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「火星の剣」と呼ばれたエースパイロット、突撃して死んだと思ったら機動兵器ごと異世界に転生してた件  作者: 天宮暁


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09 不明VS不明(2)

「……めんどうだな。どこまでやっていいんだ?」


 こいつらを撃ち殺すのは簡単だ。

 あの鉄兜が実は強固な防弾装備ででもない限りは。

 いや、仮にそうだったとしても、身のこなしを見る限り苦戦するような相手じゃない。

 俺が火星の重力強化コロニーで仕込まれたのは、何もメビウスアクチュエータの操縦技能ばかりではないからな。


「おい、お姫様! あいつらをやっちまっていいのか?」


 一応聞いてみるが、腕の中のお姫様は疑わしそうに俺の顔を見てるだけだ。

 いや、俺のヘルメットを、か。


 しまった。ミラー処理されてるから外からは顔が見えないんだったな。


 俺は首元のボタンを押してヘルメットのバイザーを上に開ける。


 ……謎惑星の大気なんて、安全とわかってても吸いたくなかったんだけどな。


 だが、見ず知らずのヘルメット男に助けられて、素直に感謝できる女なんていないだろう。


「おい、助けてやる。どこまでやっていい?」


 目と目を合わせ、お姫様に訊く。

 お姫様は俺の目をじっと覗きこんでくる。


 ……綺麗な目だ。

 まつ毛も長くて……やっぱりあいつによく似てる。


 お姫様は、ためらっているようだ。


「つまり……捕まりたくはないが、やっちまうのもよくねえってことだな?」


 俺は、精神波を強く出すよう意識しながら、お姫様に重ねて訊く。


 お姫様はちょっとびっくりした顔をしてからうなずいた。


 俺は、騎士連中から距離を取り、お姫様を地面に下ろす。


「隠れててくれ」


 お姫様がこくりとうなずく。

 今回は精神波を使わなかったが、なんとか意味は通じたようだ。


 俺は踵を返し、騎士たちに向き直る。


 その瞬間、後衛の騎士から火の玉が飛んできた。


「遅えよ!」


 銃弾に比べれば、弾速は緩やかだ。

 俺は火の玉の軌道を見切り、余裕を持ってそれをかわす。


 そこに、今度は雷が襲ってくる。


 雷のほうは弾速が速い。

 閃光が走って、その直後にその上を稲妻が走る。

 ビームライフルに近いが、稲光が予告になってしまうのが弱点だな。

 見てから避けるには十分だ。

 これがビームやレーザーなら、撃たれる前に狙いを察知する必要があり、感情波を知覚しないと避けられないのだが。


 ともあれ、俺は身をひねって雷をかわす。


「飛び道具があるのはそっちだけじゃねえぞ!」


 俺はハンドガンの引き金を引く。

 殺さないほうがいいようなので、狙いは前衛騎士の構える剣だ。

 着弾の衝撃で騎士の剣が砕け散る。


 ……意外にもろいな。


 跳弾が心配だが、大仰な鎧を着込んでるんだから大丈夫だろう。


 生身での剣の斬り合いなんて、火星の戦闘カリキュラムにはなかったからな。

 駆け引きとか、正直言ってよくわからん。


 だが、騎士たちはわりと素直に精神波を垂れ流す。

 攻撃の手段がわからなくても、攻撃の意図と標的さえわかれば、あとは避ければいいだけだ。


 騎士たちは驚きで動きを止めている。

 俺が火の玉や雷撃を回避したのがよほど意外だったんだろう。


 俺も向こうの攻撃手段がわからないが、向こうにも俺のやってることがわからない。

 あながち俺ばかりが不利なわけじゃないってことだ。


 俺は、騎士たちへと跳びかかる。

 折れた剣を振り下ろしてくるのをかわし、利き手側に回りこんで腹に膝をめり込ませる。

 息を詰まらせた騎士を、起き上がりかけてたリーダー騎士へと蹴り飛ばす。

 リーダー騎士は部下の重みを受け止め損ねて再び転ぶ。


 前衛二枚が動けないあいだに、俺は後衛の騎士に詰め寄った。

 騎士たちは手を上げ、慌てて何かを放とうとする。


「遅えよ!」


 片方の鳩尾を蹴り上げ、もう片方の顎にフック。

 後衛二人が地面に倒れる。

 殺さず意識だけを刈り取るのは素人が想像するよりずっと難しいが、なんとかうまくいったようだ。


 ……身体の造りは地球人とほとんど同じっぽいな。


 関節の可動域や血管の経路が違ったら、失神しなかった可能性もある。

 もちろん、その時はその時で、フォローする用意はしてあった。


 俺は、ようやく起き上がった前衛二人につかつかと近づいて軽くノす。

 リーダーだけは腕を決め、スーツから結束バンドを取り出して拘束した。

 リーダーが憎々しげに何かを叫ぶ。


「~~、~~!」


『『くっ、殺せ!』だそうですよ?』


「伝統芸だなぁ。男に言われてもしょうがねえんだけど」


 もっとも、捕虜を虐待するようなマネを火星人はしない。

 あくまでもネタだ。


「さぁてと。どうしたもんかねえ?」


 何事かをわめくリーダーをながめながら、俺は思わず腕を組んだ。

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