6-6たまにあるよね
皆様こんにちは。お世話になっております。
からすです。
そういえば、サハラ砂漠のサハラはそれで既に砂漠という意味があるそうですね。
だから何というわけではありませんが。
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男性の投げた黒い塊を狐さんが齧ると、その部分から赤い輝きが塊を浸食してゆき、白い粉となって崩れて床に触れる前に消えてゆきます。
炭っぽい?
こぶし大の炭と思われる塊が全て粉と消える前に、男性は手にした次の炭を与えながら狐さんを炉の近くへと誘導、最後にざらざらっと手にしていた残りを炉の中へと放り込むと、狐さんが炉の中へと飛び込みました。
それによって、狐さんが炉から出てきてから暗くなり始めていた炉の窓に、再び煌々とした光が灯ります。
これにて、このクエストも完了でしょうか?
男性の方へ目を向けると、男性は真っ黒になった手で自身の禿頭を軽く叩きながらこちらへ話しかけてきました。
服やら頭やら触った部分が真っ黒になっているのは、やはり先ほどのは炭だったのでしょうか。
でも炭なら、作業場の隅に箱に入って山積みになっているのが見えますが、そちらには目もくれていませんでしたよね?
不思議。
「いやー、助かった。まさか、うちのまで飛び出してきちまうとは予想外だったぜ。
炉の温度が上がり過ぎて酔ってたみたいだな。
ありがとよ。助かったぜ」
屋内へ戻り、男性から報酬の『燻る黒鉛の矢』を受け取ります。
見た目は、細長い木炭に鏃が付いた矢。
使用済みの火矢を回収したら一部はこんな見た目になっているかもしれませんね。
効果は後で確認すると致しまして、矢を受け取ると、男性が続けてカウンターに赤い欠片を載せました。
「あと、これが落ちてたが、おまえさんのかい?」
見覚えもありませんのでその旨をお伝えしましたが、男性も見覚えが無かったようです。
少し余計な手間をかけたお詫びとして頂けるとのことでしたので、若干押し付けられた感はありますが、ありがたく受け取ることにしました。
赤い欠片を受け取ったところで、クエスト達成の通知音が流れます。
ウィンドウがポップし、達成のハンコが押されるのをちらりと横目で確認。
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【やどかり火霊】フリークエスト
手伝ってくれ、仕事ができねぇ。
達成条件:一定数の対象の討伐
報酬:燻る黒鉛の矢
※追加報酬として 微精霊水晶 が上乗せされました。
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うん?
あ、追加報酬。
流れ的に、狐さんが出てきた部分でしょうか。
追加報酬を頂けたのは巡回クエストの時以来ですね。
どういう条件を踏んで発生しているのかいまいちわかりませんが、追加でもらえるのは嬉しいです。
ところでこれ、頑なに断っていたらどうなったのでしょうね?
少し気になる。
お礼を言ってカウンター前を後にし、ここでもちょこっとだけ売っているものを覗いてからお暇することに。
ウィンドウを開くと、一覧には剣と盾が並んでいました。
それ以外のものは無く、剣と盾のみです。
数はそこまで多いというわけではありませんが、値段も性能もピンキリでなんだか脈絡? というか統一感? がありません。
そこで気付く、ウィンドウに表示されている『更新 2:41:26』のカウント。
秒数が減っていくところを見るに、おそらくはゼロになるとこの販売内容が変化するのではなかろうかと考察いたします。
タイミングによっては凄い掘り出し物が見つけられるかもしれませんね。
まぁ、今一覧に出ている高額商品の値段的に、現在の懐事情では掘り出し物を見つけても鑑賞することしかできなさそうですが。
ウィンドウを閉じてお店を出ようとしたところで、水濡れの状態が解除された通知がポップします。
火炎の状態が終わっていなければまた水をかぶらないと焼き人形になりかねませんが、続いてすぐに火炎の状態が解除された通知がポップしました。
付与時間、みたいなカウントはありませんでしたが、時間は決まっているのかもれませんね。
付与と同時期に設定していたタイマーを確認。
700 sとちょっとくらいで設定していたタイマーが残り100 sを切っているので、10分程でしょうか?
だからなに、という感じではありますしすぐに忘れそうですが、頭の片隅に置いておきましょう。
道に出たところで、そろそろ明ける尊ぶべき誤りの選択のCTを待ちつつ、今回のクエストの報酬を確認です。
まずは、燻る黒鉛の矢。
火炎の状態を持った、装備品?
説明によると、弓などの矢を用いる装備と一緒に装備することで、耐久値を消費して矢を放てる、とのことで、たくさん矢を持ち歩かなくてもいいというのは便利そうですね。
今度、以前オーリナさんの所で買ったハードショットの魔道具と一緒に使ってみましょう。
……使えますよね?
あとは、追加報酬の微精霊水晶。
魔石とは違うみたいですよね。なんでしょう。
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『微精霊水晶』
純粋な魔力の結晶。魔力へ還ってしまうことは無いが、精霊の核となるほどの魔力は有していない。
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照会と情報請求のスキルは反応しましたが、拡張情報は無し、記録引揚も発動しませんでした。
魔力の塊と書いてあるので、魔石と同じ使い方ができるのかなと思いましたが、そういうわけでもなし。
現状は霊晶片と同じ、ただの素材アイテムですね。
何かに使えるのかもしれませんが、情報不足で全くわからないので、ボックスへぽいです。
タイマーのカウントはスキルカウントとは少しずれているので、残り僅かなタイマーをリセットしてスキルのCTの方を確認。
あとほんの少しなので、このまま待つことに。
ぼんやり眺めながら、スキルの再使用が可能になるのを待ちます。
まったくあてにならないこの後の予定を頭の中で何となく立てていると、尊ぶべき誤りの選択のCTが明けて使用可能になりましたので、早速発動。
忘れないうちにタイマーを12分で設定しておきましょう。
一応、通常状態では反応のなかったアイテムにも一度記録引揚を試してみますが、バフを掛けたからと言って発動できるようになったりはしないようです。
さて、改めまして、今回の対象は『ポポタの花』。
道すがらに試して、記録引揚を発動できたもの自体そんなに数が無いですから、結局はそのうち全部やりますけど、順番に。
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『ポポタの花』
ポポタの花部分。ポポタは全ての部位が広く利用されるが、花も利用に足る効果を持つ。染料や香料としても利用される。食べることもできる。
※拡張情報
一見一つの花に見えるポポタの花は小さな花の集合体である。ポポタは非常に生命力が強く、花一つ一つにその強い生命力を宿している。
※最古記録
古く――々に小さな花を咲かせていたが、環境の悪化により絶滅寸前にまで個体数を減らし、一部が密集し――を咲かせ、個々の生命力を共有することで――残った。
※作製可能効果▼
回復力強化 追憶:重なり合う力
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ポポタの花に関しては、最古記録も元からかなり虫食いが少なかったので、ほとんど読み取れていたのですが、やはりバフをかけた状態でスキルを使うと作製可能効果が追加されるのですね。
となると、他のでも何かしらの作製可能効果が追加されると考えていいでしょうし、わくわくです。
ところで効果は?
詳細を開いて効果を確認。
効果は『この効果が付与されたアイテムを複数使用した際、アイテムの効果の合計が僅かに増加する』と。
結構使い道があるのではないでしょうか。
とりあえず付けておくだけお得感。
それらが実現可能かどうかはさておき、どんなことができるかなと広げた妄想が落ち着いたところで、手にしていたポポタを仕舞って次のクエスト開始地点に移動します。
次のクエストの名前は『なつかしの珍味』。
場所は本当に近く、すぐに到着。
クエスト開始地点となっているお家を、指示に従ってノックすると、扉からお爺さんが顔を出しました。
クエストの内容は、故郷で食べていた『オオナツタケ』というキノコの香りが忘れられず、手に入れたいけれど、売っていないので、森から一定数採取して持ってきて欲しいとのこと。
オオナツタケは確か……
お話が終わり、クエストが開始される通知に連続して達成可能である旨の通知がポップしました。
そうですね。持っていますよね。
必要な数は八本、手持ちは十本なので、足りて良かったです。
その場でクエストを達成し、報酬のミサンガ? を受け取ってクエストが終了しました。
なんだか、さくっと終わってしまいましたが、元から持っていなければ一度外に行かなければいけなかったわけですし、こんなこともありますよね。
報酬のミサンガは装備品で、効果は『行動時、稀にLUC+2』。
固定値なのが悲しい。
とはいえ、そもそも合計レベル1のクエストですからね、効果にあまり期待してもいけませんね。
気を取り直して、あと受けているのは『かかしの流儀』と『倉庫巡回』。
かかしの流儀は門の外で、倉庫巡回は門の隣です。
とりあえず、中央通りに出て街門の方へ向かいましょう。
道すがら少しごちゃっとしていた荷物を整理しつつ歩きます。
ちゃんと、ひと様に…… ぶつかることは無いのですが、街灯なんかにぶつからないように気を付けておりますのでご安心を。現実では、ながら歩きダメ絶対です。
あれをこっちに、これを並べて~、と使いやすいように・見やすいように、を意識して整理。
今の所、収納にはかなり余裕がありますからね。
ほどなくして荷物の整理を終え、何となく手持無沙汰な気分に少し足を早めます。
街門前の広場にたどり着き、どちらのクエストを先にこなそうかと考え、目を空へとむけました。
空では日の光がまだ高い位置にあり、すぐに沈むということはなさそうですが、巡回任務の方は少し時間が掛かります。そちらを先にやっていて門が閉じてしまうと少し面倒ですし、先に門外のかかしの流儀の方をやってしまうとしましょう。
マップを確認し、そのまま門の外へと歩を進めてクエストの開始地点を目指します。
門を出て…… いつも通り門兵さんにもご挨拶をいたしましたら、橋を渡らず、左ですね。
所々で壁から外へと飛び出した建物。
意外と多いです。
そしてそのさらに外側。壁沿いの、人の手の入った敷地を囲む柵。
畑が多いですが、ただ荷物が積んであるだけだったりもします。盗まれないのでしょうかね?
あと、ギルドの修練場より想像通りの修練場っぽいかかしの並んだ広場を見かけたのには、少しテンションが上がりました。
それらと森の間に空いた隙間を突き進んでゆくと、すぐに目的のクエスト開始地点であろう場所が見えてきます。
周囲に突き出た建物もなく人の手の入った場所からも少し離れ、少し前まで続いていた綺麗に管理された範囲とは違う、しばらく刈られていないことを窺わせる伸びた草っぱらに囲まれた場所に、街壁を背にぽつんと立った一本の案山子。
周囲に茂る少し背の高い雑草の類は、まるで案山子近づくことを嫌うかのように案山子を中心とした一定の範囲から離れ、そこにぽっかりと穴を開けていました。
代わりにその足元には小さな花々が密集して咲いていて、それはまるでの案山子の元に花々が身を寄せ合っているようにも見えます。
開始地点のピンは案山子の所にあるため、地面に広がる花々を踏まないように気を付けて草と花の境界を超えると、同時にクエスト開始の通知がポップしました。
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【かかしの流儀】フリークエスト
誰につくられたとも知れず、その身朽ちるまでただ守れるものを守るため。それがかかしと生まれた流儀である。
達成条件:一定数の対象の討伐
報酬:弱きものたちの花蜜
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最適化の効果時間はまだ切れていませんし、事前に発動ものはありませんよね。
武器を抜き、壁を背に周囲を警戒いたします。
がさりと草の揺れる音に目を向けると、草陰から一匹の大きなバッタが現れました。
……うーん、きも。
何でしょうね、何がこんなに忌避感を抱かせるのやら。
そんな様子はないですが、急に跳んでこないかひやひやします。
苦手さ加減で言えば、以前森で出会ったあの芋虫よりも上ですね。
一応、三点セットでスキルを発動してバッタの情報を確認。
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『ヒトリミバッタ』
森のごく浅い所に広く分布するバッタの一種。
※拡張情報
ヒトリミバッタは木の幹の中を住処とし、普段は群れをつくらず単独で活動するが、特定の条件下では群れを形成し、グンタイバッタへと姿を変える。
※最古記録
――――を―――た。
※クエスト対象のため、ドロップ対象外
※※
・・・
・・・
・・・
※※
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ふむ。
スキルが壊れた?
最古記録が過去最短なうえに、ほとんど見えていませんし。
こんな時こそ、尊ぶべき誤りの選択なのですが、まだCTが明けていないのですよね。
明けるまで待つためにゆっくりやってクエスト自体を失敗しても悲しいですし、達成までに再使用が可能になったら使ってみましょう。
間に合わなければ…… 説明的に木の幹でも掘ったら出てくるでしょうか?
そんなことを思いながら見ていると、バッタは外縁部に咲いていた花に目を付けると、此方を無視して花をばりばりと食べ始めました。
失敗条件というのがあるのかわかりませんが、放置はまずい気がいたします。
慌てて攻撃すると、バッタは特に反撃してくるようなことも無く、1ダメージのポップとエフェクトを残して散ってゆきました。
お読みいただきありがとうございます。
もしどこかで面白いと感じていただけたようでしたら、星を光らせてくださると感動します。
あとブクマとかも(強欲