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6-5古くに失われたもの

皆様こんにちは。お世話になっております。

からすです。

そういえば、折り紙の技術が人工衛星に用いられていたりもするらしいですね。

だから何というわけではありませんが。

●〇●〇


 記録引揚のスキルを使って手持ちのアイテムの最古記録を開放しつつ、ハツメさんのお店へ寄ってステータスのアップを済ませます。


 今回上げるのはSTRだけにしておきました。


 一つだけであればすぐに上がるでしょうから、今は一先ず外に出る予定が無いことですし、さくさくと上げてまたお願いしに来ましょう。


 ハツメさんのお店を出て、次なるクエストの開始位置を確認。


 近いのは、という程どちらも離れていないので、適当に、先に『やどかり火霊』というクエストをこなすことにしました。

 このクエストは、討伐、ということなので戦闘があるでしょうし、気を引き締めておきましょうね。はたしてLv.21のクエストの戦闘ができるのかという不安はありますが。


 マップを確認しながらずんずんと進み、オーリナさんのお店も通り過ぎ、もう少し奥へ進んだところが開始地点になっていました。


 開始地点となっている建物の入り口横には、剣と盾が重なった絵の描かれている看板が掛かっています。

 武器屋さん、でしょうか。


 そういえば中央通り沿いにある大きい方の武器防具屋さんも覗いたことが無かったですね。

 装備品の類はマーケットボードで揃えてしまいましたからね。


 他のゲームだとそれで十分なことが多いですが、このゲームだとどうなのでしょう。

近くに寄った時に少し覗いてみるのもいいかもしれません。


 扉に手をかけ、店内へとお邪魔いたします。

 中は営業しているのか怪しい様な静けさで、お客さんが一人もおりません。

 ただ、珍しく、と言っていいのか奥のカウンターにはひとが居ました。


 鍛え上げられた筋肉の詰まった大きな身体に、店内の照明を反射するほどに磨き上げられた剃頭をした男性は、深い皺の刻まれた顔に小さな眼鏡を掛け、手元の本へと視線を向けています。

その太い腕には、本が小さく見えます。


 店内を進むと、こちらに気付いた男性は本を閉じて傍らに置いて、話しかけてきました。


「いらっしゃい」


 カウンターに近づき改めて見ると、男性の頭部の所々には火傷跡等の傷跡が残り、普通にエンカウントを果たしたのなら全力で逃走を図るでしょう。

 ゲームだからいいですけど。


 クエストを受けてきたことを伝えると、感謝の言葉と共に店の奥へと招かれます。


 男性に着いてゆくと、奥は半外の様な状態の作業場になっており、物語で見るような鍛冶場の風景が広がっていました。


 ところで、こういうところは女人禁制みたいなことを聞いたことがあるのですが、大丈夫なのでしょうかね。

 まぁ、招かれているということは大丈夫なのでしょうけれど。


 作業場の中でひと際目を引くのは、今も窓から煌々とした光と熱を発している炉。


 バーナーか火炎放射のように窓から火を噴きだす炉を眺めていると、男性からクエストの説明が始まりました。


「普段から鍛冶では火霊に手伝ってもらってるんだが、最近、炉に野良火霊が入り込んじまったみたいで、うちの炉には過剰なんだよな」


 顔をしかめて自身の頭をぺちぺちと叩きながら話を進めます。

 癖なのでしょうか。


「このままだと、すぐに炉がダメになっちまうからよ。

 うちの火霊に炉から追い出してもらうから、出てきたのを倒しちまって欲しいんだよな」


 そんな精霊的なものを倒してしまっていいのでしょうか、と思いましたが、そういえば森の泉でも水玉を倒していましたね。


 普通に自分でどうにかできてしまいそうな気がする肉体を持つ男性を横目に、説明を全て聞き終えると、クエストが開始されました。


==========

【やどかり火霊】フリークエスト

 手伝ってくれ、仕事ができねぇ。


達成条件:一定数の対象の討伐


報酬:燻る黒鉛の矢

==========


 男性は作業場の奥、炉の陰へ。


 戦闘に備えて、鞘からスティレット抜きました。

 青白い剣身が炉から発せられる赤々とした光を反射して煌めきます。


 次いで、各種スキルを発動してゆきましょう。


 とはいっても、先に発動しておかないといけないのは『最適化』だけなのですけれど。

 『幻影の稀撃』や『舞風』は戦闘が始まってからでいいですよね。効果時間が少し短めですし。

 『風の声』は戦闘中、と。


  各種戦闘における確認をしたところで、炉の陰から男性の声が届きます。


「それじゃあ、行くぞ! 気を付けろよ!」


 その声に身構えると、炉の窓でぼんっと炎が弾け、中からこぶし大の火の玉が飛び出してきました。


 見た目はそのまま、泉でふわふわしていた水玉の炎バージョン。


 ふわふわと漂う火の玉の周りでは威嚇するように小さくぽんぽんと炎が弾け、少し怖い。

ポップコーンが弾ける時の、大丈夫なのかな、となるあの怖さに近い感覚に襲われます。


 一応、『照会』『情報請求』『記録引揚』と一連のスキルも使用しておきます。


==========

『微精霊火球』

 精霊水晶の欠片を核に形成された火球。


※拡張情報

 火の精霊の取り込んだ魔力が結晶化したものを核として生まれるが、基本的には個も自我も無く不安定な存在のため、いつの間にか分裂や融合、消滅していることがある。


※最古記録

 莫大な魔――――て生まれた精霊水晶を核に生ま――存在はかつて、妖――――れ人々との友好を築いていたが、世界から魔力が――れた時代にすべて―――――滅した。


※クエスト対象のため、ドロップ対象外


※※

霊晶片

・・・

※※

==========


 ふむ。

 そういえば、レベルが上がってスキルが増えてから生き物? に使ったのは初めて、でしたね。

 バブルウィードは置いておいて。


 気になる所も多いですが、今は戦闘に集中しましょう。


 『幻影の稀撃』と『舞風』も追加で発動、いつ襲われても大丈夫なように剣を構える、と同時にこちらめがけて飛んでくる火の玉。


 水玉と似たようなものかと考えていたら、意外と素早い突撃で少々驚きましたが、問題なくパッシブで発動している『羽々流々の歩法』で避けることができました。


 回避に合わせて剣を振ると、以前水玉相手に同じようなことをやった時は上手く当たらなかった攻撃も、しっかりと小さな火の玉の芯を捉え、倒すことができました。

 これもステータスが上がった効果でしょうかね。


 その後も炉からはどんどん湧いてくる火の玉の突撃を三度ほど避けると、ステータスに『舞風』状態が付与されたのが確認できました。

 効果は羽々流々の回避性能の向上だったはずですので、安定して避けられている現状、実感はしづらいですが、三度で状態を発動できるのが確認できたのはいいですね。

 説明は、一定回数、なので固定ではないのでしょうけど。


 あと、どれくらい効果が続くのでしょうか。


 そんなことを考えながらだったので数えていなかったのですが、さくさくと二~三十体くらい倒したところで炉の炎が落ち着き、火の玉が出てくることが無くなりました。


 この時点で、ゆうにスキルの舞風の効果時間1分を超えているのですが、舞風状態は継続していました。

 条件は使っていくうちに把握していきたいですね。


 落ち着いた炉を見てこれで終わりかな、と一息。直後、いきなりぼんっと炉からひと際大きな音が。


 まだ出てくるかと身構えて出てきたものを確認すると、そこには火の粉を散らす狐さんの姿がありました。


 体長は両手で掬ったらすっぽりと包めてしまいそうなほどに小さなものですが、その姿は成体の狐そのもの。

 狐さんは、焔色の体毛に包まれた身体から、周囲に陽炎が出るほどの熱気を発しています。


 宙でふわふわと揺れ動く姿はとても可愛らしいのですが、いかんせん熱気がすごい。

 先ほどまでの火の玉も熱は感じたのですが、それらとは比較になりません。


 作業場を抜ける風が熱を払ってゆきますが、追い付かず正に炉の目前にいるような熱が伝わってきます。


 先ほどから自身の尾を追いかけるように縦にくるくると回っていた狐さんが、はたと宙で足を止めてこちらに振り向きました。


 来る? と身構えたタイミングで炉の陰に居た男性が飛び出してきて大きな声を上げます。


「すまん! それは倒さないでくれ!」


 そう言って、お店の方へと走っていってしまう男性。


 倒してはいけない、ということは、時間稼ぎをすればいいのでしょうか。

 確か、初めて受けたクエストの時もこんなことがありましたね。なんて思いながら武器を仕舞います。


 何となく以前の巡回クエストのことを思い出しましたが、以前とはステータスが違いますし、どうにかなる、と思いたいですね。


 照会のスキルを使ってみましたが、眼前の狐さんも扱いは先ほどまでの火の玉と同じな様で、説明に変わりはありませんでした。


 ちょこちょこと使っていた情報請求のスキルによって減っていたHPを回復しておきます。


 避けることに意識を集中させ、最適化のスキルはまだ効果時間に余裕があるので大丈夫として、まだ舞風状態は継続していますが一応、再度スキルの舞風を発動しておきます。

 ついでに、目の前にいるので意味は無いかもしれませんが、『風の声』も発動。

 さらにさらに、こちらも意味はなさそうですが、『芸術を解す機械』も発動。


 これでできる事は全てです。


 いつ来るかと狐さんを見ていると、狐さんが尻尾を振ったのと同時に、身体の近くの空間でぼぼぼ…… と音が発生し、いやな予感を抱くと共に羽々流々の回避の感覚が出ました。

 感覚に従って身体を動かしたすぐ後に、その場がぼんっと炸裂音を発し、火の粉を散らしながら爆発。


 警戒していたおかげで避けられたと思ったのですが、どうやら当たってしまっていたようで、身体からダメージのポップがこぼれます。

 攻撃が直前まで不可視なせいでスキルが発動し辛いのか、それとも舞風状態の羽々流々ですら回避性能が足りていないのか、わかりませんね。


 とはいえ、慌てて回復するほどの大きなダメージではないので、一旦回復を保留して相手の動きを注視します。


 事前警告もあるようですし、次にあの攻撃が来るのなら少し余裕をもって避けましょう。


 ゆらりゆらりと左右に振られる尾に合わせて周囲で重なり合うように前兆となる音が。

 一つではなくなった音に、羽々流々の回避の感覚は発生していませんでしたが、とにかくその場から大きく移動することで回避を試みます。


 先ほどの攻撃で、気を付けていれば避けられそうと思ったのが油断を誘ったのかもしれません。


 移動した先で発生する羽々流々の回避の感覚。

 咄嗟にそれに対応できず、右の足の付け根あたりと左肩で発生した爆発を直接もらってしまいました。


 初見に自己判断で回避行動をとるものではありませんね。


 先の攻撃は完全に避けられてはいなかったものの、直撃ではなかったのでしょう。

 今度は合わせると100を超えるダメージ表記が出ました。


 流石にDEFが貧弱すぎるでしょうか。

 装備のダメージ軽減もDEF依存ですからこちらもあまり期待はできませんし。


 最大限にバフを積んだ状態なら70になるステータスもある中で、未だに2という悲しい数値をしている防御力さんに思いを馳せながら、改めて回避に意識を集中させます。


 まだHPには余裕がありますし、手持ちのリペアオイルは全て精製品で240回復できますから、もう一度もらってからでも遅くはないでしょう。


 なんて言っていて、相手が次に400位のダメージが出る攻撃をしてきたらと思うと少し不安ではありますが。


 流石にないですよね……?


 狐さんの動きをよく観察し、羽々流々の回避感覚が出るまで余計な動きを取らずに身構えます。


 尾を振る。前兆の音。回避感覚―― 回避!


 スキルと行動が噛み合い、完全に回避が成功。よし、と思いつつも次なる攻撃に備えようとしたところで、攻撃の前兆音が耳に届きます。

 回避後の隙を叩くように発生した攻撃に、連続して回避感覚が出ました。


 その感覚に従い、すぐさま再度回避。

 幸いにして、少し体勢は崩れていましたが先ほどのこともあり警戒を途切れさせなかったおかげで、完全な回避とはいきませんでしたが直撃は免れました。

 次からは連続で来る可能性も意識しておきましょう。


 攻撃のパターンはこの単発、複発、連発の三種のみのようでした。

 パターンの中で連発だけはどうしても二発目の爆発を少し貰ってしまうのですが、連発の頻度はそこまで多いわけではありませんでしたし、途中に一本回復を挟む程度で済みました。


 しばらく狐さんからの攻撃を避け続けていると、ようやく建物の方から戻ってきた男性が狐さんに向かってなにやら黒い塊を投擲。


 男性に気づいた狐さんがそちらへ振り向き、その黒い塊を認識するなりすぐさま飛びつき、宙でとぐろを巻いてその黒い塊を齧り始めました。


 それがおもちゃなのかおやつなのかはわかりませんが、とりあえず攻撃は止みました。


 流石に、もう無いですよね?


 相も変わらず熱気はすごいですが、先ほどまでの雰囲気はどこへやら、平和な風景を眺めながら一息つきました。

お読みいただきありがとうございます。


もしどこかで面白いと感じていただけたようでしたら、星を光らせてくださると感動します。

あとブクマとかも(強欲

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