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「火星の剣」と呼ばれたエースパイロット、突撃して死んだと思ったら機動兵器ごと異世界に転生してた件  作者: 天宮暁


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34 精神波

「約束は守ってくれるよな?」


「むろんじゃ。マギウスの討滅、戦後に神聖巫覡帝国の国体を維持すること、おぬしが火星とやらへ帰還する手伝い、じゃったな」


 ひと暴れしてすっきりしたのか、魔王はゴネることもなくうなずいた。


「ああ。でも、マギウスの討滅には、俺もツルギで参加する」


「さようか。おぬしがいれば心強い。マジェスティックとティアマト、ツルギの三機がかりで臨めばなんとでもなろう」


「……だと、いいけどな」


「なんじゃ、気がかりでもあるのか?」


「俺とツルギがこの星に出現したのと、マギウスが帝国を乗っ取ったタイミングが重なってるってのがな。結局、俺とツルギがこの星に飛ばされた原因については何もわかってねえし」


「ふむ。それもマギウスがからんでおると?」


「可能性だけどな」


 そこで、俺はふと思い出す。


「そういや、魔王は俺とツルギが出現した時に何か異常を感じたんだったよな? それで斥候部隊を差し向けた」


「おお、そのことか。って、待てい。魔王などと呼ばず、朕のことは名前で呼ぶのだ」


「ええっ!」


 魔王の背後で、リリスが驚く。


「魔王陛下が他人に名前で呼ぶことをお許しになるとは」


「セイヤは朕に一敗地を味あわせたおのこ(・・・)ぞ。当然であろう」


「はぁ、そうですね。今夜は大変なことになりそうです……」


 なにやら謎めいたことをリリスがつぶやく。


「ええと、じゃあ、レヴァメゼク……だったな」


「呼びにくかろ。レヴィでよいぞ」


「魔王陛下が他人にニックネームで(以下略)!?」


「じゃあレヴィ」


 とりあえず、リリスを無視して俺は聞く。


「俺とツルギが出現した時のことを教えてくれ」


 って、これを賭けの条件に入れておくべきだったな。


 だが、魔王――レヴィはあっさり答えた。


「うむ。そうさの、セイヤほどのパイロットならばわかるやもしれぬ。戦いの最中に、敵の感情や考えてることがパッと浮かんでくることがないかの?」


「ある。というより、さっきもあった」


 だからこそ、マジェスティックの動きを読みきって、正しいタイミングで対艦刀を使えたのだ。

 もし少しでもタイミングがズレてたら、間に合わず炎の剣を食らってた。

 ツルギの装甲にはアンチビームコーティングが施されてはいるものの、それが魔法で生み出された炎の剣に有効かどうかは疑問だな。


「おお、やはりか。セイヤは、反応が人間離れしておるのももちろんじゃが、こちらの動きを先読みしておるようにも見えたのじゃ」


「レヴィにもわかるのか?」


 精神波で他人の動きや思考を読む――言うだけなら簡単だが、これを実戦の中で使える奴は限られる。

 火星のパイロットの中では、精神波を自在に読めるのは俺だけだった。

 他には数人のパイロットが相手によっては読めるといったレベルにすぎない。


「たまに、であるがな。命がかかってる時ほど働きやすいの。狙って再現するのは難しいのじゃが、強敵が相手であればそれなりの精度で読むことができる」


 それが本当なら、火星の他のパイロットよりも優秀だってことになる。


「ああ、なるほど。それで命を賭けろって言ってたのか。単なる戦闘狂かと思ったよ」


「ふん、それも間違っておらぬ。朕は血の滾る戦いがしたいのじゃ。その結果死のうともかまわぬと思っておる」


「どうせ転生するからか?」


 エスティカが魔王は転生すると言ってたからな。


「そこは、秘密じゃ」


 レヴィが指を振ってそう答える。


「とにかく、戦いの時のアレじゃよ、アレ。おぬしとツルギが現れたとおぼしい瞬間に、朕はきわめて強力なアレを感じたのじゃ。あの時のアレも、アレにはちがいないのじゃが、一個の人間が発せられる規模のアレではなかった。爆発のようなアレじゃった」


「アレアレわかりにきーよ。俺たちは精神波って呼んでる」


 エースパイロットにはありがちだが、レヴィは言語ではなく感覚で物事を捉えるタイプみたいだな。


「精神波か。言い得て妙じゃの」


「俺とツルギが飛ばされたのは精神波がらみの現象だったってことか……」


 メビウスマターか魔法がらみじゃないかと思ってたんだが、そっちとはな。


「それ以上のことは皆目わからぬ。魔国の伝承にもそのような現象はなかったはずじゃ。……答えになっておるかはわからぬが、これ以上のことは言いようがない」


「まあ、ヒントにはなったよ」


 わけのわからん現象がわけのわからん現象によって起きたってことがわかっただけのような気もするが、一歩前進と受け止めておこう。

 終わりの見えない戦争の中では、小さな前進に光明を見出し、希望をなくさないことも重要なのだ。


「さて、セイヤたちも疲れたであろう。湯殿を用意させておる。ゆっくり浸かって疲れを癒すとよい」


「おっ、風呂か。ありがたい」


 パイロットスーツの内部では、バイオマシンによる物質循環が行われてる。

 だから、風呂に入らなくても、衛生状態に問題はない。


 だが、気持ちの問題として、やっぱり風呂には浸かりたい。

 キリナには、「日本人の血ね」と笑われたものだ。


 というわけで、すっかり態度が軟化した魔王から歓待を受け、その夜は要塞の中に部屋を借りて、ベッドの上で眠れることになったのだった。

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