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1-4チュートリアル

皆様こんにちは。お世話になっております。

からすです。

そういえば、イカには心臓にあたるものが3つあるそうです。

だから何というわけではありませんが。


●〇●〇


 ナディちゃんに別れを告げ、一旦真っ白に染まった視界が徐々に戻ってきました。


 ここはどこ? わたしはシロ。

 なんてね。周りを見てみましょう。


 周りを見渡すと、そこは木目調の大部屋が広がっています。


 これは? 残っているところには現代も廃れずに残っているという、道場というやつっぽいですね。


 物は何もない板の間の部屋。


 私が正面奥に目を向けるとそこには、藤色の着物に黒の袴、そして一本の木刀を抱え目を瞑って座り込む一人の女性がいました。


 彼女はうっすらと目を開け、こちらを一瞥すると、


「このチュートリアルは飛ばすことができます。腕に自信あるのなら飛ばして構いません」


 開口一番、こちらに向けてそう言い放ちました。


 どんよりとした空気を放つ彼女は以降再び目を瞑ると微動だにしなくなってしまいます。


 どうしたのでしょう?

 私、何かしてしまったでしょうか? それはないですね。今来たばかりですし。

 もしかして、みんなスキップするから落ち込んでいるとかでしょうか?


 そんなはずはないですよね。だってこの手のゲームで、チュートリアルを飛ばしたらスタートダッシュに失敗すること請け合いです。


 いくら人と変わらないとはいえ、データとして存在する彼女たちにアレは来ないでしょうし、私の前にチュートリアルを受けた人の態度が悪かったとか、そんな感じの理由だと考えるのが妥当でしょうか?

 今でも、AIはAIでしかないからと言って、AIには無礼に接する人が一定数居ますからね。AIでも個体によっては嫌な思いをすることもあるでしょう。


「はじめまして。私はシロと申します。チュートリアルを指導してくださるということで、お願いしたいのですが、よろしいでしょうか」


 私は少し丁寧目を心掛けて、正面の女性へ話しかけてみます。


 くわっ

「まじでござるかっ!」


 すると、彼女は瞑っていた目を見開き、手にしていた木刀を床に投げ捨てると、こちらへ詰め寄ってきます。

 もしかして、ほんとにスキップする人が多かったんでしょうか? 不思議なことですね。


「まこと受けていくのでござるか!?」


 彼女は先ほどまでのクールなお師匠様然とした雰囲気が嘘のように、私の肩を揺さぶりながら見開いた目で私を見つめます。口調まで変わっちゃってます。


 あのー、そろそろ酔うのでやめてもらえると嬉しいんですが……


「は、い」


 彼女を押し返しつつ、返事を返します。


「そうでござるか! それでは! チュートリアルやっていくでござるよ! わからないことがあれば何でも聞いてほしいでござる!」


 押し返した私の両手を取りぶんぶんと上下に振るように握手をすると、床に転がっていた木刀を拾い、峰を肩に乗せる形で手に持ちました。


「おっと! 挨拶がまだでござったな。――メキャッ―― 某はこのチュートリアルを案内する『ツバキ』と申す。以後、よろしくお頼み申す!」


 それがし…… そんな一人称が使われているところを聞いたのは初めてです。


 ツバキさんは腰を90度近くまで曲げて挨拶をしました。

 勢い良く振られた長いポニーテールの先が行きと帰りの二度、私の目の前すれすれを通り過ぎていきます。

 先程までは落ち着いた年齢の剣士、といった感じでしたが、これくらい元気にしていると10代くらいの見習い剣士っぽくも見えます。


 ああ、途中の変な音は、ツバキさんが手にしていた木刀を床に『突き刺した』音です。

 見習い剣士にはできそうもない芸当ですね。あくまでも、っぽく、ですから。


「シロです。よろしくおねがいします」

「うむ。――ズボッ―― それでは、チュートリアルを始めるといたそう!」


 私ももう一度お辞儀をしたところで、チュートリアルが始まります。


「……おお! シロ殿は機構人形でござるか。

 ふむ、それではまずは、共通的な部分の説明からしていくとしよう。この世界で最も重要な要素、アビリティおよびスキルの説明からでござるな!」


 具体的なところは何の説明もないままだったので気になっていたアビリティとスキルについてですね。


「さて、まず『アビリティ』とは、この世界に生きるシロ殿らの持つ『才能』であると考えてほしいでござる。

 そして、才能を持つ者が才能を持つ行為をした際に、その習熟度に応じて与えられるものが、技能、つまりは『スキル』なのでござる」


 と、そこで言葉をいったん切ったツバキさんが、軽く木刀で木の床を叩きました。

 似たような動作をナディちゃんもやっていましたが、それは彼女たちのコンソール的な何かなんでしょうか?


「と、口で言っても、わかりづらいでござろう? なので今、一時的にシロ殿にとあるアビリティを付与したでござる。

 各種ステータスの操作は、『操作したいステータス・行う操作』を念じれば行うことができるでござる。

 さあ、アビリティを確認してみてほしいでござるよ」


 そう言われて、アビリティ・表示、と念じると、前にウィンドウが現れてステータスのアビリティの部分が表示されました。これは普段の思考操作と似た感じですね。楽でいいです。


 アビリティの欄を見ると、後天性アビリティの欄に一つだけ『もう少し多く』というアビリティがありました。

 そのアビリティを開いてみます。


==========

『もう少し多く』Lv.0

人よりも、もう少しだけ多くのものを。


スキル▼:A 剛腕


STR+3

==========


「確認したでござるな? そのアビリティは言うなれば『人より多く、あるいは重い物を持つことのできる』才能でござる。


 アビリティを確認しながら聞いてほしいでござる。

 アビリティに含まれるのは、熟練度である『レベル』、アビリティの『説明』、得られる『スキル』、そして上昇する『ステータス値』でござる。


 このレベルは、『才能を伸ばす』ことで上昇していくものでござるな。


 もちろん、才能のない行為が、できないわけではないでござるよ。」


 ツバキさんがそこで言葉を一旦切ると、また床を叩く。

 すると、大広間の空いている場所にずしん、と音を立てて大岩が現れました。


「さて、次はスキルの説明でござる。

 この大岩の重量はおよそ10。まずはそのまま持ち上げようとしてみるでござるよ」


 ツバキさんに促され大岩の前に立った私は、抱えるようにしてその大岩を持ち上げようとしますが、びくともしません。


「次は、『剛腕を使う』という意思を持って持ち上げようとしてみるでござる」


 言葉に従って、剛腕を使う、という意思を持ちつつ、先程と同じように大岩を抱えます。

 うおぉ。うなれ、わたしの筋肉。


 すると、先程までは地面にくっついているかのように重かった大岩が、まるで10キロぐらいのお米を持っているぐらいの感覚で持ち上がったではありませんか。なかなか面白い感覚です。


 十分重いんですけどね? 私は普段の買い物で10キロのお米なんて買ったら家に帰るころには瀕死です。

 非力じゃないです。この成長しない身体が悪いんです。


 このまま持っていると腰をやられてしまいそうなのでさっさと下ろします。VRなのでそんなことは起こらないんですが、気持ち的に。


「それがスキル。才能に含まれる実益的な技能でござる。


 こういった、自分の意思で用いるスキルを、『アクティブスキル』と呼ぶでござる。

 一方で、自動的にその効果がしかるべきタイミングで発揮されるスキルもあるでござるよ。そういったものは、『パッシブスキル』と呼ばれるでござる。


 これらは、スキルの横にあるAやPの文字で確認することができるでござるよ。


 適応条件は、スキルの説明を読むことで確認できるので、新しいスキルを習得した折には確認を怠ってはいけないでござるよ?」


 大岩を床に下ろして、説明を聞きながら、アビリティを確認。

 確かに、剛腕の横にAって書いてありますね。これが、アクティブスキルですよって意味なんですね。


「さて、このスキル。例えば【剛腕】は、アクティブスキルであり、無条件に一時的に筋力『STR』を上昇させるだけのものでござる。

 その効果はあくまでも一時的であり、再使用が可能になるまでの待機時間、クールタイム『CT』は二十秒となっているでござる。


 しかし、それ以外にも。一部のものを除きアビリティには持っているだけでステータス値の上昇効果があるでござる。


 この場合、STR+3というのがそうでござるな。これは永続的なものであり、基本的にはこれがステータス的な個性になるのでござるよ」


 これは、確かにアビリティが重要、と言われるわけですね。

 こういう基礎的な部分ならネットの攻略に載ってそうですけど、やっぱり実際に体験したほうが楽しいですね。


 まあ何より、最初から攻略見ちゃうのも無粋ですし。


「そして、このアビリティというものはレベルの成長に伴って変化していくでござる」


 ツバキさんがそういってまた軽く床を叩く。

 私の見ている目の前で、ウィンドウに表示されていたアビリティの内容が徐々に変化していき、新しく二つのウィンドウも現れます。


 ツバキさんが再び話し始めた時、私の前に並んだ三つのウィンドウに表示されていたのは『筋力』『勇気』『優しさ』とどれも少しずつ違ったものでした。


==========

『筋力』Lv.1

鍛えた。だから筋肉がついた。当たり前のことだ。


スキル▼:A 剛腕

     P 筋肉への憧れ


STR+6

==========


==========

『勇気』Lv.1

戦い、進め。守るべきものを守るために。


スキル▼:A 剛腕

     A 勇者への憧れ


STR+4 INT+1 LUC+1

==========


==========

『優しさ』Lv.1

その力は、他者のために。ただ、生き、生かすために。


スキル▼:A 剛腕

     P 平和への憧れ


STR+3 HP+60

==========


 表示された三つのアビリティを見比べていると、ツバキさんが話し始めました。


「それらのスキルはどれも『もう少し多く』が成長した姿でござる。もちろんこれら以外にも沢山あるでござるよ。

 熟練度を上げた方法によって、アビリティの成長の方向が変わるということでござる」


 テキストでなんとなくどういう風に育てたらどうなるのか、みたいな所がわかりますね。私もちょっと意識して育ててみましょう。


「さて、長くなってしまったが、アビリティ・スキルについては以上でござる。何か質問はあるでござるか?」


 何かありますかね? ふむ……

 とくにはないでしょうか?


「大丈夫です」

「では次に参ろう!」


 次は何でしょうね?


「続いては、装備・戦闘についてでござる!」


 今度はツバキさんが木刀で部屋に堂々と鎮座していた大岩を軽く叩きます。


お読みいただきありがとうございます。


もしどこかで面白いと感じいただけたようでしたら、星を光らせてくださると感動します。

あとブクマとかも(強欲

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― 新着の感想 ―
[一言] >再使用が可能になるまでの待機時間、キャストタイム『CT』は二十秒となっている “再”使用まででしたら、キャストというよりもリキャスト、もしくはクールタイムの方が表現としては適切でしょうか?…
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