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出所

鋼の剣(はがねのつるぎ)』それは大半の戦士系冒険者の憧れの武器。

有識者はかく語る、


「鋼の剣を手に入れる辺りが一番面白いよなっ!」


初期の冒険の醍醐味、それが鋼の剣に集約されているんだろう。

俺もまた、鋼の剣の魅力に取り憑かれ、今日も武器屋のショーウィンドウにへばり付いていた。


「はぁはぁっ! 鋼の剣っ、俺の鋼っ!!」


「衛兵さんっ、またコイツですっ!」


「?!」


「またコイツかぁっ!!」


「違うっ、俺はただ俺の鋼を愛でに来ただけっ!」


「お前の鋼じゃねーよっ! 無駄な抵抗をするなっ。お前には黙秘と弁護人を雇う権利があるっ!!」


「俺の鋼ーっ!!」


こうして武器屋の主人にチクられた俺は衛兵に捕まってしまったのだった・・



装備を取られ、縞々の囚人服を着せられた俺は牢屋で呆然と膝を抱えていた。


「ふぅ」


溜め息をつく。故郷のブラックウッド村を出てから早2年。俺も今年で17歳だ。

戦士として冒険者ギルドに登録はしたものの、これといった特技もコネもコミュ力も無い俺はどのパーティーも長続きせず、ソロでちまちまと、うだつの上がらない日々を送っていた。

衛兵に取り上げられちまったが、俺の今の装備はハードレザーの鎧と甲羅の兜、銅の盾、銅の剣、鉄のダガー、クロスボウと矢、あとはあれこれ旅の荷物の入った丈夫なリュックと革のポーチだけだ。

冒険者活動を初めて2年でこれはそこそこ遅い。レベルも12で微妙。まぁスライム3体くらいなら素手で倒せるが7体くらいになってくると素手だとちょっと怪しい・・

魔法も使えないし、スキルも剣を思い切り振る『パワースラッシュ』と盾でガッチリ守る『アイアンシェル』のみ。

金も思うように稼げず馬小屋でばかり寝ているから牢屋の方がちょっと快適なくらいだ。ベッドあるし、取り敢えず粥くらいは食べ物出してくれるし。

年取って身体が利かなくなった冒険者が、牢屋に入りたくて道具屋でポーションとかをバレバレで万引きしたりする事件がチラホラあるがその気持ち、わかるぜ?

だからこそある日、たまたま中級者向けの武器屋で見掛けた鋼の剣の眩しさに俺はヤられちまった。

艶、鋭さ、冷たさ、機能性、値段の格っ! 完璧だっ。俺は取り憑かれていた。

ショボいクエストの合間に拠点にしているこのグランオニオンの街に戻る度に、ショーウィンドウに通うようになっていた。


「俺の鋼・・また、逢いたいな」


これはもう、恋といってもいいんじゃないだろうか? と、


「お困りのようですね」


「え?」


よく見ると、斜め前の牢屋に1人のモッサリした感じではあるが若い女がいた。俺と同じように縞々の囚人服を着せられている。誰かいるとは思っていたが、女とは気付かなかった。

女囚も同じフロアに入れてんのかよ? グランオニオンの衛兵隊、適当だな。


「貴方からは私と同じ憑かれた者の臭いがしますね」


「何っ?」


なんだ、まさか魔王教徒か?! 勧誘されてる??


「私もまた、孤高の道を歩むことに疲労と焦燥を感じていたところです。貴方、私と組みませんか?」


「お前・・魔王教徒かっ?!」


「違います。魔族なんかに萌えません」


萌える?


「私は・・毒針で、一撃で! モンスターを倒すことに魅いられし者ですっ。はぁはぁっ! 一定の冷却期間は耐えられんですが、そろそろ限界ですっ。刺して倒せるならなんでもいいんですっ!!」


「シリアルキラーじゃねーかっ!!!」


魔王教徒よりシンプルな悪に絡まれた!



・・というワケで3日後、引退間際のヨボヨボの領選(りょうせん)弁護人が(クドいが金は無い)最低限度の手続きを纏めてしてくれたおかげで、俺と毒針フェチの人は釈放された。


「2度と来るなよっ?!」


番兵に追い立てられて衛兵隊の番所の裏口から出てきた。

装備や荷物は返されていた。昼の外の日差しが眩しいぜ。


「これが、シャバの光か・・」


「お天道様は見て下さってるんですねぇ・・」


「というか、アンタ魔法使いだったんだな」


毒針フェチの人は腰の後ろの鞘に毒針を差してはいたが(なぜ隠し持つ??)、普通に魔法使いのローブにシルクハットに安そうな宝珠を取り付けたスティックといった格好だ。


「いえ、私は魔法使いである以前に針使い(はりつかい)です」


「なんだよ針使いって!」


そんな冒険者ジョブは無いってのっ。

俺が台詞と内心で2段構えでツッコんでいると、急に毒針フェチの女は、


「うっ」


苦し気に身を屈めた。


「おいっ? どうした?? 牢屋の粥に当たったか? 毒消し持ってるが、後で払ってくれるなら」


「刺したいんよ・・」


毒針フェチの女の呟きに、俺は素早く女かれ離れた。危ねっ、そういやシリアルキラーだったわっ!


「お前、落ち着け。早まるなよ? ちょっと街の外に出たらスライムとかケムシーノとか、いくらでもいるからな! 刺殺衝動と折り合いをつけろっ」


何言ってんだ俺?


「はぁはぁっ、間に、合わないっっ・・コールっ! ゴーレムっ!!」


毒針フェチの女は地面に魔方陣を描き、土のゴーレムを創造した!!


「おおっ?」


「はぁはぁっ、ゴーレムよ! 私達を攻撃しなさいっ。無抵抗の相手ではアガれないっ!!」


「上級者過ぎるだろっ?! というか私『達』ってやめろっ」


「ギギッ!!」


ゴーレムは忠実に俺達に攻撃を始めた! ぐぉおっ? 俺の貧弱装備とレベルでゴーレムはキツいぞっ?


「鋼の剣フェチの方! 引き付けて下さいっ。クィックっ!!」


毒針フェチの女は一方的に言って自分に加速魔法を掛け、素早く回避しつつ、ゴーレムの死角取ろうと立ち回り始めた!


「お前なっ、後で料金取るからなっ! お前の性癖だかんなっ?!」


俺は即死しそうなゴーレムの大振りの攻撃を避けつつ、リュックを捨て、銅の剣と盾を構えた。


「アイアンシェルっ!」


どうにか斜めに角度付けて岩を砕きそうな左のパンチを弾き、


「パワースラッシュっ!」


左腕を斬り落とし、俺は飛び退いた。

次の瞬間、腕を失ったゴーレムの左側面に加速した毒針フェチの女が飛び込み、毒針を脇腹に打ち込んだ!!


「ギッ?!」


素早く俺の近くに飛び退き、加速魔法の効果を切る毒針フェチの女!

ゴーレムは突かれた一点からヒビが拡がり、そこから毒気も軽く漏れだし、ゴーレムは全身を崩壊させて倒されたっ!


「荒ぶるモンスターよ、せめて、安らかに眠れ・・」


静かに呟き、毒針を器用に片手で旋回させ、腰の後ろの鞘にしまう毒針フェチの女っ。


「いやっ、自作自演だろうがっ! ゴーレムさんに謝れっ」


「デヘヘ、いや~っ、でもスッキリしましたぁ」


血色良くなっている毒針フェチの女。ここで、


「なんの騒ぎだぁっ?! またお前らかぁーっ?!」


牢の番兵が来ちまった。


「ヤベっ、逃げるぞっ?!」


俺達は慌てて逃げ出したっ。なんでだよ?!  くっそぉ~っ。


「というか、牢屋で3日もお風呂に入ってないんで風呂屋に行きませんか? 付き合ってくれたお礼に奢りますよ? あ、男女別のとこですよっ?! そういうお店じゃないですからっ、ごめんなさい」


「なんで俺がちょっとフラれたみたいになってんだよっ?!」


「へへっ、鋼の剣フェチの方はお名前なんて言うんです? 私はマミ・シューティングスターです。今年で17歳ですね。世を忍ぶ仮の職業である魔法使いとしてのレベルは12です。マミでいいですよ?」


どうしもんか? だが名乗らないってのもな、


「・・俺はテツオ・ブラックウッド。戦士でレベル12、俺も今年で17だ。テツオでいい。俺は、鋼の剣をやがて買う男だっ!」


言ってやった。


「へへっ、よろしくですテツオ」


「・・取り敢えず、風呂にはゆくが、パーティーを組むか否かは決めてないからなっ? マミ!」


「ヘヘヘっ、ミント湯行きましょうか?」


「洗濯場のあるところならどこでも・・」


よくわからないが、とにかく俺達は手近なミント湯へと走っていったのだった!

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