表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/62

6-4まだ失われてはいないもの

皆様こんにちは。お世話になっております。

からすです。

そういえば、ツツジの花の蜜は中毒を起こす危険があるそうですね。

だから何というわけではありませんが。

●〇●〇


~きゅぽんっ~


 ……きゅぽんっ?


 くるりとカウンターに背を向けたところで、背後から謎の音が。


 いえ、謎の音というか、なにかを引っこ抜いたような?


 今しがたくるりと反転した身体をもう反転。

 音のした背後を振り返り音の発生源を確認するとそこには、頭がかぼちゃに挿げ替わった元カブさんの姿が。


 えっ。んん? えぇ……


 カウンターに背を向け、音がして、振り返る。一連の動作はそこまで時間があったようには思いません。

 ですが、振り向き目を向けた時には既に、元カブさんの頭は今まさに運搬してきた大きなかぼちゃにすげ変わっておりました。手品顔負け。


 顔の形にくり抜かれたかぼちゃ頭の中では変わらず藤色の炎が揺らめきます。

 摩訶不思議な現象に釘付けになっていたこちらの視線に気がついたのか、こちらに正面を向けるように振り向いた元カブさん、もといかぼちゃさんと目? が合いました。


 中空の抜け殻…… 抜けカブを手にこちらに見せ、宙でくるくると上機嫌に踊るかぼちゃさん。

なんでしょう、可愛いのですが、何とも言えない気持ちに苛まれます。


 ところで中身はいずこ。

 食べたのかな?


 相も変わらずこの世界は不思議が沢山ありますね。


 とりあえず、また軽くお辞儀をして視線を外して店内の商品棚を見てみることに。


 商品一覧には、使用するアイテムを中心に素材や道具と、雑多に売られているようでした。


 使用すると星のエフェクトが出るアイテムや、壮大なBGMが流れる道具に、食べるとおみくじの出てくる木の実等々、どれもこれも変な効果のあるアイテムばかりが並んでいて、実用性と言われると無いに等しいかもしれませんが、面白いは面白いと思います。

 ここはさしずめ面白雑貨屋さんといったところでしょうか。

 こういうのをひとと遊ぶときとかに使ったら盛り上がりそうですよね。うん。

 今の所そんな機会は訪れなさそうなので購入はしませんが。


 縁遠そうなパリピ系アイテムの並ぶウィンドウをそっと閉じて、ついでにそのままクエストクリアでいただいたアイテムの効果も確認しておくことに。


 黒い木製の枠が付いたシンプルな砂時計の見た目をしたこの悪戯な砂時計というアイテムの効果は『使用すると、選択した待機中のスキルのCTをわずかに延長し、延長された時間に応じて、一時的に何かしらの付与効果を得ることがある』というものでした。


 アイテム自体のCTが300 s、つまり再使用までに5分かかるアイテムなので、効果自体は面白いですが、連続使用で悪いことができるようなアイテムではなさそうです。


 CT延長が固定か割合かはわかりませんが、割合だった場合、延長された時間に応じてということですし何となく長い方が良かろうという考えの元、今所持しているスキルをざっと確認し、一番CTの長いスキルで今使えそうなら使ってみることに。


 の前に、別に問題は無いのでしょうけれど、流石にお店の中で使うのは気が引けますので、外へ。


 外に出ようとお店の扉へ手をかけたところで、ピピロリンと。

 はい、相変わらず不意に来てびっくりするステータスアップの完了音でございます。


 そのまま外に出てステータスを確認すると、STRとAGIの増加が完了したようですが、MPはほとんどパーセントが進んでいません。

 使っていないので当たり前と言えば当たり前なのですが。


 スキルやその他の戦闘に関わってくるような部分は外を探索するときにいくらでも上がるでしょうし、いいですけれどね。


 そうしたらこの後は、『やどかり火霊』『なつかしの珍味』の二つのクエストが街の奥、ハツメさんのお店の方角でまとまっていますし、そちらに向かうとしましょう。


 そんな予定を立てながらお店を出たところで、バッグから悪戯な砂時計を取り出します。

 先ほど確認して、今所持しているスキルの中で最もCTの長いものは『尊ぶべき誤りの選択』で720 s、つまりは12分でした。


 このスキルは次に使用するスキルの影響? を向上させるものなので、もったいないですし、なにかに使いたいですよね。


 最適化? 今ステータス上げても使い道が無いですか。

 芸術を解す機械? もあまり意味が無さそうです。


 照会、情報請求、記録引揚――

 ふむ、記録引揚はいいかもしれませんね。

 戦闘や作製に関わるスキルは今使っても仕方が無いですし。


 うむ。

 尊ぶべき誤りの選択を使ってから記録引揚を使ってみましょう。


 どのアイテムに対してスキルを使おうかなとバッグやボックス、ポーチを眺めた結果、ぱっと目についた園芸師のクエストの時に頂いた赤い花束。


 もう既に記録の見てある渋草なんかに再度使えばいいと言えばその通りなのですが、どのアイテムもそのうちスキルを使ってみないといけませんからね。


 まずは普通に照会と情報請求を使います。


 そのままだと、花束というアイテムの状態なので、花単体の状態を見られるのかという疑問はありましたが、そこらへんは特に問題なかった様で、そのまま見るとアイテムの花束としての説明、花部分を見るように意識すれば、花部分を見ることができました。


==========

『コベニ』

 コベニの花部分。コベニは花部分が広く利用されており、染料や香料の他、蜜が甘くて美味しいとされている。


※拡張情報

 コベニは周囲の毒素を吸収することで、吸収した毒素への抗体を生成し蜜に蓄積させる能力を持つため、天然に存在する解毒薬となっている。


※作製可能効果▼

MP継続回復 一部の状態付与の軽減

==========


 続いて、変化を確かめるために、先に記録引揚も使っておきましょう。

 スキルの使用によってウィンドウ上に最古記録の欄が追加されます。


==========

※最古記録

 ――持たず、根を――――――ってゆくことができる。周囲の毒素を吸収し―――た蜜を生産し、地表に目立つ色をした花のようなも―――に露出させることで栄養源となる――を確保するため、花のように見える部分は生殖能――持たない。

==========


 ふむ。

 以前他のものにスキルを使った時と変わらず、本文は虫食い状態です。全く意味が分からないほどではないですが。


 あとは、ここにスキルが足されたらどのようになるか、気になる所です。


 早速、尊ぶべき誤りの選択を発動。

 すると、視界端に次スキル影響向上の表示がポップしました。

 時間制限などもなさそうですので、次にスキルを使うまでは消えないのでしょうかね。


 ところで、今気になったのですが、それなら12分待ってこのスキルにこのスキルを重ねたらどうなるのでしょうか?


 ふむ。

 今試すのは少し面倒ですが、そのうち検証してみてもいいですね。


 今回は予定通り、再度コベニの花に対して記録引揚のスキルを使いますが、その前に、悪戯な砂時計を使ってみましょう。


 一時的に付与を得られるとのことですので、こうして街中をさまよっている間は付与の恩恵を得られないかもしれませんが、そもそも付与というのが初めてなので、どんな感覚なのか。


 少しどきどきしつつアイテムを使用すると、砂の入っているガラス部分が砕け、中に入っていた砂が周りを囲むように広がりました。


 悪戯をした子供が笑うようなキャハハとした笑い声が耳元に小さく届き、視界では尊ぶべき誤りの選択のCTが16 % 増加した旨の通知がポップしてすぐに消えてゆきます。


 増加した時間は、16 % となると…… 1分以上ですよね。大体2分無いくらい? そんなにない? 電卓下さい。

 暗算能力の低さに悲しくなりましたが、意外とこういうのってぱっとは出来ないですよね。


 周囲を取り巻いていた砂が消えるのと同時に、身体にぼんやりと赤く、ゆっくりと明滅する光を発する線が現れたのに気づきます。

 線からは僅かにぱちぱちという音が聞こえ、時折小さな黒い欠片が出るようなエフェクトが発生していました。


 まるで焚火にくべられた薪が燃えている時のようだと呑気にそんなことを考えながら、ステータス欄からどんな付与がされたのかを確認しようとしたところで、アイテムによって得られた付与効果の通知が出現。


 ウィンドウには、『付与:火炎』の文字が。

 そして、身体から『1』のポップがぽろぽろと。


 Oh…… あつい、熱い。これがほんとの直火焼? って、そんなこと言ってる場合じゃなありません。

 あぶぶぶ、まずいまずい、きけんがあぶない。


 唐突な命の危険に、意味があるのかわかりませんでしたがバッグから水筒を取り出し、水を頭からかぶります。


 それによって『水濡れ』の状態が付与されたことで現在の状態は、付与の火炎と水濡れが両方ついている状態に。


 直感というか反射的な行動でしたが、それが正解だったのか身体から零れていた数字が止まります。

 ステータスから確認しても特に何か問題が起こっているようなことは無さそうで、一先ずは安心。


 ちょこちょことスキルを使って減っていた分と合わせて、HPを全快まで回復しておきましょう。


 落ち着いたところで、改めて火炎の付与の詳細を確認することに。


 詳細によると、今付与された火炎は、付与されている対象に炎上状態を発生させるデバフ効果がありますが、対象に火炎の属性が付与されるというバフ? 効果があるようでした。


 このゲームにおける属性の概念は今の所よくわからないのですが、火ですし草系の敵とかに強くなれたりしているのでしょうかね。バブルウィードとか。

 あれは、植物ではないのでしたっけ?


 まぁ、それはさておき、この状態はいつまで続くのでしょう……

 アイテムの説明に、一時的に付与する、と書いてあるので一時的なのでしょうけど。


 水濡れになっていればHPが減っていくようなことは無さそうですから、少し面倒なだけで大丈夫ではありますが。


 気にしてもしょうがないので、水濡れ状態の方が先に切れた時の為にまた中央広場で水を汲んでおかないと、と脳内メモを取りつつ付与については一旦置いておきます。


 そうしたら、再度コベニの花に対して記録引揚を使ってみましょうか。

こちらがついでではありましたが、さてはてどうなるのやら。


 以前試した時は、この類のスキルは一度使っていると、二度目以降はそもそも発動しませんでしたよね。


 既に情報が開示されているコベニの花に、二度目の記録引揚が発動。


 発動と共に尊ぶべき誤りの選択のバフの表示が消えました。

効果が適用されたようです。


 再度効果を発揮した記録引揚によって、コベニの説明欄に変化が現れると共に、通知が表示されました。


 通知には、『アイテムの忘れた記憶が修復されました。』の文字。


 これがバフを掛けた状態で発動した記録引揚の影響なのは間違いないのでしょうが、この通知だけでは何のことやらわかりませんね。


 ですが、アイテムの説明欄の変化した部分を確認して、それがどういうことで、どういう影響があったのかを何となく理解しました。


==========

『コベニ』

 美しく華やかに咲いたコベニの花部分。コベニは花部分が広く利用されており、染料や香料の他、蜜が甘くて美味しいとされているが、この個体は美しさを求めた故にその能力は非常に弱い。


※拡張情報

 コベニは周囲の毒素を吸収することで、吸収した毒素への抗体を生成し蜜に蓄積させる能力を持つ天然に存在する解毒薬となっている。


※最古記録

 ――持たず、根を――――――ってゆくことができる。周囲の毒素を吸収して濃縮した蜜を生産し、地表に目立つ色をした花のようなものを地表に露出させることで栄養源となる生物を確保するため、花のように見える部分は生殖能――持たない。


※作製可能効果▼

MP継続回復 一部の状態付与の軽減 追憶:弱花劇毒

==========


 変化は、最古記録の虫食い部分が減ったのと、作製可能効果の部分に『追憶:弱花劇毒』が追加されたことですね。


 これを通知と合わせて考えると、コベニの花の忘れていた記録をスキルで修復したから、弱花劇毒を作製できるようになった……?

 でも、最古記録はあくまで昔の記録で、今の状態とは関係ない様な気がしますけど。


 ふむ。わからないですね。

 そのうち分かることもあるのでしょうかね。


 違和感がありますが、一旦は頭の片隅に放り投げて、作成が可能になった効果を確認してみることに。


 説明を読むと、効果はシンプルに毒を蓄積させる効果を持ったアイテムの作成時に使用すると、与える毒の効果を向上させる、というものでした。

 つまりは、強い毒が作れるということですね。


 戦闘をすることがあるのなら、以前の戦闘でも毒はメイン火力になっていたのですし、いよいよもって薬師のアビリティを取るべきなのではと思ってきました。


 まぁ、それはまだ置いておくとしまして、こうして実益的な効果が出るのなら、他のアイテムにも使っておきたいところです。


 尊ぶべき誤りの選択のCTが明けるまで700 s少しあるので、以前にオーリナさんのお店で買ったタイマーに時間を入力して明けるくらいにわかるようにしておきました。


 この後はステータスの強化にハツメさんの所に寄ってから、『やどかり火霊』『なつかしの珍味』のクエストをこなしに行くといたしましょう。


 水筒の水を使い切ってしまったのと、いつ火炎状態が切れるのかわからないので、一旦中央広場に出て水を汲み、ついでにオオナツの種を植えたミニポーチを取り出して水をあげます。


 バッグから取り出した土からは、小さな双葉が顔を出し、いつの間にやら成長度の表記が5 %に。


 アビリティを持っていなくても育つものなのですね。

 そういえば光が当たらなくても大丈夫なのかなと心配になりましたが、どうしようもないので再びバッグの中に入ってもらいまして、その場を離れます。


 ハツメさんのお店へ向かう道中には、まだスキルを使ってみていなかったアイテムたちを一つ一つ取り出して、記録引揚を使用して説明を開放しておくことに。


 流れ作業で見てゆくと、お店に着く少し前には手持ちの素材系アイテム一通りにスキルを使い終わりました。

 元々持っていたアイテムの種類自体はそこまで多く無いですからね。


 そして色々なアイテムに使ってみてわかったのですが、このスキルは過去が無い、という言い方が正しいのかわかりませんが、古くからあるわけではないアイテムに対してはそもそも発動しないようでした。


 なので、手持ちのアイテムの中で最古記録を開放できたアイテムの数はそこまで多くありません。


 その中でもいくつかは、最古記録に気になる説明がありましたので、これらにバフを掛けた状態でスキルを使ったらどうなるのか、少し楽しみです。


 CTが明けるまで他の事をこなしながらのんびりと待ちましょう。

お読みいただきありがとうございます。


もしどこかで面白いと感じていただけたようでしたら、星を光らせてくださると感動します。

あとブクマとかも(強欲

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 一応日本のツツジはレンゲツツジ以外のツツジは無毒やで。 まあ区別つかないと分からんだろうから子供とかは一律禁止した方がいいと思うけど。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ