1-6チュートリアルのつづきのつづき
皆様こんにちは。お世話になっております。
からすです。
そういえば、タガメは洋梨の様な香りがするそうですね。
だから何というわけではありませんが。
●〇●〇
「ここまでが全種族共通の部分でござった。
ここからは、お待ちかね、機構人形特有の要素について説明していくでござる」
おぉー。ついにですか。これは心して聞かねばなりませんね。
「ステータス説明の続きからやっていくでござる。
機構人形は見てもらえばわかる通り、MPが表示されていないでござる。
そこで、代わりに、この『MPコンバータ』を装備してみるでござる」
私はツバキさんが差し出す歯車の塊を受け取り、先程までの操作と同じように、装備、と念じます。
すると手に持っていたそれが光の欠片となって私の胸元へ吸収されていきます。
これは先程も似たようなのを見ましたね。リペアオイルを使った時と似ています。
「装備できたでござるな? その状態で再度ステータスを確認してみるでござる」
ステータスを確認すると、先程まで表示されていなかったMPの部分が書き換わり、『MP残量:10』と変化していました。
「MP残量、という表示になっているでござるな? これで、機構人形もMP消費系のスキルを使用できるようになったわけでござる。
というわけで、使ってみよう! でござるよ。 ――コンッ――
今、シロ殿に魔法系アビリティを付与したでござる。あの石像に向かって、【魔力弾】を放ってみるでござる」
おぉー。やっぱり魔法という響きは心をくすぐられますね。
遠隔攻撃は、対象を選択・当てる、でしたか。
魔力弾。どーん。
念じると、私の身体の前から飛び出したピンポン玉大の白い球が勢いよく、石像の下へと飛んでいきます。
魔力弾はすぐに石像に着弾、石像から4のダメージ表示が飛び出てきます。
魔力弾自体は、石像に当たると弾けるように消えて行きました。
綺麗ですね。スキルを使ったわりにはダメージはひっくいですけど。
「うむ。当たったでござるな。
今のが『消費MP:1』の魔力弾でござる。ステータスを確認してみるでござるよ」
そういわれてステータスを見ると、確かにMP残量:10だったのが、9になっていました。
「さて、機構人形のMPは他種族のように自然回復はしないでござる。
そこでMPを回復させるのに必要になってくるのが、この『魔石』でござる」
ツバキさんが箱の中から赤い球を一つつまみ出します。
よく見るとそれは透き通っていて、赤い色の付いたガラス玉のようにも見えます。
「一旦MPコンバータを取り外して欲しいでござる」
言われた通り、装備を外す要領でMPコンバータを外すと、アイテムボックスからアイテムを取り出した時と同様に、歯車の塊、MPコンバータが手元に現れます。
ステータスの表示が伏字に戻ります。
「さて、そのMPコンバータにこの魔石を入れるでござる。
入れた魔石はMPに変換され、アイテム的には消滅してしまうので注意してほしいでござる。
魔石と触れさせる形で『入れる』で入れることができるでござるよ。途中でキャンセルもできるでござるから、安心してほしいでござる」
ツバキさんがほいっと空いている私の手に魔石を渡してきます。
渡された魔石を片手に、もう片方にMPコンバータを持って、二つを触れさせて、入れます。
魔石が光の欠片となってMPコンバータに入っていきました。
「できたでござるな。それでは、再度、装着してMPを確認してみるでござる」
装着してMPを確認すると、そこには、MP残量:10の文字が表示されていました。
今のが、『1』回復する魔石だったんでしょうか。
「さて、今渡した魔石は、元から入っていた魔石と『全く同じもの』でござる」
ん?
「それだと、充填後は19になるのでは? ……あ」
「そう。気づいたと思うでござるが、MPコンバータに入れる魔石は上書きなのでござる。
つまり、100の後に10を入れると、10になってしまうので注意、でござるよ。
それと、魔石を入れる行動は、『一定以上安全な状態』でないと取れない行動でござる。
一定以上の安全。と言うのは、街中だったり、特定の安全エリアだったり、危険度の低いエリアでの非戦闘時だったり、特定のスキルの保護下にあったり、と言った状況のことでござるな。
ちなみに、一定品質以上の魔石には様々なスキルがついていることもあるでござるよ」
魔石がどれくらい入手できるのかわかりませんけど、MPを湯水のように使うようなプレイはできそうにないですね。
そして最後、さらっと何か重要そうなことが……
「以上が、機構人形のMPに関する話でござる。
さて、次は『身体部品の劣化と消耗』についてでござる」
そこでいったん言葉を切ったツバキさんは、木刀で床を叩く。
ずしっと、急に重くなったような感覚が身体を覆い、実際に動かしてみても、まるで重い服で着ぶくれしているかのように動きづらくなりました。
「今、シロ殿の身体部品すべてを『重度劣化』状態にしたでござる。
その状態でのステータスは、技の威力なども含めて本来の4分の1程度まで低下するでござる」
ステータスの身体部品欄を開いてみると、『始まりの身体(~)』という表示の後ろに『重度劣化』の文字が表示されています。
(~)のところには、頭・胴・腕・脚の四種類が入ります。
ところで、私のステータスはINT以外1で統一されているんですが、1の三分の一でしょうか。
確かに動きにくくはなっているので、これは数値以上の何かがありそうですね……
「通常の種族は空腹度(EP)が低下することで、様々な能力にマイナス効果が付くのでござる。
EPの存在しない機構人形でその代わりとなるのが、この『劣化』でござる。
劣化の進行条件はEPと同じく時間経過や行動によってでござるが、その速度はEPよりも圧倒的に遅いでござる。
――が、食品類アイテムの使用により容易に回復するEPとは違い、基本的にその身体部品の劣化は『一定以上安全な状態』で休息をとることで発動する固有アビリティのスキル『自己整備』、あるいは工房等の施設にて創作系統スキル、『整備』を受ける等でしか回復しないでござる」
ふむ。
空腹は、減るのは劣化より早いけど、食べ物を食べれば回復する。
劣化は、減るのは空腹より圧倒的に遅いけど、回復手段に乏しい。
つまりはHPを薬品過剰なく回復できても、身体の方が先にダメになる感じでしょうかね。
あ、その、って言ってましたよね。身体部品をローテーションさせれば……?
まあ、そこらへんは後々色々考えてみましょう。
「それでは、少しだけセルフメンテナンスを使ってみよう、の巻でござる。
楽な体勢を取って、目を瞑ってみるでござるよ。使用の要領は他スキルと同じでござるからな」
言われた通り、楽な体勢で目を瞑り、セルフメンテナンスを使う、と意識。
すると、
【セルフメンテナンスを開始します。】
【完了まで、残り四時間三分です。】
と女性の声でアナウンスが聞こえます。
四時間三分、よじかんですか…… 長いですね…… 大人しく施設とかで回復するのが得策でしょうかね。
目を瞑った暗闇の中、カッ、カッ、カッ…… と時計の秒針が進むような音が鳴っています。
「さて、使えたでござるな? 目を開けてほしいでござる」
言われて目を開けると、
【セルフメンテナンスを中断します。】
のアナウンスとともに、時計の音が止みました。
「劣化の回復の進行の仕方は身体部品によって違うでござるが、基本的に今の一瞬くらいの時間では劣化は回復しないでござる」
ステータスの身体部品欄を確認してみても、確かに劣化の数値は変化していませんでした。
どれくらいの時間でどれくらい回復、とかは把握しておいた方がよさそうですね。
ツバキさんの説明は続きます。
「そして、劣化状態で戦闘その他、一定以上の負荷がかかる行動をとると、軽度劣化で『緩やかに』、中度劣化で『それなりに』、重度劣化で『急速に』、身体部品は『消耗』するでござる。
消耗は、『指定の素材』と創作系統に属するスキル、『修繕』によって、即座に完全に回復することが可能でござる。
それ以外にも、条件さえ満たせば固有アビリティのスキル、『自己修繕』により素材を用いずにある程度修繕することも可能でござるし、他にもいくらか方法はあるでござるから、探してみてほしいでござる」
脆くなったところを無理に動かすと壊れるよ、といったところでしょうか。
さらにツバキさんの説明は続きます。
「そして、消耗を放置し使用を続けると、身体部品は欠損してしまうでござる。
というわけで、その状態で石像へ攻撃してみるでござる」
言われた通りに手に持った棒で石像を叩く。
とても身体を動かしにくいので、叩いたというよりは当てたって感じですが。
すると、ビシッと音が鳴り、露出している身体の部分を見ると腕に細かいひび割れが走っています。乾燥肌ですね。からっからです。
「消耗したでござるな。
このような消耗時にさらに放置した場合、欠損が発生するでござる。
頭欠損の場合は即死扱いになるので注意でござるよ。
消耗の進行度は、見た目の他、身体部品欄から確認できるようになっているでござる」
早速、確認。
『重度劣化』のさらに後ろに『中度消耗』の表示が新しく追加されています。
消耗も、軽・中・重、なんでしょうね。
この見た目で中度ということは重度とかどんな見た目になるのでしょう?
それこそクレバスのような……
「さて、試しに、腕を欠損させてみるでござる」
そう言ってツバキさんが床を叩くと、ひび割れていた腕がバキッと音を立てて砕け光の欠片となって消えていってしまいました。
後には半透明な状態になった腕が。
手に持っていた棒がするりと手をすり抜け、床に落ちてしまいました。
「そのように、欠損部位は干渉能力を持たないでござる。
よって、脚欠損の時は移動がかなり大変になるので注意してほしいでござるよ」
脚欠損した場合は転がるか、ツチノコよろしく跳ねて逃げないといけないわけですね。二メートルもジャンプできれば逃げられますね。
後は下り坂があればワンチャン……?
なににせよそんな状態にならないように注意するとしましょう。
「こうなると、身体部品を別のものに換えないといけないでござる」
ツバキさんが置いてあった人形の腕を手に取ります。
人形の腕は球体関節だったりで明らかに今は半透明な私の腕とは違うのですが。
「そのような欠損状態でも身体部品他特定のものには干渉できるようになっているでござるから、できればスペアを持ち歩くといいかもしれないでござるな。
というわけで、早速装着してみるでござる」
渡された人形の腕を受け取り、
【身体部品装着シークエンスを起動しますか?】
というアナウンスを聞きながら私は思った。
これを武器にすれば――
「ちなみに、それを武器にしたりはできないでござるからな?」
ダメだった……
「装着は、アナウンスに従ってほしいでござる。ものによって色々あるでござるからな」
ふむ。意味深ですね。
まあ、頭の片隅に置いておきましょう。
起動、と。
【身体部品装着シークエンスを起動します。】
【現在フェーズ1、全フェーズ完了予測時間は40分です。】
【全フェーズ完了まで一定以上の負荷をかけないで下さい。】
【あとおよそ1分で他物体への干渉が可能になります。】
40分ですか。長いですね。
これはローテーションとかはできそうにないですか。
「できたようでござるな。今は特別に一気に終了させるでござるよ」
ツバキさんが、床を叩く。
【全フェーズ完了しました。】
とアナウンスが流れ、半透明だった腕が元に戻り、さらに先ほどまでの動かしにくさもなくなりました。
依然、腕以外は動かしにくいままです。
「以上で、劣化・消耗についての説明は終わりでござる。
MPコンバータ以外の全身の状態を元の状態に戻しておくでござるな」
ツバキさんが再度床を叩くと、全身の動かしにくさが無くなり、普通に動けるようになりました。
むしろ動かしにくかった分すごく快適に動ける感じがします。軽やかー、です。
重しを外した私は強いですよ? なんちゃって。面白いです。
「さて、これでチュートリアルは終わりなのでござるが、何か疑問・質問はあるでござるか?」
お読みいただきありがとうございます。
もしどこかで面白いと感じいただけたようでしたら、星を光らせてくださると感動します。
あとブクマとかも(強欲