比べ意地悪く鼻を鳴らした。
「今アルマ家は…実質的に政治的権利が剥奪されているのです。」
「そりゃな…あー」
「そう、特殊討伐許可制に指定されていたスライム…あれを、あの村に誘導させる様指示したのが」
「カルムトン元男爵なのです。」
ヴァラックは任務前から察知し忌諱してきた予想が当たった事に怒り半分、そして疑問が半分残ったのだ。
__こんなタイミングで死んだ…?、だが貴族に疎いヴァラックでも、何かしら貴族間の闇があるのだろうなと口を開かずただ首を振った、他の2人も同じ様な反応だ。
「しかし、ギル〜…さん?が貴族階級に上がった理由は分かったが何故呼び出され、何故ここに居る?」
…っ
「それは…」
ドサッ…じゃりっ…
「…それは何のつもりだ」
ギルはヴァラックからの質問に顔に影を伴い、両膝を付いて両手を地面に貼り付けた。
ヴァラックはいきなりの謝罪に眉を顰め、静かに見下ろした…その顔には思い切り不快感を表している。
「主の命とは言え、村民と冒険者の方々に恐怖を与えて被害を出した!民を守る兵士として恥ずべ「私に言うんじゃない」!」
イラぁ…ビキッ…
「私は、別にここに住んでる訳でも思い入れがあるわけでもない」
「依頼で来ただけだ、これで私らがくたばろうがお前の所為じゃない」
ヴァラックの不満を頭を下げて聞いていたギルが「しかし!」と反論するもヴァラックのキレた顔に慄きただ頭を伏せる事しかできなかった。
「顔上げろや」
ぐいっ!
「っ…」
ヴァラックはフ…と怒火を長い瞬きの後に鎮め、尻を付けずにその場にしゃがんだヴァラックはギルの顔を上げさせた。
ふーーーーーーっ…
「…別に命の危険があったから怒ってるんじゃない」
「ではなぜ…」
「「「…」」」
「謝る相手が違うって言ってんだよ鈍感野郎」
ぎゅ…ベシッ!
今まで目に後悔と懺悔を抱えていたギルは、自身の過ちに気付き猛省した…それはヴァラックら冒険者を蔑める様な発言…そして何より守るべき民に対しての謝罪よりも先にヴァラックに頭を下げた事。
ギルは目の前が見えていなかったと、罪に苛まれた自身の愚かさを再認識したのだった。
「イッ…つぅ…」
ぱっぱっぱっ…
「まぁお前の気持ちも分からんでもない…だがその気持ちをぶつけるのは私じゃない」
だろ?
ヴァラックは涙を堪えるギルの体に付いた砂埃を払い、肩を叩き目を醒させた。
ギルの瞳に光が宿り、今にも村民の元へ謝罪に行こうと、ソワソワし出した…そんな様子にヴァラックは優しく目を細め背中を押してやった。
「許して貰えないかもしれん…そしてその罪の意識から逃れられないだろう」
「はい」
ぎゅっ…
「それでいい、乗り越えろ」
ばんっ!
「っー…!ハッ!!」
ギルは涙を浮かべヴァラックに感謝した、「ああなんて優しいお人なのだろう」…と、今まで静かに見守っていた仮面の猫獣人はギルの体を支えて立ち上がらせる。
仮面の猫獣人はヴァラックに立ち直り、驚いた顔を見せた。
「なんだ?」
「…意外です、貴女にそんな善性があったなんて」
「失礼なヤツだな本当……あ?お前どこかで…」
しゅる…
仮面の猫獣人の疑問にウンザリしながらも軽くあしらい、ヴァラックは髪を手櫛しながら脳裏に浮かんだ知らない光景に「?」を頭の上に浮かべた。
訪ねようと顔を向けたヴァラックに、仮面の猫獣人は"するり"と体を差し込み、ヴァラックの顎を両手で掴んだ。
ぎゅ
「不本意ながら、また近いうちに会う時が来ますよ」
びく…
「っ…」
「では失礼致します、政治初心者のギル様のサポートをさせて頂くので」
「…それも執事の仕事か?」
「ええ…」、その一言を最後にヴァラックらの元を離れた仮面の猫獣人は、ギルの後を追い静かな街並みに消えていった。
ヴァラックは尻についた砂埃を払いながら立ち上がり、背伸びをした。
「チッ…!…細い男が私より強いとか…最悪っ」
ゲシゲシッ…
「!?」
…エミはあのヴァラックが少し恥ずかしそうにする姿に、カッコいいヴァラックさんの可愛い所を知れた嬉しさと、ライバル(?)の登場に顔を驚愕させた。
そんなエミは梅雨知らずと、ヴァラックは首を傾げた。
「んで、『アンス』って何だ」
「「今更!?」」
こんばんは!
第十一話をご覧頂きまして本当にありがとうございます!
いつもご覧になっていただきありがとうございます!
私昨日の夢に「2度目のラグナロク」のmmdが出てきて「テレキャスター○ーボーイ」をまだ出てないキャラが踊ってました、夢でも嬉しい…最高の夢だった…




