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教会

廃棄教会は20年前にシスターが郷長(ごうちょう)の飼っていた猟犬に噛み殺されたのを機会に閉鎖され、そのまま使われなくなった教会だった。

今は、郷の正反対の位置に立てられた簡素な仮設教会がそのままこの郷の教会として定着してしまっている。

郷民には不評だったが、郷長の命なのと立派に建て替える為に税等を徴収されたくないので無理押しが通っている状況だ。

討伐対象のレイスは死亡したその夜から目撃されていたシスターのゴーストが長年放置され、2年程前にゴーストからより凶悪なレイスに進化してしまったらしい。

ブラックドックの方はシスターを噛み殺した後、自警団に弓で射殺された猟犬がシスターに呪われた物じゃないか? と噂されるが詳細不明だった。

今回、レイスとブラックドックが封じた教会から出てしまいそうになってきて郷長は渋々ギルドに依頼してきたが、退治後は即座に教会を焼き払う準備をしている上に、ゴロツキの類いを雇ったりしていてかなり怪しい動きをしていた。


「あたしの調べでは、はむはむ」


やや時間は遅くなってるがポー亭の『メルメル鶏ランチセット』を食べているアッチ。俺達も同じ物を頼んでいた。メルメル鶏は真っ赤なクランベリージャムのソースが掛かっている。


「シスターは郷長と不倫してた」


「お?」


「でしょうね。破綻の理由は?」


「ずっと身籠らなかったが奥さんが身籠ったから」


「うわぁ」


キツいな。


「でもシスターも妊娠していたと教会関係者や郷の医師から突き止めてる!」


「・・最低な話になりそうですね」


「自警団は射殺した猟犬から薬物臭がしたと証言していたけど、犬は番所の衛兵がすぐに焼却してしまってる」


おいおい。


「衛兵もグルなのかよ?」


「ここの番所に5年交代で1人衛兵派遣されてるけど、全員領主の血縁で、郷長の家系も領主家の遠縁」


「待って、クエスト内容の協力者の項に衛兵1名、ってありましたけど?」


「20年掛けても揉み消せずギルドが出張ることになったから、協力する側に回ることにしたみたい。引き替えに猟犬の焼却なんか派遣した衛兵のやらかしや郷長家の領主家への献金なんかはスルーする、ってギルドと話がついてるっぽい」


「私達は何も聞いてませんがっ?」


「教会を焼くとかゴロツキ云々は?」


「シスターは郷長と手紙のやり取りをよくしていた。手紙はシスターの自宅から発見されていない。そして事件後、入れなくなった教会にはシスターの書斎がある。他にも不都合な物も出かねないし、纏めて燃すつもりなんだよ」


フォークでマッシュポテトの山をつつくアッチ。


「ゴロツキは今、郷に詰めてる衛兵は非協力的なのと事件以降、自警団とも確執がある。手駒が必要になったんだと思う。ただ相当荒っぽい連中で、あたしも自警団に用心してもらって今日まで調査を続けるの大変だったんだよ」


「先にそっちから始末つけたいくらいですね!」


「教会のレイスとブラックドックを倒して手紙を回収したらそれで済みそうか?」


嫌な予感しかしないがっ。


「最初はそれでも始末がつくかと思ってたけど、昨日ゴロツキ達が油壺(あぶらつぼ)を倍々に郷長の館に運び込んでた。中の様子は教会の天窓から見えるから、連中、2人がアンデッドにされたシスターと犬を始末次第、教会ごと2人を燃すつもりだよ!」


「えーっ?」


「ダメじゃないですかーっ?!」


「でも大丈夫っ! このアッチ・トーチテイルの圧倒的調査力でっ、もう活路は開けてるよ? ゲスな真似するヤツにカマしてやらないとねっ!」


アッチはソースで血塗れのようなメルメル鶏にフォークをブッ刺した。



それから約2時間後、俺達は自警団の詰所に行ったり、衛兵の番所に行ったり、クエストを受けたのに依頼人をスルーするのも不自然過ぎるので郷長の館にもゆき、あれこれ段取りを踏み、封鎖された廃棄教会の前に来ていた。


「ではよろしく頼みました。廃棄教会に住み着いた悪しき死霊討伐後は即座にこの者達に教会を焼き浄めますので、離脱は御早めに。『事故』になるとよくないですからね」


郷長はにこやかに言ってくる。周囲にはそんないらんだろ、という大量の油壺を用意していた。


「・・・」


無の顔のマミ。


「ハハッ、火事は気を付けないとですね」


取り敢えず笑っとく俺。と、


「火事は確かに心配だ! 教会の井戸の跡近く壁は雑木林が近くなっているっ。そこは自警団とアッチさんが担当するぜっ、郷長!」


突然、自警団団長が言い出した。


「いきなりしゃしゃり出てくんじゃねぇつっ!」


これにゴロツキのリーダー格が気色ばんだが、郷長が片手を上げて制した。


「いいでしょう。あの面は窓も念入りに埋め潰されています。万一倒しそびれたモンスターが飛び出てくることもないでしょう」


「というワケだから2人、あとよろしく!」


アッチが軽めノリで言ってきた。


「おうっ、この対闇対精神アクセサリーもあるから安心だぁっ!」


「ホントですねーっ!」


2人とも結構な棒読みだが、わざわざポーチに入れていた『修道士の守り』と『修道女の守り』を見せてみせ、何も心配してしてない顔で張られていた板は外されていたが魔除けだらけの教会の正面入り口へと向かった。

チラっとずっと知らん顔している細目の衛兵に目を向けたが、引き続き知らん顔されただけだった。コイツは俺達がシスターの手紙を持って来ない限り『邪魔もしないが協力もしない』ってスタンスだ。コイツ~っっ。

俺とマミは後ろの連中に見えないように互いの背で隠して俺は左、マミは右腕に付けた対火耐性の『雨蛙の守り』を見せ合った。

アッチが自警団経由で急遽用意してくれた物だ。


「このクエスト、推奨レベル10って判定したギルドの担当者クビか降格すべきだよな」


「同意するんよっ」


俺達はボソボソ愚痴り、腹を括ると、2人で合わせて教会のドアを蹴破りっ、少しカビ臭いが香の匂いがまだ残ってる中に雪崩れ込んだ!


「刺殺する方の魔法使いっ! マミ・シューティングスターっ、見参っ!!!」


「内なる鋼の申し子っ! テツオ・ブラックウッドっ、追従っ!!!」


ギャラリー? がいることもあって派手目に名乗る俺達っ。と、後ろで蹴破って壊れたはずの扉が独りでに破片ごと集まって締まり、聖堂の壊れた神像の辺りで2つの大小の闇の魔力が渦巻いた。


「許さない許さない許さない許さないっ、この子までもっ!! 許さないっ!!!」


「ワォーーーンッ!!!」


渦は形を成しっ、女のレイス亜種と、猟犬型のブラックドック亜種の姿になったっ!!

俺とマミはポーチから出した聖水を被る。


「可哀想でもまずこの段を片付けるぜっ、マミ! 俺はシスター・・レイスをまず抑えるっ」


「合点承知ですっ、テツオ! 私はブラックドックを速やかに片付けますっ、クィックっ!!」


マミは自分と俺に加速魔法を掛け、レイスは念力で周囲の座席を多数浮き上がらせ、ブラックドックは牙を剥いて駆けだしたっ。

俺とマミも加速して突進を始めるっ!!

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