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幻のアイテムショップ『白』~正式名称『シロの物置』~  作者: 黒鳥からす
4_本編四章『寄り道こそがメイン』
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4-6全部使えば何とか

皆様こんにちは。お世話になっております。

からすです。

そういえば、日本では雨にも四百以上の名前があるそうですね。

だから何というわけではありませんが。

●〇●〇


 弾丸のように飛び掛かってきた霊森狼に合わせて発動された羽々流々の歩法が、もっと早く、と警告を出します。

 AGIが足りないのかもしれません。


 すれ違いざまに霊森狼の爪の先が脇を掠めます。


 脇からダメージエフェクトがこぼれます。

 今ので46ダメージ。


 直撃判定? それとも、掠っただけでこのダメージなのでしょうか。もしかして、羽々流々での回避に失敗したらダメージが増えるとか?

 なんだか少し不安になりましたが、そんなのんびりと考え事をしている暇はなさそうです。


 反転し、地面へ着地した霊森狼を見ると、着地した地面で反転し身を屈め、飛び掛かりの体勢を取っている姿が。


 先ほどの様な勢いがなければ避けることはできるでしょうし、考え事は一旦置いておいて、身構えます。


 そのまま地面を蹴り、大きく口を開けこちらへ牙を向けてきたところを回避。

 こちらは比較的余裕をもって避けることができそうです。


 回避と共に短剣を振り12のダメージが、その時、想定外の出来事が起こりました。


 すれ違いざまに霊森狼を斬りつけた短剣から、がしゃん、と砕けるような音が響きます。

 なにごと?


 ちらりと短剣の状態を確認すると、短剣には今までついていなかった『刃こぼれ(小)』の状態異常デバフが表示されていました。

 同時に、ポーン、と通知音が。


 勝手に一枚のウィンドウが小さく開き表示されます。

 戦っている最中に目の前に出てきたりしなくてよかったですね。


 今は霊森狼もうろうろと跳び掛かってくる様子もないとはいえ、目を離してしまうわけにもいきませんので、横目にちらりと確認するだけに止めますが、とんでもないものが見えたのは私だけでしょうか?


 チュートリアルクエストとか書いてありませんでした……?


 内容は後で確認するとして、今は戦いに集中。

 ウィンドウは閉じて相手を正面に捉えると、また飛び掛かりの助走に木々を蹴り、速度をつけています。


 あれを完全に避けるのは難しそうですね。


 風の声を発動して再度回避を試みますが、また同じように霊森狼の爪が私の脇を捉え、ダメージを与えます。


 とはいえ、その後の跳び掛かりは避けられるので、しっかりと回復していればやられることは無さそうです。

 攻撃可能なタイミングはこの時だけなので、回避時に攻撃を加えていきますが、刃こぼれの影響か、ダメージが9に。


 そして、一応これで総ダメージが50を超えたはずですが、倒れる気配はありません。

 やはり森狼さんより体力は多いのですね。


 私の体力の方は、次の攻撃を受けたら回復しましょう。


 収納から取り出す操作をして、使う、となるとどこかの攻撃の直撃を覚悟しなくてはいけません。

 あとどれくらいで倒せるのかもわかりませんし、直撃でどれくらいのダメージ貰うのかわかりませんから。

 すぐに使えるレッグベルトとウエストポーチに入っている分の八本はなるべく節約していきましょう。


 初撃はやはり回避不能。

 MP切れで風の声が使えないのが影響しているのか、かなり深く入ってしまったようで、ダメージが71まで上がってしまっています。


 その後に続く攻撃の方は風の声が無くても避けられることに変わりないのが救いですね。

 攻撃タイミングはここだけなので、これが無くなると困ります。


 交戦から一撃を加え、距離が取れている間にレッグベルトからリペアオイルを取り出し回復。

 これで残りは七本です。


 引き続き、攻撃のパターン自体は避けられない攻撃と着地後の跳び掛かりだけなのですが、五度の衝突を繰り返しているうちに、短剣からさらにびしっ、と嫌な音が。


 短剣を確認すると、刃こぼれが小から中に。


 ここまでで、大雑把に計算するとおそらく総ダメージが100を超えたはずなのですが、まだ倒せないのでしょうか。


 隙なく使える残りのリペアオイルは五本。


 次の交戦によって与えられたダメージは6になってしまっていましたが、そのダメージによって、変わらず攻撃していた霊森狼についに変化が現れました。


 喜ばしい変化と言えるかは微妙な所ですが、先が見えないよりはましです。


 全身の毛の間からきらきらと光の欠片を散らし始めた霊森狼は、今度は跳ぶのではなく、地を這うように素早く走り寄ってきます。

 散る光が走る軌跡を残し綺麗ではありますが、見ている場合ではありません。


 速度自体は跳び掛かりよりも遅いのですが、羽々流々の感覚が避けるのが困難であることを伝えてきます。


 それでも回避行動は取りますが、直後、身体が弾き飛ばされる感覚。


 強い衝撃、というわけではなく、大きな柔らかいゴム製の何かに体当たりされた様な感覚が近いですが、大きく弾き飛ばされた私は背後にあった木の幹へぶつかります。


 すぐに体勢を立て直そうとして、かくんと視界が下にスライドし膝をついてしまったところで、固定されてしまったかのように立ち上がれないことに気付きます。


 その間も、正面からまた霊森狼は走ってきており、何の抵抗も出来ないまま体当たりの直撃を喰らってしまいます。


 それによってまた大きく後ろに弾き飛ばされたところで普通に動くことができるようになりました。


 霊森狼は体当たりした反動を使って空中でくるりと身を翻し、後方で着地。


 今の一連だけで、200近いダメージを貰ってしまいました。


 あれを喰らうのはまずいです。

 かといって羽々流々でも避けられないとなるとどう避けたらいいのやら。


 霊森狼さんは先ほどの攻撃で疲労したのか、舌を出して大きく身を揺らしています。


 チャンスかも、と思いまして近づいてみたのですが、ぴょんと後方に飛んで行ってしまって近づくことができません。

 やはりカウンターしかないのでしょうか。


 次の攻撃に備え回復をしてから少し考えてみます。


 先ほどは明らかに当たっていない段階で既に弾き飛ばされてしまっていましたし、そういえば羽々流々は範囲技を避けられないはずです。


 となると、羽々流々に頼らず大きく避ければ、攻撃ができませんが避けること自体はできるのではないでしょうか。


 それで避けられたとして、攻撃をどうするかは問題ですが、まずはそれだけ確認しておきましょう。


 疲労から回復したのか、再度走ってくる霊森狼の直線状から大きく横へ跳び、回避します。


 予想は的中。

 今度は弾き飛ばされることもなく、回避することに成功しました。

 すぐに霊森狼の方を見ると、反転してまた走ってすぐそこまで迫ってきている姿に、慌てて飛び込むように横に回避。


 ぎりぎり間に合ったようで、後方で私のいた所に軌跡を残して通り過ぎてゆく姿が見えました。


 直後、どかん、と大きな音と共に直線状にあった木へ霊森狼が衝突し、ふらふらと身体を揺らしています。

 よく見ると頭の上でひよこがくるくると飛び回っています。

 なんでそんなところだけポップなのでしょうか……


 ともあれ、ここが攻撃チャンスとすかさず近寄り攻撃を加えていきます。


 三回ほど攻撃を加えたところで霊森狼が

 頭を振り、目を覚ましました。


 四回目の攻撃を加えようとしたところで、霊森狼が大きく吠えたことで発生した衝撃波の様なものに弾き飛ばされ、距離が開きます。


 衝撃波に30程のダメージを貰いましたが、それだけで追撃は無いようでした。


 霊森狼はさらに後ろに跳び体勢を整えます。


 要領は分かりました。

 分かればダメージを貰わない分こちらの方がいいかもしれません。


 と思っていたのも束の間、大きく吠え声を上げたかと思えば、身体から散る光の欠片の量が増え、一段と強い光を纏うようになりました。


 それによって走ってくる速度がかなり早くなっており、もう少し早くなれば、跳び掛かり時の速度にも負けないほどのものとなりそうです。


 それでも何とか避けて、二度目の折り返しも避けて、通り過ぎて行った霊森狼が木に激突。


 先ほどよりも一段と大きな衝突音と共に、衝突した木の幹の半分ほどが綿のようにはじけ、抉れていました。


 HPはほぼ満タンですが、それでも直撃したら一撃なのでは? と思わせる威力の突進を見て若干空恐ろしいものを感じましたが、攻撃チャンスを無駄にするわけにはいきません。


 霊森狼が輝くのに合わせて、頭の上のひよこたちも輝きを増していますが、そんなことは気にせずに、すぐさま近づき攻撃を加えていきます。


 また三回ほど攻撃を加えたところで、目を覚まし、咆哮。

 咆哮による衝撃波のダメージも増えています。


 リペアオイルを二本使い、全快近くまで体力を回復しておきます。


 即座に使える分は、これで残り二本。


 あとどれくらいの体力が残っているのかもわかりませんが、一旦攻撃チャンスをリペアオイルの補充にまわしてもいいかもせれませんね。


 そんなことを考えている内に、森狼から溢れる光がさらに強く。


 先ほどよりもさらに早くなっているはずです。動きをよく見て回避のタイミングを計ります。


 地面を蹴ったその突進の初動を見た瞬間、その速度に避けられないことを悟り、反射的に手にした短剣を突き出しました。

 意図して突き出したというよりは、身体を庇うために反射的に出た、という方が正しいのでしょうが、それがまだしも功を奏し、撥ね飛ばされはしたものの霊森狼へ14のダメージを与えることができました。

 この時、撥ねられたのと同時に短剣からべきんという、いやな音が鳴ったのに気づくのはもう少し先です。


 吹き飛ばし効果によってまた行動不能になってしまった私の元へ、弾丸のような、いえ、むしろ流れ星のような霊森狼がとどめを刺しに突進してきます。

 ワー、キレイダナー


 完全に行動不能ですので、もう見ていることしかできず、私は流れ星に撥ね飛ばされ、ぽーんと宙を舞いました。


 地面へ落下したところでさしたる衝撃は無いのですが、心情的に背中からの落下にぐへっとなってしまいます。


 起き上がり、霊森狼の方を確認すると、攻撃後の疲労状態。

 喰らってしまいましたが、喰らってしまったものは仕方がありません。疲労状態は少し時間があったはずですし、今のうちにリペアオイルの補給も出来そうです。


 HPを確認すると100を切っており、今の一連だけで400オーバーのダメージを貰っていたようです。

 上げていてよかったHP……


 他に、今ので腕と胴が中度劣化に、それ以外が軽度劣化に、さらに、腕と胴は軽度消耗状態になった通知が出ていました。

 ちらりと見ると、腕にわずかに細いひび割れが走っています。胴の方もそうなのでしょうね。


 さらにさらに、ポーンと固有チュートリアルクエストの通知も表示されます。

 内容は整備と修繕についてですね。

 確かに、今までは『自己○○』のスキルで直していましたが、その説明がありませんでした。


 それはいいのですが、問題はこれですよね。

 武器の破損。


 早すぎますよね。

 先ほど刃こぼれになったばかりじゃないですか。


 アイテム名が『刃折れの短剣』に変わってしまい、使用していても攻撃に影響しないようなので、鞘に戻します。


 ふむ。

 どうしたものでしょう。

 ……どうしたものでしょう。


 どうしようもないので素手で戦うしかないのですが、ダメージ通るのでしょうか?

 ここまで来たのになす術が無くなってしまいました。


 せめてもの救いは、疲労状態から復活した霊森狼の身体から溢れる光の欠片が最初の程度に落ち着いていることでしょうか。


 1とか2とかでもダメージが通っていただければいいのですが。


 そう祈りながら突進を躱します。

 やはり最初の時程度に速度も落ちており、難なく避けることができました。

 早い時を経験していると、遅く感じますね。


 反転後の二撃目も躱し、木へ衝突。


 ふらついているところに、素手で殴りかかります。

 ぼこんと胴体を殴りつけると、相変わらずクッションを殴りつけたかのような感覚と共に…… ダメージポップが出ません。


 おーまいごっと。


 まだです。まだですよ。まだ策はあります。


 バッグの中から急いで石を取り出して、思い切り投げつけます。

 森狼にも1のダメージしか出ませんでしたが、1でも出てくだされば御の字です。


 祈りながら投擲された石はピヨる霊森狼へ直撃し……

 1のダメージを弾きだします!


 この世界の神様に感謝をささげて、石を投擲していきます。

 とはいえ、あるのは1スタック分36個。

 全弾命中で36ダメージです。


 これで倒せなければ、もういよいよお手上げです。


 攻撃の重さには関係ないのか、変わらず三度の攻撃でピヨりから回復した霊森狼が咆哮を上げますが、遠距離から石を投擲している私が吹き飛ばされることはありません。


 光を増した二段階目。

 こちらも順当に躱して、3ダメージ。


 さらに光を増した三段階目。

 これは無理ですね。

 半分諦めモードで弾き飛ばされ、またぽーんと宙を舞います。


 削れたHPは即座に回復していきます。

 HPに関しては攻撃後のピヨりや疲労があるので、全く問題ありません。


 疲労状態であれば石も当てられるのでは。と思いましたが、避けられた時がもったいないので、やめておきましょう。

 今は、1ダメージが、大事です(切実


 そして続く一、二段階目とダメージを与えていたその時でした。

 そう、石で与えたダメージの累計が11になったその時の事でした。


 ふらふらとピヨっていた、霊森狼が空に向かって弱弱しい遠吠えの様な声を上げ、その身を光の欠片に変えて消えていったのです。


 ドロップやアビリティのレベルアップの通知が聞こえる中、半分諦めていた思わぬ達成に、しばらくぼんやりとその場で立ち尽くしていました。

お読みいただきありがとうございます。


もしどこかで面白いと感じていただけたようでしたら、星を光らせてくださると感動します。

あとブクマとかも(強欲


石さいきょう。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >ウィンドウは閉じて相手を正眼に捉えると、 「正眼」は剣道の中段の構えのこと、この文の前後を考えると「正眼」でなく「正面」が適当かと思います。 誤字脱字ではないのでこちらに書きます。
[一言] 石のおかげだ……
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