5-5消化にいいクエスト
皆様こんにちは。お世話になっております。
からすです。
そういえば、甘酒って、飲む点滴、なんて呼ばれていたりもするのですよね。
だから何というわけではありませんが。
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店内へ足を踏み入れると、外からは聞き取れなかった店内の喧騒が耳に届きます。
ひとが多いのは外からも見ればわかりましたが、音はほとんど外に漏れ出ていなかったようですね。
ゲーム的に考えてマップの境目と言ってしまえばそれまでですが、このゲームの事ですから、もしかしたら何かそういう音を遮る仕組みがあってもおかしくはありません。
店内では、独り言をつぶやきながら、ひととおしゃべりをしながら、店員さんとお話しながら、と思い思いの形でお買い物をしておられる方々が。
入り口が開け放たれているとはいえ、やはり外と店内では空気感が違いますね。
いかにも、な冒険のお供感といいますか、ここから冒険が始まる感。
建物の設計は裁縫のお店と変わらないようで、指示されているのも同じく店員さんのいる奥のカウンターです。
違うことと言えば、カウンターに付いている店員さんが五人ほどいらっしゃることでしょうか。
列ができているというほどではないですが、幾つかのカウンターは常に埋まっているくらいにはひとの行き来があります。
「ご用でしたらこちらへどうぞ~」の声に、そちらの空いていたカウンターへ進みました。
ここまでがやがやしていると話をするのに少し困るかな、と心配していたのですが、受付さんと対面すると周囲の喧騒は小さくなり、話すのに不都合がない程度まで静かになります。
大きな声で話さなくても大丈夫そうで安心しました。
対応してくださったのは、肩口に切りそろえられた黒髪に長い耳の垂れたお姉さん。
耳はロバの耳を思い出させます。それをもっと大きく長くした感じで、本当に長い。
ひとの耳のような骨は入っていないようで、そのまま下にてろんと垂れて肩に掛かって、鎖骨の位置よりも下まで垂れています。
いらっしゃいませと、ぺこりとお辞儀をするのに合わせて柔らかに形を変えるのを見るとついつい目が惹きつけられてしまいますよね。
何の種族なのでしょう。やはり、ロバ? にしては随分長いですけどね。
「何か御用でしょうか?」と問いかけてくる店員さんに手にしたチケットを差し出し、習得クエストをお願いします。
裁縫師の時と同様にカウンター内側へ通されると、奥の作業場へ。
ずらりと並んだ作業スペースでは様々な道具を使い作業に勤しむ方々の姿が。
店員さんに言われた番号のスペースに移動し席に着くと、アビリティ習得クエストのポップが出現します。
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【薬師の卵】アビリティ習得クエスト
製薬は、薬性素材を中心とした素材を用いアイテムを作製する技術です。
達成条件:練習用リコンタの作製
支給品:練習用リコンタ作製キット
※このクエストは開始後1時間以内に達成してください。
※未達の場合は再度受注し最初から行ってください。
制限時間:60:00:00
報酬:アビリティ『薬師の才』
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ポンとウィンドウから吐き出された箱の中身を確認。
中身は、支給品の乾燥した渋草と渋草の若葉、浄水と製薬道具となっています。
製薬道具はミニポーチと同じくらいの大きさの革袋ですね。
袋の中には、白い器と棒、金属製の器と棒と柄の付いた小さな網、あと何か模様の彫り込まれた金属板が入っています。
器はどちらも手のひら大で、大きくはありません。
袋を装備してみるとウエストポーチの横にくっつく様な形で装備されます。
ステータス上では位置的にウエストポーチの装備されている位置と重なってしまっているのですが、どちらかが弾かれてしまうことは無いようでした。
製薬道具を装備したことで表示された、作製してみましょう、の指示に従い作製ウィンドウを開きます。
スキルは流石に使わなくていいですよね。
基本的な部分は裁縫と同じようですが、製薬の方はクエスト内では編集らしい編集ができませんので、早速作業の方を開始しましょう。
まずは使用する素材の選択。
もちろん今は支給された素材しか選択できないのですが、ポポタや渋草も一覧に含まれてはいます。
作業を開始すると、白い器が袋から作業台へ現れ、後端が白くぼんやりと光る棒が手元に浮かびます。
器には乾燥した渋草の若葉が大雑把に砕かれた状態で入っていました。
この工程では、器の中身を後端が緑色に光る適正な強さですり潰せばいいようです。
強すぎたり弱すぎたりすると赤色に光るそうなので、やってみましょう。
棒を器の中へと押し付けると、後端の光は赤から黄、緑、黄、赤と目まぐるしく変化を見せます。
それがちょうど緑になる力加減を探り、その状態のまま指示通りぐるぐると中身をすり潰してゆきます。
アシストのおかげか、意識していれば緑を維持するのはそこまで難しくありません。
みるみるうちに粉になってゆく渋草の若葉を、作業終了が通知されるまで無心でぐりぐりと粉砕してゆくことしばし。
微粒粉となった中身がアンプルに詰められた状態で奥にぷかぷかと浮かび、器から消失します。
それをもう一度、今度は渋草の方で繰り返し、第一工程が終了となりました。
次の工程に移ると、今度は袋から金属の器と板が出現し、板の上に器が乗るような形にセットされ、棒と網が手元に浮かびます。
指示では、器に水を注ぎ、適正な温度で加熱しながらすり潰した粉を加えてはかき混ぜて、を繰り返し、最後に煮込んで浮かんでくる灰汁を取ったら完成となるようです。
模様の描かれた板は加熱用のものだったのですね。
それにしても随分複雑な気がします。
板を見ると板の横にはスライド式のつまみが付いていました。
適正な温度は板の模様が全体的に光っているのでまたこれを緑に維持すればいいそうです。
試しにつまみを動かしてみますが、水が入っていないからか、どこに動かしても真っ赤なままでした。
器に水を…… どうやって注ぐのでしょう? と水の入ったアンプルを手に頭を捻っていると、浄水を注ぐ、の文字が現れます。
選択すると器が半分ほど水に満たされ、加熱の指示が出ます。
板についたつまみを上へ。
赤、黄、と緑になる目盛りに移動させます。
するとすぐに器の水に小さな気泡が現れ始め、湯気も上がり始めました。
湯沸かし器みたいな早さですね。
現実ではもっと早いですが。
水が適正な温度まで上昇したところで、次の指示に従ってまずは渋草の若葉の粉を注ぎ入れます。
粉を注ぐのは宙に浮いたアンプルが勝手にやってくれるようで、私はかき混ぜる作業に集中していれば良さそうですね。
器へ注がれてゆく粉を眺めながら手にした棒でぐるぐると混ぜてゆきます。
特に何か注意すべきこともないので、ただの作業です。
楽しいですけどね。
同様に渋草の粉も混ぜ込みましたら、最後の煮詰める作業です。
説明では、黒い灰汁が浮いてくるので取ってください、との事ですが、これ作っているものが黒い液体だったらどうするのか気になってしまいますよね。
それはさておき、コーヒースプーン大の小さな網を手に灰汁が浮いてくるのを待ちます。
少し見つめていると、黒いもやもやが浮かび上がってきましたので掬うと、もやもやはそのまま光の欠片となって霧散して行ってしまいました。
灰汁を消滅させる網……
黙々と灰汁を処理してゆくと、何度目かの灰汁を処理したところで、どろどろと濁っていた器の中身が透き通った液体へと劇的な変化を遂げました。
その後すぐ、器の中の液体が自動的にアンプルに詰められ、四本の『練習用リコンタ』が完成します。
薬品アイテムですので、私個人に使い道はありませんが、一応説明も見てみましょうか。
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『練習用リコンタ』
HPをわずかに回復する、初心者が練習用に作るリコンタ。
製作者:シロ
品質:高品質
※高品質ボーナス:回復量保護※
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透き通った薄緑色の液体で満ちたアンプル。
これが皆様の使う回復薬なのでしょうね。
ただ、この練習用リコンタは使い物にならないでしょうけど。
回復量が10しかないですからね。
ふむ…… 産廃?
あぁ、でも編集で回復力を上げたり、別の効果を付けたりできるのであれば使い道はありますか。
スタック数も999とわざわざ表記されていますから。
薬品過剰があるらしいですし、そんなにあっても仕方ないのかもしれませんけれど。
これをカウンターに持っていけばクエストも完了です。
広がっていたアイテムを回収し、席を立ちカウンターへ戻りました。
店員さんは数人いらっしゃるので、誰に話しかけたらいいのか迷いますね。
誰でもいいのでしょうけれど、一応、来た時に対応してくださったお姉さんへと声を掛けます。
声を掛けると、お姉さんがこちらを振り返り、私は完成したリコンタを手に作業が終了した旨をお伝えいたします。
カウンターを出て、お姉さんに作製したリコンタを差し出すと、瓶ごと横の機械へセット。
機械からはセットされたアンプルを貫くように光が照射されており、それが何度か繰り返されると、お姉さんが手元のウィンドウを眺めます。
返却されたリコンタを受け取り、次の言葉を待つ私。
「はい、素晴らしい出来ですね。
支給品アイテムは回収させていただきますね」
その言葉に一安心。
作製したリコンタ以外のアイテムが回収されます。
これで、『薬師の才』が取得できるようになりましたね。
クエストウィンドウにも達成のハンコが押されます。
店員さんにお礼を言って、お店を後にする前に、売っているものも少し拝見。
やはり薬品類が多く、私には使えないものがほとんどですね。
レシピは裁縫のように、これというわけではなく、素材の系統で分かれているようでした。
私の場合は、リペアオイルを作ることのできるレシピや相手に使える薬品系のレシピが欲しいのですが、どれになるのでしょう?
まぁ、そういうのはまた後でとして、他のクエストを先にさくさくと進めてゆきましょうか。
次は木工師のクエストでしょうかね。
目印は中央広場を挟んだ街の奥側に立っていますので、そちらへ向かいます。
技師系のものはほとんどが街の奥側に集中していますが、街の奥は職人街とか意識的にそういう作りになっているのでしょうかね?
木工師のクエスト開始地点は装備修理屋さんのお向かいさんです。
お店へ入ると、家具を中心に木製の品が多く並び、店内は木と家具特有のワックスや油、塗料の香りに満ちています。
家具屋さんの匂いですね。
苦手な方も多い香りですが、私は意外と好きなのですよ。
店内には、私以外のお客さんはちらほらといる程度。
家具なんかはイメージとして、ハウジングの様なエンドコンテンツ感ありますからそれはそうですよね。
私もハツメさんが木工師からの派生職だというのを聞いていなければ優先順位はもっと低かったでしょうし。
ゆったりとしたジャズの流れる静かな店内を他のお店と同様に奥のカウンターへと進みます。
カウンターでは、白髪を後ろに流し、モノクルをかけ、ぴしりとしたスーツに身を包んだ老紳士が本を読んでいらっしゃいました。
とても完成された空間に、声を掛けるのを思わずためらってしまいますが、こちらから声を掛けずとも、カウンターに寄った私に気付いた老紳士様がこちらに声を掛けてくださります。
「いらっしゃい。
何か、ご用でしたかな?」
問いかけに、手にしたチケットを渡し、クエストをお願いしました。
またカウンター奥へと通され、奥の作業場へと進みます。
奥の作業場は他の場所とは違い、あまり人が目につかず、あちらこちらからこんこんと木を叩く音だけが作業場に響き満ちていました。
指定された作業スペースへと着くと、今までよりもずっと広い作業スペースとなっていました。
扱うものが大きいですからね。
クエストのウィンドウが開き、開始待機となります。
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【木工師の卵】アビリティ習得クエスト
木工は、植物、木材類を中心とした素材を用いアイテムを作製する技術です。
達成条件:練習用ステッキの作製
支給品:練習用ステッキ作製キット
※このクエストは開始後1時間以内に達成してください。
※未達の場合は再度受注し最初から行ってください。
制限時間:60:00:00
報酬:アビリティ『木工師の才』
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キットの中身は木材に瓶に入ったクリーム、そして木工道具である布とのこぎり、とシンプルなものでした。
木工道具を装備すると、ウエストポーチの反対側、スティレットと同じ位置の腰の所に布とのこぎりが吊るされる形で装備されます。
作製ウィンドウを開き作業を開始。
工程は木材を切る作業と、磨く作業があるようです。
切る作業では、切るというよりかは削るといった感じが近いような感じでしたね。
木材の赤くなっている部分の指示に従ってのこぎりの刃をあてると、その部分が木屑となってゆくので、赤い部分を残さないように削り落としていく作業です。
途中どこまで削っていいのか混乱してきたときもありましたが、特に問題もなく作業は終了。
磨く作業では、作製物全体が赤くなっているので、布にワックスを適量つけて磨いていくと、磨いた場所の赤色が消える仕様になっていました。
これが意外と難しく、ワックスをつけすぎたり、磨きすぎたりは品質を落とす原因になるようで、ムラなくやろうと赤い場所を徹底的に消そうとすると、その周辺のもう既に赤色が取れている場所にも影響が出てしまうため結局、穴あきというか、細く赤い線が残る結果となってしまいました。
私がやり方を間違えているか、あるいはもっと細かくできる道具なんかもあるのかもしれませんね。
少し物足りない出来な気もしますが、さくっと完成させたアイテムを確認してみます。
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『練習用ステッキ』
魅力を際立たせるおしゃれアイテム。初心者が練習用に作るステッキ。
製作者:シロ
品質:高品質
※高品質ボーナス:魅力向上※
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おっけー、検索エンジン。魅力とは?
そんなステータスありましたっけ?
お読みいただきありがとうございます。
もしどこかで面白いと感じていただけたようでしたら、星を光らせてくださると感動します。
あとブクマとかも(強欲