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「火星の剣」と呼ばれたエースパイロット、突撃して死んだと思ったら機動兵器ごと異世界に転生してた件  作者: 天宮暁


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47 手も足も

 メビウスマターを圧縮して造った超硬度の金属・メビウス鋼の弾丸が、音より早く空を駆ける。


『それで不意を打ったつもりか?』


 マギウスのビームフィールドがわずかに揺らめいた。

 が、それだけだ。

 火星の誇る特殊弾が一瞬にして蒸発させられた。


『わが話を聞かぬか、原始人』


「てめえの暇な老人みてえな語りに付き合ってられるかっ!」


 今度はミドルレンジビームザッパーを構え、発射する。

 フィールドの表面が一瞬だけ変色し、元に戻った。

 弾かれたのですらない。エネルギーを吸収されたようだった。


『なかなかの出力だが、それでどうするつもりかね?』


「おい、クシナダ! なんかあいつに弱点はねえか!?」


『無茶ぶりしないでください。探ってますが、そう簡単には見つかりません。』


 マギウスの言葉を無視して聞いた俺に、クシナダが冷たくそう言った。


「ちっ……じゃあ、これならどうだ!?」


 俺はビームザッパーをフィールドの一点に集中的に連射する。

 その箇所が赤く変色した。

 だが、このままではすぐに戻る。


「まだまだっ!」


 赤熱した部分にレールキャノンを一射する。

 メビウス鋼弾が食い込んだ――気がしたが、一瞬だけのことだった。

 フィールドが黄色に戻ると同時に、メビウス鋼弾も蒸発する。


「くそっ! ダメか!」


『……終わりか? ならばこちらから行くぞ』


 マギウスの肩から生えた無数の触手がうごめいた。

 触手の先端が一斉に割れる。

 そこから現れたのは、


「ミサイルかっ!?」


 触手から無数のミサイルが溢れ出す。

 ミサイルはビームフィールドをすり抜け、押し包むようにツルギに迫る。


「クシナダ! 迎撃は任せる!」


『ラジャー。』


 いくら俺が改良人間だとはいえ、さばける数には限界がある。


 火器管制をクシナダに任せ、俺は回避行動に集中する。


 クシナダのコントロールでツルギの右腕が動き、ビームザッパーを連射する。

 ビームは迫りくるミサイルの群れに突き刺さり――

 吹き散らされた。


「お、おい!」


『高度なアンチビームコーティングのようです。ビームフィールドをすり抜けたのもそのせいでしょう。実体弾のほうがよさそうですね。』


 俺は一瞬焦ったが、クシナダはさすがに落ち着いてる。

 クシナダは迎撃をレールキャノンに切り替えた。


 今度は墜とせた――狙ったうちの半分くらいは。


「何やってる!」


『あのミサイルにはかなり高度な回避アルゴリズムが積まれてます。レーダーではなく画像認識でしょう。レーダーではビームフィールドと干渉しますからね。よく考えているものです。』


「感心してる場合かっ!」


 俺は操縦桿を操作し、間近に迫ったミサイルの群れをかいくぐる。

 目標を外れたミサイルが俺の近くで自爆した。

 勘まかせの機動とエッジドビームシールドで、爆風をなんとか凌ぎきる。


『いつも思うのですが、あんなものをよくかわせますね。』


「今さら感心してねえで、爆煙を煙幕にして攻撃してみろ!」


『ラジャー。』


 俺の指示でクシナダがレールキャノンを連射する。

 そのあいだに俺は爆煙を逃れ、マギウスへの視界を確保した。

 そこに、ミサイルの第二波が飛んできた。


「うおおおおっ!?」


 俺は根性で弾幕をかわす。

 クシナダの迎撃はさっき以上に当たらない。


『私の力不足です。マギウスのAIのほうが学習能力が高いようですね。』


「マジでやべえな」


 逃げ惑うツルギに、マギウスが言った。


『どうした。手も足も出ないようだが?』


「うるせえ。手も足もねえやつがいばるな!」


『我は状況に合わせて効率的な形態を選択したにすぎぬ。おまえがこんなに弱いと知っていれば、資源を他に回しただろうがな』


 悔しいが、マギウスの言う通りだ。

 この巨大兵器は、ツルギに対して過剰戦力もいいとこだ。

 こっちの攻撃を封殺するビームフィールドに加え、高度な誘導性とアンチビームコーティングを持つ無数のミサイル。

 ミサイルを落とすには実体弾が必要だが、メビウス鋼弾の在庫には限りがある。

 その上、学習能力でもこっちのAIを上回ってる。

 ミサイルの誘導性能は、時間とともに増していく。


「セイヤさま! 逃げましょう!」


 背後からエスティカが言ってくる。

 俺は、一瞬考えてから、


「……だな。逃げるか」


 エスティカの提案にうなずいた。


「えっ、本当に逃げるのですか?」


「おい、おまえが言ったんだろ」


「いえ、その……セイヤさまなら『どうにかする』とおっしゃるものとばかり」


「期待に添えず申し訳ないが、どうにもならなそうだ。致命的な損害を受けないうちにいったん逃げる!」


『素直に逃がしてくれるでしょうか?』


 クシナダがそう言いながら、飛来するミサイルを迎撃する。


 ……いや、迎撃しようとしてる、だな。


 迎撃の成功率はもはや三割を切っていた。

 迎撃できなかったものは俺がなんとかして避けるしかない。


 だが、


「ぐっ、アルゴリズムが変わってるぞ!」


 ミサイルがツルギの周囲で自爆する。

 どうせ避けられるならその前に自爆する。

 いやらしい方針変更だ。


「これは……キツいな!」


 大ダメージは受けないが、装甲が着実に削られる。

 回避運動とビームシールドにエネルギーを持っていかれ、キャパシタのエネルギー残量が急速に減っていく。


「逃げるにも一発ぶちかまさなくちゃどうしようもねえか! だがどうやって……そうだ!」


 俺は首だけで振り返り、エスティカに言う。


「――リミッターの秘術を解除して、メビウスマターを暴走させろ!」

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