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1-8世界へ つづき

皆様こんにちは。お世話になっております。

からすです。

そういえば、訓読みの『(くん)』って音読みなのですよね。

だから何というわけではありませんが。


●〇●〇


 うさ耳お姉さんが奥へ引っ込んで少し。


 待つと感じるほどの時を置かずうさ耳お姉さんの代わりにやってきたのは、黒髪をシニョンヘアにまとめた如何にも秘書感たっぷりなお姉さんでした。


 シニョンお姉さんの少し後ろには先ほどのうさ耳お姉さんもいます。


「お待たせいたしました。種族が機構人形ということで、ここからは私が担当させていただきます。ザクロギルド特殊種族担当職員のリチアと申します。よろしくお願いいたします」

「……あ、はい。お願いします」


 シニョンお姉さん、もといリチアさんの清涼な声音に一瞬聞き入ってしまいました。

 少々の間の後、こちらを見つめる瞳に軽くお辞儀を返し、続きを聞きます。


「ご登録なのですが、少数種族の方々の中には一部登録用の機材が反応しない場合がございまして。

 そういった場合、手動での登録になりますので、お手数ですが、両のお手をお貸しいただいてもよろしいでしょうか」


 そう言ってリチアさんは手を差し出します。


 ふむ? 腕を捥げと? 身体部品って、自分で捥ぐというかパージ? できるものなんでしょうか?


 いえ、今後付け替えたりは必要になるでしょうからできはするのでしょうけど、できたとして、ゲーム開始直後から装着シークエンス~分みたいなペナルティを食らうのは遠慮したいのですが……


 頭の中で少しぐるぐると考えを巡らせた結果、リチアさんにその旨を伝えると、


「あっ、申し訳ありません。勘違いさせてしまったようですね。

 私と両手をつないでいただければ結構ですので」


 少し困ったような顔でそう返ってきました。


 ……とても恥ずかしい。そして後ろのうさ耳お姉さんの優しい笑顔がとてもつらい。


 いえ、仕方ないですよ。だって私の身体、はずれるんだもの。そりゃ勘違いもしますよ。

 ワタシワルクナイ。


 少し熱い気のするような顔をうつむかせつつ、私は差し出されたリチアさんの両手に自分の両手を乗せます。


 リチアさんが目を閉じ《リード》とつぶやくと、重ねた手の上に半透明の丸い幾何学模様が浮かび上がり、回転を始めました。


 くるくるくるくるくーるくる。


 回転を眺めること六回転。

 ふわりと幾何学模様が消え、リチアさんが閉じていた目を開きます。


「ありがとうございました。少々お待ちください」


 リチアさんがそう言って取っていた手を放し、先ほど私には反応しなかった幾何学模様の描かれた板に手を乗せると、幾何学模様が数度瞬き、登録完了の文字が板の下部に浮かび上がりました。


「はい。これで登録は完了しました。ギルド証の発行には少々お時間をいただきますので、こちらの札をお持ちください」


 渡されたのは、私の掌より一回り程小さな木の板。特になんの変哲もないように見える木の板です。


「ギルド証が発行されましたら、こちらの札が点滅いたしますので、札をお持ちになって再度こちらのカウンターまでお越しください」


 木の板、もとい札を貰った私はカウンターを離れ、札が点滅するまでギルドの中を見て回ることにしました。


 ちなみに、アビリティを使って見てみた札の詳細は閲覧不可になっていました。点滅できる木の板…… この世界は不思議がいっぱい。


 どうやらアイテムボックスには入らないようなので、そのまま手に持っていましょう。


 待っている間に、クエストを見てみたり、ツバキさんの言っていた修練場を覗いてみましょうか。


 それにしても、このゲームの抽選結果然り、今のギルド証発行然り、待ち時間というのは存外それそのものが楽しいものですよね。現実では何かに待つなんて友達との待ち合わせくらいですからね。

 

 それにしたって、私はそんなに交友関係が広い訳でもないので本当に思いつきません。


 現実では煩わしい待ち時間というのはなくなりましたけど、一緒に待ち時間の楽しみというのもいくらかなくなってしまっているんでしょうね。


 なんてことを頭の片隅で考えながら『クエスト受注はこちら↑』の文字を追いかけて行くと、その先には台座の上で浮かぶ透明な珠が部屋、というか広間いっぱいに並んでいました。


 その大半に人、おそらくはプレイヤーが触れて何かを操作しています。


 私も一つに近寄って珠を観察してみると、珠の中ではいくつもの文字が浮かんでは消え、なにか、うまくは言い表せませんが、かっこいい。


 一つ持って帰ったら怒られるでしょうか……


 確実に怒られると思うので、欲望を押し殺して、他の人がしているように珠の上に手を置いてみます。


 一瞬登録の時のように反応しないかとも思いましたが、どうやらこちらはそんなことは無い様で、ちゃんとクエスト一覧を表示したウィンドウが現れました。


 一覧には軽く引くくらいの量のクエストが並んでいます。


 条件やキーワードで絞り込むことができるようですね。クエスト探しがゲームの大半になるような事態を避けられて心底安心しました。


 ざっと流し見ていくと、アビリティ合計レベルで受けられるクエストが制限されているようです。


 合計レベルが0、今の状態で受けられるクエストは大体ステータス上昇系。あとは、お金・料理(握り飯)・装備(お守り)を貰えるクエストが一つずつ。

 合計レベルが上がればすぐにクエストの数ももらえる報酬の種類もぐっと増えるみたいです。


 まあ、今はギルド証がないので何も受けられないようですけどね。


 そういえば思ったんですけど、私がステータス上昇系のクエストを受けたらどうなるのでしょう? 徒労で終わるんでしょうか? 後でギルド証を受け取るときにでも聞いてみましょう。


 確認も終わったので珠から手を離すと、少し間を置いて表示されていたウィンドウが全て閉じられました。


 クエストを受けられる広間? を後に、今度は『修練場はこちら↑』の看板を追っかけていきます。


 修練場はどうやらギルドの建物の裏手、外にあるようです。


 覗いてみるとそこには、想像とは違い、枠までしかない木製?の扉が石畳の上で並んでいました。


 感覚的には先ほどのクエストを受ける用の珠と似たようなものです。


 私が想像していたのは、もうちょっとこう、地面の露出した広場にかかしが並び、たくさんのプレイヤーがひしめき合い、戦闘訓練に勤しんでいる、みたいな感じだったのですが。


 そんなことは無いようです。

 そりゃそうですか。


「修練場をご利用ですか?」


 私が扉の群れをぼーっと眺めていると、ギルドの壁に空いた穴からせり出したカウンター越し、私の視界の外、女性から声をかけられました。


 『修練場受付』の文字が掲げられたカウンターの向こう側から声をかけてきたのは、ネコさんでした……


 いえ、言い間違いでもなんでもなく、ネコさんなのです。


 少し大きな猫が二本足で立ってお役所の制服を着た姿を思い浮かべると、私に話しかけてきたネコさんの姿そのまんま。


 これはファンタジー来ましたね。

 私的にはゲームを始めて最大のファンタジーポイントです。

 抱き上げてモフモフしたい。


「あ、いえ、少し覗いていただけなので」


 そんなよこしまな考えを悟られないように注意しながら答えると、ネコさんは一礼の後に、


「ご利用の際はお声がけくださいませ」


 と、言って手元の書類に視線を戻しました。


 MPが減っていないのが不思議なくらい多大なる精神力を消費して受付さんから再度扉群の方へと目を戻すと、丁度奥の扉からプレイヤーと思しき人が出てくるところでした。


 もっと先発の方なのでしょう、装備が今の私のような芋っぽい…… いえ、質素なものではなく、とてもおしゃれ。


 気にしないとはいえ、私もどちらかと言えば、見た目:性能は6:4くらいが好きな人なので、装備も早めにどうにかしたいですよね。


 そんなプレイヤーさんを横目に覗いた扉の向こう側は暗闇に包まれたような状態になっており、あそこへ足を踏み入れるのは結構な勇気がいりそうな感じでした。


 中がどうなっているとかは…… まぁ、使うときにわかりますか。


 そう考えた私は、その場を後にして道中に見かけた気になる看板のところまで戻り追いかけ、また別の場所へと――


 と思ったところで、手にしていた木札が点滅を始めました。


 きたー

 意外とというか、かなり早かったですね。


 向かう方向からくるりと踵を返して登録受付のカウンターに。

 逃げないからね、と思いつつ少し早歩きなのはご愛嬌。


 戻ると、先ほどまで人ひとり並んでいなかった窓口に少しだけプレイヤーが並んでいます。


 それぞれの窓口では、先ほど私がやったように手を置いて木の板を受け取って、と人波が流れていました。


 空いているところも特になさそうなので、大人しく一番少なそうなところに並び、順番が来るのを待ちましょう。


 順番が来るまでぼへっと周りを眺めますが、容姿を見た限りは特に気になるほどの方はいませんでした。


 ただ、私と同じように点滅する木札を手にした方が数名見受けられます。

 大半が緑色。

 

 木札が発しているのはそんなに強くないふわっとした感じの光ですけど、集まると結構目につきますね。


 因みに私のは赤色に点滅しています。

 ここら辺は種族の問題でしょう。


 見たところ私以外に赤色は見えないのでちょっと優越感。ふふん。


 そんなことを考えている間にもさくさくと列は進み、すぐに私の番が回ってきます。


「いらっしゃいませ。ご登録でしょうか?」

「あ、いえ、これを持ってまた来てくださいと言われたので……」


 先ほどとは違う窓口なのでうさ耳お姉さんではありませんが、ヒト耳?の受付お姉さんに点滅を続ける木札を差し出します。


「はい、ありがとうございます。ギルド証の発行ですね。少々お待ちください」


 手渡した木札を受け取ったお姉さんが傍にあった機械の隙間に木札を差して押し込むと、木札は機械の中に吸い込まれ、代わりに機械の下から黒いカードが出てきています。


 カードをカウンター下から取り出した書類と重ね、大きなハンコを下の書類とカードを跨ぐようにぺったんこ。

 割印というのでしたっけ?


 カードの方に押された半分の印は、染み込んでいくようにすぐに消えてしまいました。


 流れるような手際が見ていて気持ちがいいです。


「はい、問題なく発行されましたので、こちらがギルド証になります。

 ギルド証とギルドの利用については、なにか疑問質問等がある場合は各受付、またはギルドサポートカウンターへどうぞ」


 言葉と共に渡されたカード、ギルド証を受け取り、私はそさくさと窓口を後にします。


 ふむ、これで?


~ポーン… ポンッ~


 思った通り、ギルドに登録してくださいね、というクエストのウィンドウが自動で開き、そこに達成のハンコがぽんと押されるとウィンドウからアンティーク調で装飾の施された手のひら大の箱が。


 これが報酬の、始まりの武器箱というものなのでしょう。


~ポーン~


 綺麗な箱です。これはこれで飾っておいてもいい装飾になりそうです。


 私こういうの好きなんですよね。

 実際、現実の私の部屋にもこんな感じの小物入れやオルゴールがいくつかありますし。


 ためつすがめつ、見た目をひと通り楽しんで、満足。


 説明によると、開ける際に選択した種の初期武器が出てくる箱らしいですね。


 この箱ちょっと気に入りました。


 開けると、箱はなくなっちゃいますよね?


 初期武器なら大した価値はないでしょうし武器自体はそこらへんでも買えるでしょうから、私的にはこのままの方が価値が高そうですし、しまっておきましょう。


 武器箱をアイテムボックスにしまい込み、先ほど出てきていたウィンドウに目を移します。


==========

【猫の手も借りたい】チュートリアルクエスト

 あなたを頼りにするひとが居る。


達成条件:フリークエストの達成


※フリークエストはRoots内時間1日あたり最大8件まで受注することが可能です。

※受注を破棄した場合も受注権は消費されますので、ご注意ください。


報酬:始まりの防具箱

==========


 登録したので、先ほどの場所でクエストが受注できるようになったわけですね。

 ふむふむ。


 さくっと何かしら受けて達成してしまいましょうか。

 そういえば、私がステ上昇系のクエストを受けたらどうなるのか聞きそびれましたね。

 まぁ、いっか。


 ギルド証を受け取る前に気になったところもあったのですが、それはひとまず置いておいて、先ほど覗いたクエスト受注広場(私命名)に向かいます。


お読みいただきありがとうございます。


もしどこかで面白いと感じいただけたようでしたら、星を光らせてくださると感動します。

あとブクマとかも(強欲

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