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幻のアイテムショップ『白』~正式名称『シロの物置』~  作者: 黒鳥からす
4_本編四章『寄り道こそがメイン』
31/62

4-1まだまだ続くよ

皆様こんにちは。お世話になっております。

からすです。

そういえば、花のアサガオはヒルガオ科サツマイモ属だという……

だから何というわけではありませんが。

●〇●〇


 ゲームからのログアウトを済ませて目を覚ますと、もう部屋はすっかり真っ暗。足元灯のわずかな光が暖かく部屋を映しています。

 照明を入れて部屋をでると、廊下には既に照明がついておりリビングからも光が漏れていました。


 リビングに入るとふわりと生姜焼きの香ばしい香りが漂い、母と父の姿が。

 席に着いていた母が開いた扉に反応してこちらを見て目が合います。


「あら、まだ起きてたの? 若いわね~」


 私をそのままわずかに大きくした様な見た目の母。

 母は私目線でも可愛いのに、似ているはずの自分を鏡で見るとそうでもないのはなんなのでしょうね。

 

 母似の容姿に父似の目元が乗ってしまったのが原因な気がします。

 あと父譲りのさぼり魔の表情筋。


 父は全てが合わさっていい塩梅のイケメンだというのに、なぜ……


 相も変わらないこの世の理不尽を体感したところで、母に声を掛けます。


「お帰りなさい」

「はいはい。ただいま~」


 キッチンから出てきた父もこちらを認識して声を掛けてきました。

 手には生姜焼きの乗った皿を持っています。


 うちではお料理を作るのは主に父か私の役目。

 母も料理が出来ないというわけではないのですが、少々…… いえ、かなり雑なので掃除も含めると私たちがやった方が楽なのですよね。


 まぁ、うちは祖父母の家まで含めて、家風としてできる人ができる事をできる時にをやればいいという感じなので、気にしたこともないですが。


「ただいま。ダメとは言わんが、生活リズムを崩すのは程々にな」


 父が席に着きながらそう言ってきます。エスパーでしょうか。

 長期休みの期間だと、昼夜が逆転してしまうことも多いですよね。


 そんな軽い挨拶を済ませた後は、ご飯食べた? と聞いてくる母に先に食べたからしっかりした物はいらないことを伝え、私も水分補給と冷蔵庫のご飯を御釜に戻しつつ夜食におかか醤油のおにぎりを作り席に着きます。

 おにぎりをお腹に収めながら今日あったことその他、といっても何かあったわけでもないので主に聞く側ですが、他愛もない会話を交わし、なんだか若干いちゃいちゃし始めた二人を放置して、先に部屋に戻ります。


 部屋に戻る際に父から掛けられた「ゲームも程々にな~」という言葉に、今日だけ、今日だけ、と心の中で言い訳をしながら。


 部屋に戻り照明は消した状態で一応タイマーを明日の六時に設定しておきましょう。

 父にも言われてしまいましたから、一応生活のリズムは崩さないようにだけ、眠くなったらお昼寝すればいいですし。

 寝食を惜しんでプレイを続けるというのは身体に悪いでしょうからね。

 まだまだこれからというところで、万が一にもゲームを禁止されてしまったら悔やんでも悔やみきれません。


 一通りの準備と制限を済ませて再度ログイン。

 意識が沈み込み、耳に広場の喧騒が戻ります。


 リアルにいたのは時間にして数十分程度ですので、ゲーム内の空はまだ夜の暗闇のまま。

 まずはマーケットボードに魔石を売りに行きましょう。


 その場を後にし、人波の隙間を抜けながらギルドへと進みます。

 ギルドは変わらず多くの方が出入りし、夜の活気に包まれておりました。


 ちらりと見た範囲で一番活気があったのはクエスト受注広場で、もちろんクエスト受注用の水晶玉の様なものに触れて操作しておられる方も多くいらっしゃいますが、それ以上に広場の端にある椅子で休憩されている方の方が多くいるのはなぜだったのでしょうね?


 マケボ前に到着し、マケボに残り二つの水属性魔石を現在の最低出品価格と同じ値段で出品。

 何度か更新をしてみましたが、流石に即売れということはなさそうです。


 目的通り、お金稼ぎに行きましょうか。

 途中でモブと戦っていれば戦闘系も上がりますよね。


 マケボを離れギルドを出ると空がわずかに明るくなってきているように感じました。

 前と同じ時間に開くのであれば、街門が開くのはもう少し後のはずなので、またステータスの確認がてら街門前で待っていましょうか。


 街門前広場に到着すると、広場にも多くの方が待機しており、門が開くのを待っていました。

 私も門が開くまで待つとしましょう。


 疲れるわけではないのですが、気分的にどこか座れるところはないかなとあたりを見渡してみたものの、当然多くの人が待機している周辺では皆様同じことを考えるのか空いていそうな場所はありません。


 こんな時の為に今度から椅子でも買っておこうかなと思いつつ、近場の壁に寄りかかりステータス画面を眺めます。


 やはり、DEF(防御力)とSTR(筋力)が低すぎますよね。

 ただ『羽々流々』もあるのでプレイスタイルを回避主体とするのであればDEFはそこまで必要なさそう、という想像。これはしっかり戦闘をしてみて、どこまで回避性能が高いのか、というのを把握しないといけません。


 現状は森狼さんの一撃を正面から受けると大体60前後。

 おそらく森狼さんもただの一般モブだと思いますし、貰い過ぎなのでしょうか。


 SPがまた少し増えていましたが、今の所不満はありませんし、こんなステータスではどうしても無理な所が出てくるでしょうから。そうなった時の為にため込んでおきましょう。


 APは8まで増えていて、一応これで取ろうと思えば空き枠も全て埋められることになりますね。

 その後のAPの使い道ってどうなるのでしょうか。


 身体部品には劣化も消耗も付いていませんね。

 今は劣化が付いたらすぐに直してしまっていますからいいですけど、長旅になった時とかが心配ですよね。

 やっぱり自分で劣化や消耗も直せた方がいいのでしょうか。

 何のアビリティを取ればいいのでしょう。

 自己整備なんかを使えればいいですけどね。時間はかかりそうですが。

 そうすると『安全地帯』でしか使えないですから、外で安全地帯を作り出す方法を考えた方が手っ取り早いのでしょうか。


 装備は特に気にするところもありませんね。

 お金稼ぎしたら少し見た目の良いものにしたいなぁ、と思うくらいで。

 今は靴すら履いていないのですが、流石に少し悲しくなってきました。


 アビリティも特に変化なし。

 メイン目標はお金稼ぎで、サブ目標は今のところ0が多い戦闘系アビリティのレベル上げ。しっかり意識してたくさん使っていかないとですね。


 諸々の確認が終わって、まだ開かない街門を眺めながらこの後のことを頭の中でまとめていきます。

 主に角うさぎさんと森狼さんを標的に狩りつくしていきましょう。

 大体今0のアビリティのレベルが2になるくらいを目安にして、その後魔石集め。からの、出品して待ち時間に延々と放置し続けているフリークエスト。ですね。


 そんな理想的な予定を組み立てていると、ようやく開門時間になったのか、門が開き始めます。


 オーリナさんから聞いていたように、この街壁も門もすべてで一つの魔道具なわけですよね。

 改めて門が開いていく機構や、大きさを見るとオーリナさんがあそこまで興奮するのも何となくわかるような気がしてきます。


 門が完全に開ききり、兵士さん達が横に避けると広場に溜まっていた方々がなだれ出るように門の外へ進みます。

 流石にそんな人波に入り込むのは怖いので、少し落ち着くまで遠目に眺め、ある程度落ち着いてきたかな? というところで門の外へと向かいます。


 門内と門外の兵士さん達へぺこぺこと会釈をしながら街外へ出て、街から伸びる道は未だかなり方々でごった返していますので、すぐに森の中へ。

 人込みは苦手です。


 そんな状況では森の中も当然多くの方々がモブ狩りをしていらっしゃいます。


 少なくとも視界内に他プレイヤーが入らないくらいの場所を求めて森を奥へ奥へと進んでいきます。

 人が多い所にいると、意図せぬ迷惑をおかけしそうで怖いですよね。


 このゲームのポップがどういう仕組みになっているのかはよくわかりませんが、他の方が狩りつくしているのか道中も特に戦う必要もなく、もう少し進めばシノに教えてもらった魔石集めの泉に到着する、というところまで来られてしまいました。


 それでもまだちらほらと狩りをしている方が目につくのですが。


 泉に到着すると数人の方が。皆様も魔石集めをしていらっしゃるのでしょうか。


 泉に近寄ると、私にも泉から湧いた水玉が飛んできます。

 アビリティを育てるがてらということで必要はないですが、避けて・切るの流れでいくことにしました。


 『羽々流々』の感覚に従って踏み出して横をすり抜ける様に飛んできた水玉を躱し、すり抜けざまに華麗に攻撃。

 まぁ、外しましたが。


 小さいのですよ、水玉。

 なんか平たいもの、フライパンでも持ってくればよかったです。


 ふよふよと反転? して再度こちらへ突撃してくる水玉に対し何度か同じように挑戦してみましたが、もう少し大きい的でないと短剣では無理ですね。

 もたもたしている間に、一つ、また一つと水玉の数が増えていき、何となく習得の時の修練を思い出しました。


 かなり数が増えるにつれ避けても別個体からの突進に当たることが増えてきました。初めて知ったのですが、濡れるという概念があるのですね。

 水玉に当たられてびしょびしょになってしまいました。

 感覚的には特に何か問題があるようには感じませんでしたし、なんだか楽しくなってきてしまいました。たまに攻撃が当たって綺麗に決まると気持ちがいいのです。


 本来の目的も忘れて避けては攻撃を外し、と続けていると、すぐにピロリンとアビリティレベルアップの通知が。


 おそらく羽々流々が上がったのでしょう。


 一旦周りに飛び交っている水玉をすべて処理し、泉の傍から離れてステータスを確認。


 装備が水濡れになっているのは感覚で分かっていましたが、本当にそういうデバフがあるのですね。装備が軽度の水濡れになってしまっていました。

 確認すると、内部のアイテムに稀に水濡れ状態が発生する、というデバフ効果と一応、炎上状態に対して僅かに強くなるというバフ効果も付いているようです。


 デバフの方を見て少し慌てたのですが、高品質ボーナスの『状態保護効果向上』によってデバフの方は打ち消されているようでした。

 付いててよかった状態保護効果向上。


 水濡れがそれぞれのアイテムにどのような影響を与えるのかわかりませんが、危険なことはやめましょうね。


 羽々流々のレベル上げに丁度いいかとも思ったのですが、荷物をどこかに置いて身一つでやるならいいですが、荷物を置いておける場所もないですからね。

 そこら辺に置いておいたらどちら様かに持っていかれてしまっても文句は言えませんし。


 若干、物理的にも感覚的にもひやりとすることがあったものの被害が出る前に気付けて良かったです。


 羽々流々のアビリティを開きます。


===========

『羽々流々』Lv.0 → Lv.1

 遥か東の地に伝わる特殊な技術。風の流れはそれに逆らうもののすべてを知る。


スキル▼:P 羽々流々の歩法

     A 風の声 - New


TEC+4 AGI+2

===========


 ふむ?

 名前は変わらず、アクティブが増えたのですね。


 MP消費系。消費は2。

 いよいよMPが心もとなくなってきますね。

 効果は、小範囲の自身の周囲にある動くものの位置を知ることが出来る。


 あぁ、水玉たちからの攻撃を避けて成長させたからでしょうか。


 試しに発動させてみると、なにか表示があるわけではなく、感覚的に周りに認識が広がります。

 距離にして、大体1 mくらいでしょうか。

 狭いのか広いのか。


 モブと戦う時は基本的にもっと離れていますから使い道は……


 でも、羽々流々は対象を認識していないと発動しませんし、連続攻撃で相手から視界を外してしまった時とかに避けようとしたら使えます、か?


 使ってみないとわかりませんね。


 アビリティのウィンドウを閉じて、泉に戻ります。

 内容を確認している内に水濡れ状態も無くなったことですし、水玉相手に遊ぶのはやめておいて、大人しく狩りましょう。


 もう避けもせず、飛んでくる水玉をひたすら叩き落していく流れ作業です。


 ひたすらにポップする『霊晶片』と稀にドロップする『霊晶片の微小魔石』。

 魔石が二個ドロップするくらいでバッグとボックスがいっぱいになるので、泉から一旦離れてバッグ整理。

 気づいたのですが、バッグがいっぱいになると結構重いのですよね。

 重いという表現が正しいのかといえば微妙な所なのですが、動きづらくなるのです。

 視界の端に小さなウィンドウで『重量状態』のポップが出るので重い、と表現しているわけですが、重いというか、動きづらい。


 枠を圧迫する『霊晶片』をぽぽいと捨てて、魔石は魔石用ポーチの中へ。


 とりあえず、魔石用ポーチの上限二十枠を埋める様に買った普通の魔石が十個入っているので、十個集めるのを目標にして、作業を進めます。


「あの~……」


 前にシノと来た時は運が良かったのか、なんだか感覚よりも全然出ないです。

 短剣も使っていますし、時折『解体の才』のアビリティも発動しているようなので、レベル上げにはなっていると思いますが、短剣のアビリティなんか他のアビリティより上がりにくくないですか?


「えっと、あの~」


 と、思っていたら、それがフラグとなったのか、応える様にピロリンとレベルアップの通知が。

 短剣か解体か、流石に短剣ですよね。


 また一旦泉を離れ――


「あの~!」


お読みいただきありがとうございます。


もしどこかで面白いと感じていただけたようでしたら、星を光らせてくださると感動します。

あとブクマとかも(強欲

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― 新着の感想 ―
[一言] 同じイポメア属だからアサガオの茎にサツマイモを継ぐと綺麗な花を咲かせるようになるし、逆にサツマイモにアサガオを継ぐとアサガオの花を咲かせつつ芋も採れるの(小さくなるらしい)、面白いですよね
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