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1-7世界へ

皆様こんにちは。お世話になっております。

からすです。

そういえば、手持ち花火の先っぽのぴろぴろはちぎってから使うのが正しいそうですね。

だから何というわけではありませんが。


●〇●〇


 私が軽くなった身体でぴょんぴょんと遊んでいると、


「さて、これでチュートリアルは終わりなのでござるが、何か疑問・質問はあるでござるか?」


 ツバキさんがこちらに声をかけてきました。

 目線がなんか優しげなような気がして居た堪れません。まぁ、気のせいでしょうが。


 そう言われて、少し考えを纏めてながら疑問がないか確認していきます。

 何かあったでしょうか? ぶっちゃけると内容が盛りだくさんで最初の方に何を説明されたか忘れかけているのは秘密です。あ、そういえば。


「生産…… 創作系統、でしたっけ? のアビリティ、というか、スキルについて、的なものについては、どうなっているのでしょう?」

「創作系統の説明については、全て説明するととても時間がかかってしまうでござるから、各々のアビリティの習得クエストに含まれているでござる。アビリティを習得しないまでも気になればクエストを受けてみるといいでござるよ」

「あ、はい。把握しました」


 後は…… 特にないかな? パッと思いつくものはないですね。

 あとからあとから気になることは多く出てくるのでしょうが、それはそれとして。


「……ないようでござるな? それではこれでチュートリアル終了でござる。チュートリアルを完了した者には、記念品を贈呈しているでござるよ。受け取ってほしいでござる」


 ツバキさんから置いてあった市松人形の一体を渡されます。

 あの古風な白塗りに丸顔のものではないので、正確には市松人形風の人形と言った方が正しいと思いますが、まあ市松人形ということにしておきましょう。


 可愛いのでこれはなかなかうれしいですね。ちなみに、関節もちゃんと動きます。すごい。


「ありがとうございます」

「うむ。大切にしてあげてほしいでござるよ」


「はい。大切にしますね」


 市松人形をアイテムボックスにしまい、出しっぱなしになっていたウィンドウを全て閉じて、始まりの準備を整えます。


「あ、ちなみに、先天性アビリティはアビリティ欄からいつでも取得できるでござるから、忘れないようにとるでござるよ?」


 いつでも? いつでも、ですか。


「つまりは、ここでも?」

「む? うむ、ここでも取っていくことは可能でござるが、取っていくでござるか?」


「えっと、アドバイスをいただいても?」

「あい、わかった。そこらの機構人形を知っている住人に聞けばわかる程度の助言しかできないでござるが、できる限り協力させていただくでござるよ」


 再度ステータスウィンドウを開き、【アビリティ】欄の【先天】を開く。

 空欄になっている枠を押すと、先天性アビリティの一覧がずらりと並んだウィンドウが新しく表示されます。


 一つ一つ、説明欄を開いて確認しつつ、キャラクタの育成方針なんかも踏まえて考えながら吟味していきます。


 ツバキさんと、あーだこーだなんだーそうだーと相談しつつ、最終的に絞り込んだ二つは、


『どこからか与えられた知識』『高性能伝導体』の二つ。


 性能はというと、


==========

『どこからか与えられた知識』Lv.0

その人形に与えられた知識は誰が与えたものなのだろうか。


スキル▼:A 第一分類記録照会権限


INT+3

==========


 ツバキさんがお勧めして下さったので選びました。

 曰く、この世に古くから存在しているものほど、後天性アビリティの『鑑定』よりも詳細な情報がわかるそうです。

 代わりに鑑定のような汎用性はないらしいですが。鑑定の汎用性とは……?


 それはさておき、生産系のプレイを中心にやっていこうと思っているので、アイテムの詳細な情報を知れるのは重要。ということで、これが一つ目。


 もう一つは、


==========

『高性能伝導体』Lv.0

その人形の素材に何が使われたのか、それは想像すべきではないのかもしれない。


スキル▼:P 効率的な伝達


AGI+1 INT+1 TEC+1

==========


 こんな感じのやつです。


 ちょっとテキストが怖いですが、これも種族限定アビリティ。


 『効率的な伝達』は、機構人形の固有スキル『自己○○』系の効率を上昇させる効果があるそうです。


 固有アビリティの『機械の身体』にはどんな成長をするにせよ、自己○○系のスキルが多いそうなので、これに決めました。


 種族限定アビリティ以外はなんかもったいない気がしてしまったので選択から除外。


 限定に弱い。仕方ない、仕方ないんです。

 限定の中でも『環境適応』とか『クロックチェンジ』とか、他にも気になるものはありましたが、ロマンアビリティだったり戦闘向けな感じがしたりと、除外していった結果この二つになりました。


 ともあれ、先天性アビリティはこれで決定なので、選択してセット。


 アビリティ欄だけ見ると、こんな感じですね。


【アビリティ】▼

 【固有】▼

  『機械の身体』Lv.0

 【先天】▼

  『どこからか与えられた知識』Lv.0/『高性能伝導体』Lv.0

 【後天】▼

  『 』Lv.0/『 』Lv.0/『 』Lv.0 /『 』Lv.0/『 』Lv.0

  『 』Lv.0/『 』Lv.0/『 』Lv.0 /『 』Lv.0/『 』Lv.0


 ちなみに、『機械の身体』の説明を見ていなかったので、見てみましょうか。


==========

『機械の身体』Lv.0

ヒトを真似、形作られた人造の身体は変化を知らず、ただ存在し続ける。


スキル▼:A 自己管理▼

      A 自己修復

      A 自己修繕

      A 自己整備


SP:3

==========


 SP:3は好きなステータスに設定できるようになっていました。


 これは後々後天性アビリティを取って全体のステータスを見てから設定したいので今は置いておきましょう。


「うむ、無事決められたようでござるな。ほかに、疑問・質問・相談、何かあるでござるか?」

「いえ、大丈夫です」


「それは上々。では、以上でチュートリアルを終わるでござる。」


 そう言ってツバキさんが木刀で床を叩くと、ここへ来た時と同様に私の足元が円形に発光し始め、精緻な幾何学模様が描かれていきます。


「お世話になりました」


 一つお辞儀をして握手に手を差し出します。


「いやなに。某こそ存分にチュートリアルができて楽しかったでござる。感謝感謝でござるよ」


 ツバキさんは笑顔で手をつかみ、ぶんぶんと大きく数度手を上下に振って手を放しました。


「ではっ! 【Roots】の世界をどうぞお楽しみください、でござる!」


 相変わらず目に痛くない不思議な光が視界を白く覆います。


 次に私が立っているのは、広告でさんざん見た始まりの街【ザクロ】。私はこれから始まる【Roots】の世界に胸躍らせ、視界が戻るのを待ちました。



●〇●〇



 視界が戻ると、そこは石畳の大広場。


 多くの人がひしめき合っていますが、なお十分に余裕な広さがあります。


 背後からは激しい水の音。音に振り返ると、そこにはかなり大きな噴水が設置されていました。


 泉と呼べるほどに大きな水槽の中央には巨大な樹木が水槽よりも一回り程の広さまで枝葉を展開させています。


 そして水はそんな樹木の枝々の間から流れ落ちてきているようです。どうなっているのでしょう? よもや樹木が吸い上げた水が枝間から溢れているとでもいうのでしょうか。


 バシャバシャと水を吐き出す枝と枝の間に目を凝らし真実を探りますが、さっぱりわかりません。木登りでもして確かめないと分からなさそうです。


 Roots世界の不思議現象の追及は一旦置いておいて、軽く身体を動かして問題がないことを確認し、ステータスの現状確認をしましょう。


 水槽の縁に腰掛け、手元にメニューを開きます。


 メニューはチュートリアルで見ていたものとあまり変化ありませんが、ツバキさんの言っていた通り、CASHが500 Cに増えていました。


 後は装備品欄を開くと、今着ているものは、『古布のシャツ』と『古布のズボン』の二つだけになっています。


 両方ともだいぶくたびれた感じの目の粗い厚手の布で作られた長袖のTシャツと長ズボンですね。こんな服着たことないので新鮮です。


 あと、靴も履いていないので、足がぺたぺたいいます。

 痛かったりはしないのですが、私の場合、身体部品の劣化が早まりそうで若干不安になります。


 私の友人も初回組でこのゲームをやっているそうですが、彼女はお洒落さんなのでこんな服着させられてさぞかし頭を抱えておしゃれ装備入手に奔走していたことでしょう。

 多少弱くても見た目が良ければ気にしない子ですからね。


 他にも色々機能や操作の確認をしていると、


~ポーン~


 と音が鳴り、一枚のウィンドウが表示されます。

 ちょっとびっくりしました。


==========

【白紙の世界地図】チュートリアルクエスト

 白紙の世界地図にはあなたの歩んだ軌跡が記録される。


達成条件:マップを確認


※マップには、あなたの歩んだ場所と自身が認識した周辺の情報が自動的に記録されます。また、専用アイテム『無限インクの羽ペン』を用いることで、マップへメモを書き込むことができます。


報酬:無限インクの羽ペン

==========


 マップ機能ですか。オートマッピングされるのは便利ですね。どこに何があるとか全部覚えておくのは大変ですからね。


 マップ・表示、でマップを開きます。

 マップを確認すると、今私がいる場所とその少し周りだけが表示され他は真っ白。立ち上がり少し歩いてみると、歩いた範囲分がリアルタイムに描画されていきます。


~ポンッ~


 と、出しっぱなしになっていたクエストウィンドウに『達成』の文字がでかでかとハンコのように押されると、ウィンドウから羽ペンが排出されてきました。

 説明が見られたので見てみると、念じるだけで手元に現れる不思議な羽ペンだそうです。アイテム欄を圧迫しなくて結構なことですね。

 また、書くだけでなく消したりもできるとのことで、試しにマップにぐりぐりと適当なイラストを描いてみたり。


~ポーン~


 私がそんなことをしていると、【白紙の世界地図】のウィンドウが消え、すぐに新しいウィンドウが開きます。


==========

【世界最大の組織】チュートリアルクエスト

 国境なき依頼仲介組織『ギルド』。ギルドが存在しないということは、街が存在しないということである。


達成条件:ギルドに登録する


※ギルドでは、フリークエストが受けられます。フリークエストでは、ステータス基礎値の上昇、CASH、素材、アイテムその他を報酬として得ることができます。

※ギルドの位置は地図上に表示されます。


報酬:始まりの武器箱

==========


 ウィンドウが出てくるのと同時に、マップの白紙部分に三角マークが表示されました。


 クエストに従って三角マークを頼りにし近づく方向に進んでいくと、それらしき場所が見えてきます。

 周囲の家々がミニチュアに思えるほど大きな石造りの建物。

 扉はなく、そのまま入っていけるようになっています。


 中へ入ると、案の定広い空間が広がり、奥にはずらりと仕切りに区切られたカウンターが並んでいます。


 入り口から続く『登録はこちら↑』の看板を追いかけて行くと、『登録受付』の看板の立てられたカウンターにたどり着きました。

 五つほどカウンターが並んでいますが、どこも特に人は並んではいないようなのでそのまま適当なカウンターに向かいます。


「いらっしゃいませ。ギルドへご登録ですかー?」


 近づくと、こちらから話しかけるより先に受付さんが対応してくれます。

 受付さんは白のうさ耳が生えた全体的にほんわりした雰囲気の女性です。長いうさ耳の片方が中折れしていて垂れているのが絶妙に可愛らしいです。

 片方だけなのがポイント高いです。


 いえ、決して受付さんでカウンターを選んだわけではないですよ? 偶然そのカウンターにいたのがそのお姉さんでした、ってだけで。

 ええ、うさ耳に目が釘付けになっているのもそこにうさ耳があったからという後付けの理由に他なりません(早口)。


「あ、はい。登録です」

「はい、畏まりました。では、こちらに両手を置いてくださいませー」


 うさ耳お姉さんは、半分溶けたような話し方で設置されている幾何学模様の描かれた板を指しました。

 従って両手を板の上にのせます。


「……あらー?」


 特に何も起こりません。無反応です。

 特に何かあるようなものでもないのかもしれませんが、うさ耳お姉さんの反応を見るにそういうわけでもないようです。


「……あらー?」


 不思議そうにうさ耳お姉さんが右へ左へ少し首を傾げると、それに伴ってうさ耳がゆらゆらと彷徨います。

 ちなみに、一回目のあらー、は「あらー↑?」で、二回目は「あらー↓?」です。


 あ、そうか。


「あ、私、種族が機構人形なのですが、関係あったりしますか?」

「きこうにんぎょう? お人形さんなんですかー?」

「え? えーと……」


 どうしましょう? これは機構人形という種族を知らないっぽいですね?


「んー。少々お待ちくださいねー」


 口元に指をあて少し考えこむ仕草をすると、そう言ってうさ耳お姉さんは席を立ち、奥へ引っ込んでいってしまいました。



お読みいただきありがとうございます。


もしどこかで面白いと感じいただけたようでしたら、星を光らせてくださると感動します。

あとブクマとかも(強欲

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[一言] 絶滅種族だったりするのか……?〉〉機構人形《マシンドール》
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