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炎上

レイス亜種は俺とマミに念力で持ち上げた山程の座席を投げ付けてきた!

スキルが2つしかないから2択なワケだが・・ここは攻めるっ!


「パワースラッシュ!!」


以前より精度の上がってる切断技で銅の剣を振るい、俺に向かってにきた座席を両断して左右に退けたっ。


「『テツオシールド』っ!」


マミは俺の後ろに隠れて避けたっ。なんだテツオシールドって!

当たりはしなかったが、相当な力で投げ付けられた大量の座席は俺達が駆け抜けた聖堂の中央から入り口付近をめちゃくちゃにブッ壊したようだ。

後退すると足場が酷いことになってるっ。でもって座席攻撃のお次は、


「ガァウッ!!」


ブラックドック亜種の噛み付き突進! ただ犬じゃないからまともに直撃すると俺のハードレザーくらいなら下手すると骨まで行くっ!

これに俺の後ろからヒョイっと飛び出したマミが対応した!

どうするつもりだ? と思ったら『毒針を構えて真っ直ぐ突進する』だけだった! コラっ、雑かっ!


「ガァッ!!!」


当然直撃コースで喰らったが、マミは充填満タンの亀の腕輪が衝撃音と共に腕輪が輝き、


「ギャンっ?!」


歯の欠けたブラックドック亜種は仰け反った! 自称針使いのマミはこの隙を逃さないっ。


「そこっ!」


鋭い突きを正確にブラックドックの胸に打ち込み、心臓に毒を注ぎ込むっ! 実体のハッキリしたブラックドック亜種は毒まみれにされて一撃で絶命したっ。

死ぬと焼け焦げた大型犬の骨になった。やっぱ焼かれた猟犬の身体をベースにしていたようだ。死んでまで人間の争いに翻弄されて、ついてなかったな・・


「ジャアァァーーーッッ!!!」


感傷に浸ってる場合じゃなかったっ。血も凍るような声で叫ぶレイス亜種! ギルドから耐性アクセサリー借りてなかったら、意識が飛びかけてたかも知れないっ。

だが! いけるっ! マミを追い越していた俺は一気に間合いを詰め、対応してスキルがないから速さと手数優先で通常攻撃の連打をレイス亜種に斬り込む! 加速に加え、まだ聖水の効果は有効だっ。

飛び上がって遠距離攻撃しだしたら面倒だっ、一気に押す!


「おりゃーっ!!」


どこからともなく取り出した歪な大鎌で受けに回るレイス亜種っ! そうしている間にマミの体勢が整った。毒針の効果は微妙そう死霊に対しては、


「『サンダーアロー』っ!」


雷魔法を放つマミ! 魔法使いっぽいっ!


「ひぃぃっっ」


電撃を喰らって苦しむレイス亜種は苦し紛れに大鎌を振るってきたが、不正確な上に大振りだっ、俺はなんなく銅の盾で弾いて掻い潜り、


「パワースラッシュっ!」


袈裟懸けに両断した!!


「ああ・・神よ・・不正義が、まかり通るのですか・・」


消えゆくレイス亜種。


「郷長の罪は私達が暴きます。手紙は書斎ですね?」


「そうですか・・頼み、ました・・」


最後に一瞬、生前の姿を取り戻し、少し膨らんだ腹部を撫で、寄り添ってきた犬のような影と共に、レイス亜種は消滅した。

同時に、ピューっ! と、天窓の方から指笛の音がし、途端っ、爆発音と共に聖堂に熱気が伝わりだした!


「さぁこっからなんよっ、テツオ! どうしました? 無口ですねっ?」


「感電っ、だよ! なんで、雷チョイスだ、よっ?」


感電したレイス亜種に触れて俺もしっかり感電していて、必死でポーションを飲んでいた。


「あ、ごめ~ん。でも速くしないとクィック掛け直しですよっ?!」


「ぷはっ、わかってる! 書斎だっ」


アッチが入手した見取り図は把握済み! 俺達は加速したまま、さらなる熱気と煙が充満しだした聖堂から内務スペースへと走った。



そっから3分経ってないと思う!


「アイアンシェルっ!!」


「あっちぃ~んよっ!」


こんがり焦げ気味の俺達は凍結魔法を凍らせて守った手紙の入った木箱を抱えて井戸跡側の壁を盾でぶち破って外へ飛びだしたっ!


「2人ともっ!」


「おいっ、ポーション桶に入れろっ、ケチるなっ!」


即、待ち構えていたアッチと自警団がケアに当たってくれた。『桶』でポーション被ったの初めてだぜ・・


「だぁ~っ、げほげほっ! 地味にガスが一番ヤバかったっ!」


「久し振りに魔法連発して気持ち悪いんよ・・うっ」


俺達が後ろで炎上しまくる教会に軽くビビりつつ、ヒーヒー言いながら木箱をアッチに渡していると、


「そこまでですよ?」


郷長がゴロツキ達を引き連れて現れた!


「自警団ごと『火事に巻き込まれて死んでしまう』とは・・貴方達の無用なお節介で返って酷くなりましたよ?」


「上等だっ! ナリテェ郷自警団の底力っ、見せてやるぜっ!!」


ここから自警団とゴロツキ達で乱戦になったっ。


「ふぅ~っ、よし! アッチっ、手紙キープ頼むっ」


「了解!」


「マミっ! フォローに回るぞっ?!」


「んん、まだ無理ぃ~っっ」


「え?」


マミはまだヘバっている!


「あー・・そう言えば魔法使いだったな」


同じ前衛職ぐらいのノリになってたっ。


「わかった! 自分の身は守ってくれよ?」


「勿論です・・」


マミの気持ちは折れていないのを確認し、俺は迷わずゴロツキのリーダー格に向かって突進した。

数は自警団が勝っていたが、装備と殺し合いに対する意識の違いでゴロツキ達の方が有利だった。郷長はゴロツキ達の後方に隠れている上に1人護衛に付いてすぐどうこうできないっ。

調子こいて前衛で暴れてる頭を仕止めるぜ!

俺はゴロツキの手下達を盾で殴り、蹴っ飛ばし、避け、柄頭で殴って退け、ゴロツキのリーダー格の前に飛び出した。


「状況と俺の技量的に手加減できねーぞっ?!」


「ぬかしやがれっ!」


相手の武器は粗悪そうな両手持ちの蛮刀だ。粗悪でも鉄製で俺の銅の剣や盾より上っ! どれくらい上かっていうと・・


パキンっ!


こっちの攻撃を受けられただけで俺の銅の剣がポッキリ折れちまった!


「ハッ! 貧乏冒険者がっ」


蛮刀をブン回すリーダー格っ! ヘッタクソだが力はあるなっ。


「確かに貧乏だが、俺が鋼を愛し、鋼に愛された者だということをお前はわかっていない」


「ああ?」


「もう1度だけ言うが、俺、手加減できる程強くねーぞ? 自首しとけ」


クドいが、マミと違って対人戦に抵抗がある方なので言ってみたが、余計怒らせただけだった。


「っ! ハッタリかましてっ」


「パワースラッシュ」


俺は鋼のロンデルで、『鋼』を感じ、鋼が導くままにこれまでで一番速く柔らかな太刀筋で抜き打ちのパワースラッシュを放ち、リーダー格と交錯した。


「あっ?! あっ、ああああ・・・」


リーダー格は蛮刀ごと両断されて上半身と下半身が別々に倒れていった。


「だから言ったんだよ」


俺は血溜まりに言ってやった。


「おっ、お頭ぁーっ??!!!」


手下達は一気に腰が引け、あっという間に郷長もろとも自警団によって捕えられた。


「私にこんなことをしてただで済むと思うなっ! 私は領主の親類、ごぉっ?!」


縛り上げられた郷長は後ろから投げられた細目の衛兵の剣で背から胸まで貫かれっ、絶命した!


「郷長殿は恥じて自決されました」


衛兵は面倒そうに歩み寄ってきたが、その後ろには他の衛兵がいつの間にか7名も続いていた。潜んでやがったか!

俺達は思わず身構えたが、


「おっと、違いますよ? これ以上は暴動が起きますし、ギルドと事を構えたりはしませんよ? 事態処理を引き継ぎます。報酬も上乗せしてこちらで払いましょう」


益々面倒がられただけだったが、自警団団長が進み出てきた、


「シスターの名誉も回復してやってほしい!」


アッチ調べでは団長は子供の頃、シスターに懐いてたっぽい。


「墓と現在の教会の改築くらいは。ただ、彼女の名誉までは難しいのでは? 経緯は知りませんが、行動によって結果が生じる物ですよ」


「そちらが余計なことしなければ拗れなかったんじゃないですかぁ?」


体力が戻ったらしいマミは毒針を+0,5を掌で回転させだしていた。


「それもまた、行動による結果ですよ。領主様も献金から脚がでる損を被ることになりましたから・・」


細目野郎は芝居掛かって肩を竦めてみせるのだった。



グランオニオンに戻った俺、マミ、アッチはヨイヨイさんの奢りで、兎溜まりでグイグイとエールを飲んでいた。


「なんかスッキリしないなぁ」


「なんなんよ、あの細目っ!」


「衛兵とか言ってたけど、アイツ、領騎士団所属だと思う! 今度調べとくよっ」


「まぁ今回はちょっとギルドも後手に回っちゃったからね? ほら飲んで飲んで! 経費で落ちちゃうよ~? あっすいませーん、こっちローストビーフとエールお代わりお願いしまーす」


ワーバニー店員に追加注文するヨイヨイさん。


「あの郷、今後も郷長一族が引き継ぐんですかぁ?」


「いやさすがに無理よ? 息子は領内の別地域で木っ端役人の職でも宛がわれてお茶を濁すことになると思う。それでも次の郷長も領主の親類だろうけど!」


「ほんとなんだかなぁ」


「コネ、最強過ぎだわ・・」


「まぁ飲んで飲んで! 飲んで呑まれての冒険者稼業よっ! なんてね!」


結局、今日はぐでんぐでんになるまでヨイヨイさんに飲まされた俺達だった。

だが、ついに突っ伏した兎溜まりのテーブルで俺は足元に柔らかな人懐っこい犬の気配と、耳元に廃棄教会で少し嗅いだ香の匂いと女性の匂いを感じた。


「・・ありがとうございました」


俺の都合のいい妄想かもしれない。だが、その2つの気配は優しく、哀しみも無く、安らかなどこかへと改めて去って行った気がした。

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