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食堂娘の神様革命  作者: 春樹
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講義

「この間の掃除機の!」

「はは……今日はよろしくお願いします」


 なんで午後の授業で一緒になってしまうのだろうか。

 フラグか?これがフラグってやつなのか??


 昼休憩が終わり、午後の授業はこの国で採取される薬草など……かつての理科の授業のようなものだった。

 机上のものではなく、この授業の講師は割と校内に栽培されている薬草や野菜など、実物を見せてくれることも多く、数日に一度は今日みたいに外に生徒を集めて授業を行う。

 かつての学校教育と異なるのは、授業の時間単位で講義は午前と午後の二つに分かれ、一通りの説明が終われば課題を提出して、提出したものが合格点を貰えれば終了していい仕組みだ。

 あまりに緩く、お貴族様だからか?とも思ったが、逆にルオンはこの仕組みがしんどいらしい。課題の終わらせ方の加減が分からないらしい。

 大学とかの徹夜をしてこなしたものと比べたらかなりシンプルな提出物でも十分及第点をもらえているのだが、やり慣れていない人間からすると答えが複数あるものはつらいのかもしれない。


 社会人になりたての頃、会社から仕事を振られて説明が足りなかった時とそれで評価されるのが分かってた時はは辛かったもんなぁ…ちょっと違うかな。


 幼馴染を見捨てるつもりもないため、いつも提出課題の時は一緒にペアを組んであれこれと声を掛けながら取り組んでいた。

 根は素直なのと、幼い頃から仕事の手伝いもしていたので彼女の頭の回転は悪くない。他の下級市民の人より最近は少し早く提出ができるようになってきていた。


 さぁ、今日もルオンと組みますかと思っていた矢先だ。

 この講師の授業、嫌いじゃないんだけれど突拍子もないことがある。他の講師たちの四角定規な感じと比較するとちょっと、いや、かなり変わっている。


「今日の授業は先に送っている絵の植物を全てサンプルケースに回収してきてください。敷地内で全て確認できますが、栽培しておらず自然に生えているものもあります。薬草になるので、薬効に関しても確認しながら行ってください」


 ここまではまぁ、前にもあったので前回ほど皆も動揺することなく先生からガラスのような素材の格子に区切られた空ケースを順番に受け取る。

 すべて埋まれば標本のような見た目になりそうだ。


「じゃ、順番に籤を配布します。同じ記号の人でペアを組んでください」


 全員の心が「は?」という言葉で一致した。

 そして最初に戻るわけである。


「今日はよろしくお願いします」

「いえいえ、こちらこそ」


 背中にぶすぶす刺さる視線が痛い。

 わかってる、わかってるって。なんでお前が彼女と組んでるんだって言いたいんでしょ?変わってくれるなら変わってほしいし、こんなことになるなんて誰も思っちゃいなかっただろうと心の中で悪態を吐くしかない。

 これがルオンなら平気で愚痴を言っているが、困ったことに目の前にいるのはなぜかめちゃくちゃ笑顔で嬉しそうな聖女様だ。

 チェンジで、なんて間違えて言ってみろ。視線だけで済んでいる背中の痛みが、本気で陰で何をされるか分からないことになるぞ。


「ごめんなさい、ペアだって言われたんだけれどどうしても彼が護衛についていないといけなくて」


 しかも護衛のイケメンのおまけつき。

 男の視線が多かった中に、女の妬みの視線も感じているのはこれが原因だ。


「そばにはいるが講義中に基本的に口を出すことはない。そのように扱ってくれ」

「かしこまりました」


 彼女がどう願おうと、彼よりこちらが身分下なのは間違いないので頭を下げるしかない。

 とにもかくにも、いつもなら時間の許す限り色んなものを見て歩くのだけれど、今回の講義の目標は迅速・最短・速攻で、だ。


 誰かが一緒にいる以上はまず出てくることがないクリアのいるプレートをタッチし、配布された薬草の絵を確認する。

 おおむね前の講義で時間が余って回った際に見掛けたことのあるものばかりだ。

 草というより、花の咲くものが多かったのが幸いした。大体場所を覚えている。


「おおむね採取できる場所はわか……わかりますけれどどうします?」

「敬語はなしで結構です」

「じゃあ、この講義の間だけ一緒に授業を受けるってことで遠慮なく。大体私場所分かるけれど、どうする?」


 大きく凄い、と胸の前に腕を組んだ聖女様は弾むように肯きながら教えてほしいと食いついてきた。

 意外だったのは、何故かエンヴィーの表情だ。

 何も気にせず砕けた私の態度に驚いたらしいが、嫌悪感で見てきている様子はない。口を出すつもりはないのは本当らしい。


 心配そうに他の子と組まされたルオンが見えたが、まぁなんとかなるさ。

 ルオンも顔見知りで何度か話していることがあるのを見たことがある子とペアだったようなので、それも安心だ。


「じゃ、いこうか」

「ええ!」


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