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5-9汝、自然を愛せよ

皆様こんにちは。お世話になっております。

からすです。

そういえば、キュウリは最もカロリーの低い果実なのだそうですね。

だから何というわけではありませんが。

●〇●〇


 建物を出て壁沿いに少し移動してゆき、目印の立っている位置周辺に近づきます。


 ここ周辺の壁面沿いには、大小の差はあれどほとんど同じつくりの建物が並び、それらは空き家もあれば利用されていると思われる建物もありました。


 目印の立っている位置にも並び通りに同じような外装をした建物が建っています。

 周りからすれば少し大きいかな、という程度でつくり自体は変わりありません。


 しかし、石造りの凹凸のある壁面にはそのほとんどに丈の長い苔や蔦の類が這っており、ところどころで白や黄色の小さな花が身を寄せ合って集団を形成していました。


 何となしに壁に繁茂するふわふわの苔を撫でると、それが人工物でないこともわかります。


 壁面に伝う多種多様な植物たちの間から覗く、ご用件の方はこちら、の看板の矢印を追いかけ、先ほど同様に建物の横に回り、そこにある扉をくぐりました。


 建物内部は数多くの花や低木類を中心とした植物が並び、天井付近まで伸びる大きな草木や壁や天井を這う蔦類によって満たされており、植物園かビオトープか、と思ってしまうほどです。


 並ぶ草木に目を渡らせていると、奥からこちらに呼びかける声が。


 そちら視線を向けると、草木の合間から覗く窓口が見えます。


 観察を中断して、取り出したチケットを手に窓口へと向かいました。


 窓口にて園芸師のアビリティ習得に来たとことをお伝えすると、採掘師の際と同様、建物の奥から扉を出て、とのことでしたので、草木の間を進み奥へ。


 建物内は通路として開けられている場所以外はほとんどに植物が並んでおり、その通路を進んでゆくと扉へとたどり着きます。


 扉を開くとその先は、数重に重なる柵で囲まれた外となっていました。


 やはり感覚通り、この形の建物は壁を貫通していたのですね。

 せっかく壁を作っているのにこの造りなのは、安全性とかそういうもの的に大丈夫なのか少し疑問ではありますが。


 先を見ると森となっているのが見えますが、境界までは距離があり、左右に伸びるところどころから建物の突出した街壁と森との間はかなり広く切り開かれていることがわかります。


 街門付近は川で、橋の先がすぐ森となっていましたから森とほぼ隣接しているような状態でしたが、壁の外にもこんな風にちゃんと開拓されている場所があるのですね。


 そんな風に周りを眺めていると、扉の前に広がる畑のようになっている場所でしゃがみこんで作業をしていた女性がこちらに気付き近づいてくるのが見えました。


 緑を基調としたワンピースに、つばの広い帽子をかぶり、透き通った翡翠色の長い髪は三つ編みに纏められ、太陽の光を受けてきらきらと煌めきます。


 正直、どちらかと言うと花壇を愛でるお嬢様といった雰囲気で、育てる側には見えませんが、ゲームの中で見た目に縛られる必要もないのも確かですね。


「こんにちは。園芸師の技術を習得しにいらした方ですね?」


 連絡は通っているようで、軽い挨拶を交わした後、誘導されるままに植物たちの植わる間を進み、何も植えられていない地面の露出した場所に到着。


「では、ここで、作業をしてあげてくださいな。

 私は、そこらへんにいますので、終わりましたら、お声がけくださいな。

 心を込めて、相手をしてあげてくださいね」


 そう言ってお姉さんは、自身の作業に戻ってゆきました。


 お姉さんと私以外の人影は見えませんが、このかなり広い畑をお姉さん一人で管理しているのでしょうか。


 あちらこちらで足を止めて作業をしているお姉さんの姿を横目に、私も作業を開始します。


 表示されたウィンドウの達成目標は、『種を植える』だけ。


 支給されたのは園芸道具と花の種が十個。


 園芸道具は小さなシャベルと小さなジョウロ。

 花の種は『コベニ』、という花の種だそう。


 スキルで見てみると、小さな赤い花が咲き、染料や香料の他、蜜が甘くておいしいらしいです。

 拡張情報には、毒素を吸収することで吸収した毒素への抗体を生成し蜜に蓄積させる能力を持つ、と書かれていますから天然物の解毒薬なのでしょうね。


 さて、作業の方ですが、目標は植えるだけですが、工程は『植える』と『手入れ』の二工程に分かれています。


 以前、ポーチに植えたものは手入れとかしていないのですが、大丈夫でしょうか……


 作業を開始すると、まずは種や苗などを植える工程で、以前種を植えようとした時は選択することができなかった項目が選択可能になっていました。


 項目に関しては、植え方に関する内容で、一か所に植える数や深さ、それぞれの間隔といった、それっぽい項目の他に、育成方針や補助アイテムの項目もあります。

 補助アイテムは、所持無しなので今は選択できませんが。


 使用する種を選択すると、作業ウィンドウとは別にコベニの種の理想の植えパラメータが表示されたウィンドウが現れました。

 園芸師のアビリティを持っていると『ある程度』必要な情報がこのように表示されるみたいですね。


 視線を行ったり来たりさせながら項目を選択してゆきます。


 コベニの花は土の深さは浅く一か所に種を一つ、それぞれの間隔はかなり狭く、とするのが良いようですね。


 方針は、最終的な目標を定める形のようで、コベニの花の場合、早く育ったり、蜜が多くあったり、というのが選択できましたが今回は花を大きく綺麗に咲かせる選択にしました。


 工程を開始すると、植えるのに必要な範囲が光の枠で囲まれます。

 そして範囲内の地表が赤く色づきました。


 この工程ではまずシャベルを使って範囲内の土をほぐして下さい、とのこと。


 手にしたシャベルで土を掘り返すと、その場所の赤みが少し無くなり土がほぐれます。

 同じ場所を何度もざくざくと掘り返してゆくと、すぐに土はふかふかになりました。


 他の場所も作業を進め、範囲内の地面の赤みを残さず取り去ってゆきます。

 既に赤みの無い場所をやってしまっても問題はなさそうなので、気が楽でした。


 これくらいでいいかな、と納得できたところで続いて表面に光る点が出現します。


 シャベルの先端でこの点をつつけばそれで植えられるそうなので、点の位置からずれないように全ての種を植えて、植える工程は完了しました。


 次の手入れの工程は、最初だけでなく定期的にやる必要があるそうです。

 最初は水やりだけですが、手入れはその時々で必要となる作業が変わるそうなので結構大変そうですね。


 手入れの必要なタイミングはアビリティを持っていると分かるようになるみたいです。


 水やりは、全体に適切な量の水を撒いてください、とのことで、全体の赤みが無くなるようにするのは同じですが、こちらは先ほどとは違いやり過ぎるとダメなのようですので慎重にゆきましょう。


 使用する水、なんて物も選択可能になっていましたが、今のところは水なんて持っていないので、そのままで。

 ジョウロを傾けると、口からシャワー状に水が出てきます。


 水が土へかかると、みるみるうちに土の赤みが無くなってゆきます。

 細かい調整は後ですることにして、完全に赤みが無くなる前にジョウロを動かし場所を変えました。


 少し色にムラがありますが、まずは全体が薄い赤色になるように作業を進め、ここからはさらに慎重に。

 やり過ぎないように少しずつ水を撒いてゆきました。


 ところどころムラがあるので、綺麗に全ての場所の赤みが無くなったというわけにはいきませんが、それでも全体的には十分綺麗にできたと思います。


 作業はこれで終わり。


 後は先ほどのお姉さんに確認していただけばいいようです。

 周りを見回し、少し離れたところで作業をしているお姉さんを発見。


 声を掛け、終わったことを伝えると、確認のため一緒に私が植えた場所へと戻ります。


 私が植えた場所へしゃがみこむお姉さんの一歩後ろで待機していると、お姉さんが口を開きます。


「心地はどうですか?」


 一瞬、私に話しかけているのかと思いましたが、そういうわけではないようでした。

 その後も、なにかと会話をするように言葉が続きます。


 何となく悪い内容ではなさそう、という雰囲気だけはわかりますが、なにとどんなお話をしているのかはわかりません。


 少ししてお姉さんが、私が種を植えたところへと手をかざします。

 すると、その手元から若葉色の淡い光の粒が地面へと降り注ぎ、たった今植えたばかりの地面から、小さな葉が顔を出しました。

 それは光の粒に触れるたびに急速に成長してゆき、すぐに紅色の小さな花をつけます。

 半透明の花弁を含む、グラデーションのかかったフリルの様な花弁が幾重にも重なり合ってできた丸くボリュームのある花はどことなく、私の好きなカーネーションにも似ていますね。


「あらあら、可愛くなりましたね」


 お姉さんがそう呟いて手元を動かすと、花は姿を消します。


 立ち上がったお姉さんがこちらに振り返ると、その手には今しがたそこにあった花が花束となって抱えられていました。


「はい、とっても上手だったみたいですね。

 以上で、クエストを達成とさせていただきます。

 以降、『園芸師の才』がステータスのアビリティ画面から取得可能です。

 おめでとうございます。お疲れ様でした」


 クエストウィンドウに達成のハンコが押されるのと同時に、お姉さんは手にした花束をこちらへ差し出し、言葉をつづけます。


「手をかけてあげれば、こんな子たちになるのです。

 よろしければ、お持ちくださいな」


 差し出された花束を受け取り、お礼を言ってその場を離れます。


 建物内の受付さんにもご挨拶をしてから通りへ出たところで、花束をボックスにしまいつつ、代わりにオオナツの種を植えたミニポーチを取り出しました。


 成長度の表記は未だ0%ですが、手入れは必要なはずなので、変化のない植木ポーチを手に手入れを意識してみます。

 他のアビリティと同様であれば、これでいいはずですが……


 すると、アビリティを持っていないよ、という警告ウィンドウ共に、先ほどのように土表面が赤みを帯びます。


 なにをしてください、という指示も出ないので、何をすればいいのかわかりませんが、植物の手入れなのですからおそらく水をあげればいいのでしょうけど、ここで気付きました。水なんて持っていません。


 むむむ、今度水筒の様な水を持ち運べるものでも買っておきましょう。


 あの不思議ジョウロは園芸師のアビリティを持っていないと使えないでしょうし、中央広場まで戻れば噴水? がありましたね。


 とりあえず、少し考え事をしつつ、中央広場へと向かうことに。


 なにを考えているのかと言えば、アビリティを取るかどうかですよね。


 気になるものを色々と触れてみたわけですが、どれも楽しかったです。

 どれを取っても損したとは思うことはないでしょう。


 でも、そうなるともっと他のも触ってみたくなってきてしまいました。

 アビリティ習得申請のリストには内容も見ていない沢山のアビリティがまだまだ並んでいます。


 きっと今の私のように、何なら端から端まですべて触ってみたいと思った方も居るのではないでしょうか。


 ただ、今既に取得しているアビリティですら使ったことのないスキルもあります。

 それに、そもそも一番レベルの高いアビリティですらLv.3ですからね。


 まぁ、レベルの部分は気にしなくてもいいような感じがしますが、今既に取得しているアビリティを使いこなすとまではいかなくとも、こうするのがやりやすい、というやり方に安定するまではアビリティの枠を空けておいてもいいのではないでしょうか。


 無理に埋めてしまっても、本当に欲しいものが見つかった時に困ってしまうだけですし。

 統合? というのもあるらしいですが、どうしたらできるのかわかりませんからね。


 そんな風に思いました。


 なので、永遠に放置し続けていたフリークエストを消化がてら、今持っているアビリティとスキルに慣れつつ、アビリティとの出会いを待とうではありませんか、と。

 自分探し的なアレです。


 その中で、本当にこれが必要、と思ったら取ってもいいですし。


 一旦足を止め、道の端へ寄ります。

 フリークエストを消化しようと思ったところで、もう完全に自分がどんなクエストを受けていたか忘れていますので、システムから確認。


 放置していても勝手にキャンセルされたりといったことは無いようで、以前受けた五件がそのままでした。


 今受けていたのは、巡回と物探し、採集、討伐、運搬の五件ですね。


 巡回のクエストは以前にもやったことがありますし、他四件は確か、アビリティ合計レベルが1で受けておこう、ととりあえず受けていたクエストのはずなので、必要レベルと難易度が比例するのであればそんなに難しくはないでしょう。


 巡回クエストは何かのイベントが入って結構大変だったのは記憶に残っていますが。


 とりあえず、オオナツの種に水をあげないと、枯れたりするのかはわかりませんが、かわいそうなので、一旦ギルドに寄って水筒の類をマケボで買ってから中央広場で水を汲んで、ですね。

 その後にフリクエ消化といきましょう。


 あ、ギルドに寄るなら、今のアビリティ合計レベルで受けられるフリクエも少し覗いていきましょうか。


 そうと決まればまずはギルドです。

 ウィンドウを閉じて、相変わらずマップを見ても近道の分からない壁沿いの道を進んでゆきます。


 今度、街中を歩き回ってみるのもいいかもしれませんね。

 この街は裏通りにも色々なお店が所々にありますし、表通りのお店でまだまだ覗いたことのない場所も沢山ありますから。


 あれもしたいこれもしたい。

 一つしたいことを思うと、あちらこちらへと思考がわき道に逸れてゆきますが、それもまた、良いものです。

お読みいただきありがとうございます。


もしどこかで面白いと感じていただけたようでしたら、星を光らせてくださると感動します。

あとブクマとかも(強欲


投稿頻度戻さねば。

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